第88話 たぎるな、愛剣
わぁ……。あれだけ綺麗で整然と並べられていた礼拝堂の椅子が、めちゃくちゃに破壊されてるぅ……。
ぐっちゃぐちゃだ。アルの攻撃によって、無残に破壊された。
当然、目的の幹部たちは悲惨なことになっているだろう。
……死体、残ってるのかな……?
「素晴らしい一撃でしたわ。さすがはマスター。その強大な魔力と圧倒的なオーラ……。わたくし、震えさせられましたわ……」
「ちゅ、躊躇のかけらもなかったわね……。あれで一気に何人死んだのかしら……?」
キャッキャと濁った眼を見開いて楽し気にしているアンタレス。
これで、一番勢いのあった強大な宗教アリアス教も終わりか。
まあ、根絶やしにされたわけではないから細々と残ってはいくのだろうが、しかし元の勢力に戻るには相当の時間がかかるだろう。
幹部たちは皆死んだら、まずは率いる人が必要になるし……。
ああ、それはルサリアがいるから大丈夫かしら?
そんなことを思っていたら、まだアルが臨戦態勢を解いていないことに気づく。
「……いや、まだだな」
「え?」
死体でも切り刻むの? と思っていたら、驚愕の光景が。
なんと、幹部たちはまだ生きていたのである!
しかも、傷一つつくことなく!
これにはさすがの私も驚かされる。
というか、私の力を使って誰も死んでいないとか……なんだかむかつく。
幹部たちの前に、一人悠然と立っている男、ゴードン。
「ふん。何を無様にうずくまっている。顔を上げろ。お前たちはまだ死んでいないだろうが」
「こ、これは……!?」
見れば、うっすらと光の壁のようなものがあって、それでアルの攻撃を防いだようだった。
アルの一撃を防げる道具……?
「確かに、強大な力だ。我々の独力では、どうすることもできない暴力。ならば、我々は神の力をお借りする」
にやりと笑い、ゴードンは誇らしげにその形代を掲げた。
「これこそが、アリアス神のお力だ!」
「お、おぉ……っ!」
ゴードンの言葉と形代を見て、幹部たちは歓喜の表情を浮かべた。
その視線を気持ちよさそうに受け止めたゴードンは、形代をさらに高く突き上げる。
「いでよ、神の化身! オルティメウス様!!」
その瞬間、形代が割れ、強い光が発せられた。
うぉっ!? 目がっ!
「おー……」
ようやく光に慣れた目を開けば、そこには一人の整った顔立ちの男がいた。
とんでもなくイケメンである。光り輝いている。
そして、背中には真っ白な美しい翼。
なるほど、人間とはまったく異なる生命体のようだった。
あまりにも神々しいので、アリアス教の幹部たちはひれ伏してしまっていた。
平然としているのは、アルとアンタレスくらいである。
ぼけーっとしながらその男――――オルティメウスを見ていた。
「オルティメウス様はアリアス神の第一の属神。現世に降りられる際には力の制限がかかっているが、それでも我々人間とは比べものにならないほどの強大なお力を持っている。それこそ、天変地異さえ起こしうるほどの力をな! 貴様ら人間には、どうすることもできない!」
ゴードンはまるで自分の力を語るように熱っぽく言葉を吐き散らかす。
形代を持ち、それを割ってオルティメウスを召喚したのは自分だという自負があるのだろう。
それだけではなく、幹部たちにも知らしめているのかもしれない。
そうやって、自分の教祖としての立場を確固としたものにするために。
しかし、それはオルティメウスからの不興を買ってしまう。
「……少し黙れ、ゴードン。私はわざわざ降臨してやったわけだが、私の力で威張り散らすお前はなんだ?」
「も、申し訳ありません。オルティメウス様の御威光を知らしめようとしただけでございまして……」
「ふん。まあいい」
せこせこと頭を下げるゴードンを見下ろし、オルティメウスは興味なさそうに目をそらす。
えーと、なんだっけ? 属神? 初めて聞く単語だけど、要はアリアスの子分みたいな感じかしら?
とはいえ、神の一柱であることは間違いないから、強大な力を持っているのだろうけど。
……ほら、アル! ごめんなさいしなさい! 私も一緒に謝ってあげるから!
それか、こっちもシャノンぶつけたら?
「さて、わが主であるアリアス様に歯向かう愚かな人間が、お前らか? 生きて帰れると思うなよ」
そんなことを言ってくるオルティメウスをしり目に、私は強烈な視線でアルに訴えかける。
すると、彼はにっこりと微笑んで言った。
「たぎるな、愛剣。神殺しの時間だ」
「いやああああああああああああああああああああ!!」
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https://magcomi.com/episode/2551460909458470279
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