6話
秋の夕暮れ。キャンパスの並木道は黄金色に染まり、落ち葉が風に舞っていた。講義を終えた学生たちが三々五々帰路につく中、四人はベンチに並んで座っていた。
魔女好きアニメオタクは、夕陽に透ける爪を眺めながらぽつりと呟いた。
「結局さ、遊び半分で始めたのに、ここまで来ちゃったね」
その声には、少しの誇らしさと、ほんの少しの不安が混じっていた。
戦隊悪役推しは、肩をすくめて笑った。
「悪の秘密結社って言ってたけど、なんか普通に起業っぽいよな」
その言葉に、三人は思わず吹き出した。だが笑いの中に、確かな実感があった。
ゴスロリのヘビメタ好きは、黒い爪先をひらひらさせながら言った。
「でも、悪役っぽいノリがあったから続けられたんだと思う。真面目にやるだけじゃ、きっと途中で飽きてた」
彼女の声は、夕陽に照らされて柔らかく響いた。
マンガオタクは唐揚げを頬張り、口をもぐもぐさせながら笑った。
「怖いけどかわいい、退屈だけど面白い――それが私たちの結社だよ」
その言葉は、冗談のようでいて、結社の理念を言い当てていた。
四人は顔を見合わせ、笑った。
その笑いは、冗談の延長線上でありながら、確かに未来を見据えるものだった。
――理念を掲げ、資金を集め、商材を選び、プロパガンダを拡散し、戦闘員を育てる。
その一つひとつは遊び半分の行動だったが、経営学で言えばビジョン、資金戦略、差別化、マーケティング、チームビルディング。
彼女たちの結社は、知らず知らずのうちに経営戦略の体系を歩んでいた。
「悪の果てに見えたもの」――それは、結社が結社であるための答えだった。
理念と仲間があれば、どんな結社も、どんな企業も、動き出す。
夕陽の中で笑い合う四人の姿は、悪役の秘密会議のようでいて、どこか眩しい起業家のようでもあった。
落ち葉が舞うキャンパスに、彼女たちの笑い声が響き、物語は静かに幕を閉じた。




