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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~  作者: 溝上 良
第3章 2つの宗教編

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第71話 自己紹介が遅れました

 










「わが神を愚弄する者は、当然この世に残しておく必要はない。皆殺しにする。このようにな」


 うわぁ、もう完全にアレな人みたいなこと言ってるぅ……。

 アルの見たくなかった一面を見てしまって、私は明らかげんなりしていた。


 ただでさえ悪人絶対殺すマンで嫌だったのに、これに宗教色が混じるなんてさあ……。

 ツーアウトってところね。


「うーん、このカルト狂信者。思想がやばい奴に強大な力が合わさったら、マジで地獄ね。マジで」


 本当、天罰とか下されないかしら。

 ……でも、こいつ自分の信仰する神以外からそれを貰おうとしたら、返り討ちにしそうなのが嫌。


 さすがの私も神と戦闘なんてしたくない。

 というか、引きこもりたい。


「こっちで大きな音がしたぞ!」

「マサドたちのいた方だ。急げ!」


 どたどたと大勢の人が走る音と共に騒がしくなってくる。

 まあ、この街はほとんどがアリアス教の勢力下にあるようだから、異常を察すれば人が集まってくるのも当然だろう。


 大勢がきたら勝ち目が薄くなるのに、アルはなぜか胸を張っている。


「ふーむ、不信心者が集まってきているようだな。アリアス教はシャノン教を愚弄する組織。皆殺しにしなければ……」

「ああ、もうアルの中でアリアス教は悪認定されたのね……」


 バカと宗教の戦争?

 嘘でしょ、最悪じゃない……。


 私がはっきりと絶望していると、涼しい声が聞こえた。


「こちらへ」

「え?」


 そう言って誘導しようとしているのは、マサドたちに追い立てられていたシャノン教の信者だった。

 えぇ……邪教の信者に誘導されるのぉ……?


 絶対ろくでもないから嫌なんだけど……。


「今、ここでアリアス教と事を起こすのは、神もお望みではありません。今ならばれずに逃げられます。こちらへ」


 意外とまともなことを言う。

 ただ、時と場合によってはアリアス教と戦争することもやぶさかではないような言い方に、私はげんなりする。


 やっぱり、邪教の信者も信者ね。


「む……。そうか、では行こうか」

「え、信じるの? 初対面の奴よ?」


 アルがあっさりと戦闘態勢を解いて信者の後に続こうとする。

 アンタレスはアルが行くところに鳥のヒナのようについていくだろうから、私が聞かなければならない。


「ああ、大丈夫だ。同じ神を信仰している」

「だから信頼できないんだけど」


 普通の人間なら私も信じていたわよ。

 でも、邪教信者よ? 絶対に何も信じられないわ。


「それに、彼女は……」

「こちらへ」


 アルはさらに何かを言おうとしていたが、信者に促されて動き出す。


「はあ……まあ、いいけどさあ……」


 どうせ、無理やり引っ立てられるから、私が逃げられるわけもないしね。

 私は深くため息をつき、アルたちの後を追うのであった。











 ◆



「ここが、この街でのアジトです」


 裏路地の暗い場所に誘導される私たち。

 私一人だったら絶対について行かない場所だわね。


 だって、誘い込んで殺しますと言っているようなもんだし。

 ただ、アルは何も疑うそぶりを見せずについてきていた。


 アンタレスは……多分、騙されても返り討ちにできる自信があるから、鼻歌交じりについてきているのだろう。

 あと、アルが信じているから自分も信じるという、単純な思考。


「ほわぁ……」

「どうした?」

「いや、普通に入りたくなくて……」


 あの邪教のアジトである。

 絶対死体とか転がっているわ。


 そして、血なまぐさい祭壇とかがおどろおどろしく備え付けられているのよ。

 ひぇ……。


「なぜだ? とても居心地がいいのだが……」

「色々と感覚器官が腐っているんじゃない、あんた?」


 血なまぐささしか感じない祭壇の、どこに居心地の良さを感じればいいのか。

 吸血鬼だけでしょ、喜ぶの。


「そんなことを言っても、外にいたらアリアス教徒に見つかりやすいですわよ? 殺し合いするのであれば構いませんけれど……」

「それも面倒くさいから嫌だけどさあ……」


 アンタレスに促され、嫌々アジトとやらに入ることにする。

 進めば邪教、下がれば虐殺。


 どうすればいいってのよ……。

 私は心底げんなりしつつ、ゆっくりとアジトに入っていき……。


「えぇ……」


 唖然とした。

 アジトの中は、思っていた以上に清潔で、血や臓物が地面に散らばっているわけでもなかった。


 死体も転がっていない。

 それだけだったら、私はシャノン教を見直していたかもしれない。


 しかし、そうはならなかった。

 また別の意味でぶっ飛んだアジトだったからだ。


「なぁに、これぇ……?」


 褐色肌の女がいた。

 それは、たまに出てきた亡霊とそっくりである。


 薄い衣装で、身体もエッチなスケベ女だ。

 その女がいる……のだが、本人がいるというわけではない。


 何を言っているのか分からないだろうが、私も意味が分からないのだ。

 ポスター! 人形! 石像! クッション! 抱き枕!


 それらに、褐色肌のスケベ女が描かれているのである。

 なにこれ!? どういうこと!? 理解が追い付かないし、したくないんだけど!


「わが主神を崇める祭壇ですが」

「アルが作っていたのとまた全然違うんだけど!?」


 あの悍ましい祭壇は何だったの!?

 この引くレベルのオタク祭壇もなに!?


「神は血と臓物を愛し、私たちに愛されているのだ」

「はあ?」


 何をどや顔で言ってんだ、このバカ。死にたいの?

 誰か、このバカを何とかしてぶっ飛ばしてくれないかしら。


「先ほどは助けていただき、ありがとうございました」


 シャノン教の信者が、深く頭を下げてくる。

 助けたくなかったんだけど……。


「同志を助けるのは当然だろう。それに、わが神にとても敬虔なようだからな」

「もちろんです。私のすべては、シャノン様のものですから」


 祭壇を見て満足そうなアル。

 信者も誇りに思っているように胸を張る。


 ……もう何も言う気が起きないわ。

 というか、そもそもこの信者は何なのよ。


 そんなことを考えていたことが伝わったのか、信者は顔を隠していたフードを取った。

 そこから出てきたのは、まさしく絶世の美女と言えるほど整った顔。


 しかし、その目を見て、私は絶望した。

 なにせ、アルやアンタレスと同じように、ドロドロに濁ったそれだったからだ。


「自己紹介が遅れました。私、エウスアリアと申します。シャノン教の今代教祖をさせていただいております」

「ひぇっ」


 邪教の一番やばい奴じゃないのおおおお!!




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殺戮皇の悪しき統治 ~リョナグロ鬱ゲーの極悪中ボスさん、変なのを頭の中に飼う~


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― 新着の感想 ―
自作推しグッズらしきものに囲まれた祭壇。 フリーダムな供物に今代教祖、アル…。 敬虔な信者を持ってシャノン様はさぞかし嬉しいでしょうね(白目)
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