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第弐話:世界が拭えずにいる闇の歴史

 生き残った人攫いたちを縛り上げて捕らえた。そのあとのことはしずくの手には負えないと思い、一度街に戻りセキヤミに報告をし、助けを求めた。

 そして色々な後始末が終わり、セキヤミと話していた。


「人身売買———それは、リトラルトという国が、いや世界が、今もなお拭い切れずにいる黒い歴史なんです」


 セキヤミが説明を始めた。

 かつて新大陸としてエルフの住む大陸を見つけた人間が、エルフを捕まえ、奴隷にするようになった。今ではもう奴隷制は廃止されているが、アンダーグラウンドではいまだに続いている。いや、今ではエルフだけでなく人間すらもターゲットにするようになっており、むしろ状況はさらに悪化しているかもしれない。

 今回の事件も、まさにそれだった。

 もし、しずくが今回の件で捕らわれた人々を発見できなければ、彼らは貨物としてリトラルト本国へ運ばれ、やがて再び国際問題に発展していたかもしれない。

 しずくの迅速な行動によって、背後にいた密売組織の幹部層が露見することになったのだ。

 ちょうどセキヤミがリトラルトからの外交使節を迎える時期であったことも、事態を公にする好機となった。


「もちろん全てが暴かれたわけではないですが。今回のことは確かに、それは根絶への第一歩でしたよ」


 セキヤミがそれまでの歴史を説明してくれ、最後にそう締めくくった。

 しずくが今回の事を報告したとき、それがどれほどの規模の事件だったのか、本人は理解していなかった。しかしこの一件をきっかけに、言葉しずく、その冒険者の名が、白の弟子として認知していた政府内部のみならず、シンノミヤ全域にまで静かに知れ渡ろうとしていた。

 しかし、しずくにとって、疑問が残った事件だった。

 あの紫の玉はなんだったのか。その出所がどれだけ調べてもわからなかったのだ。


「いや、今の拙者の仕事は子どもの失踪事件の調査でござる……。他に割く余力などないのでござるが……」


 そう言いながらも胸の奥にはあの煙のような、紫の残滓がどうしても離れなかった。

 今回の件は報じられた華々しい功績とは裏腹に、しずくの心の中にモヤを残してしまう結果となった。

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