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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~  作者: 溝上 良
第3章 2つの宗教編

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第59話 小さな宗教

 










 荘厳な大聖堂。

 信者が集まって祈りをささげる大きな広間には、今はごく少数の姿しかない。


 見事なステンドグラスから差し込む光は鮮やかだった。

 そんな幻想的ともいえる空間で、彼らはコソコソと公にはできない会話をする。


「信者の獲得数はどうなっている?」

「順調だ。そもそも、今我らは飛ぶ鳥を落とす勢い。邪魔さえ入らなければ、どんどんと増えていくことだろう」

「素晴らしい。信者の数こそ、基盤を確固としたものにする。信仰の強さこそ、神がお喜びになられること。勢力拡大は、まさしく我らの使命だ」


 彼らは、とある宗教の幹部たちである。

 彼らにとって、信者の獲得こそ重要な仕事だ。


 その進捗は、非常に順調だと言わざるを得ない。

 彼らの宗教は、まさに随一の成長速度を見せている。


 それは、どこの神も信仰していない人々に熱心に勧誘を続けた結果である。

 だが、その手段も取りづらくなってきていた。


「しかし、勢いは落ち着いていくだろうな。なにせ、もうパイがほとんど残っておらん」


 単純に、無宗教の人が少なくなってきたということである。

 彼らが思いつくことは、当然他の宗教の信者たちも思いついている。


 彼らも熱心に勧誘をすれば、当然何も信仰していない人の数も減っていった。


「となると、どうしますか?」

「地道な勧誘は続けるべきだろうが、やはり影響力が大きい広告塔がいた方が、大規模な成果につながりやすいわね」

「となると、やはり勇者か。人類圏で彼らの影響力と人気は、その国の王族をもしのぐことだろう」


 優秀な広告塔として脳裏に真っ先に浮かぶのは、勇者であろう。

 国の英雄や有名人なら、いくらでもいる。


 だが、彼らは基本的にその国でしか知名度はない。

 しかし、勇者は違う。


 聖剣に選ばれた彼らは、まさしく人類圏の英雄。

 様々な国や民族の人々も、彼らのことは知っているだろう。


 そんな彼らが自分たちの宗教を信仰していると声高に宣言すれば、どれほどの効果が見込めるだろうか。

 想像するだけでも胸が躍る。


 だが、そううまくはいかない理由もある。


「しかし、今代の勇者たちは……」

「ああ……全員我が強すぎるな……」


 げんなりと肩を落とす。

 そう、今代の勇者たちは、どれもが個性的にすぎるのである。


 基本的に、取り入ろうとするのであれば、良い思いをさせなくてはならない。

 そして、それは人それぞれ違うだろうが、往々にして共通しているのは、金銭や異性である。


 で、勇者の彼らがそれになびくかと言われると……。


「ロイスはよく分からんし、アランも欲深く取り入りやすそうに見えるが、我らの思った通りにはまったく動かん」

「ルルは一番取り込みやすそうではあるんですが……やはりあれも勇者。一筋縄ではいきませんものね」

「メリアが行方不明となった今、もはや勧誘は無理でしょうな」

「アンタレスは絶対に無理ですしね」

「まあ、あれよりやばい勇者が現れることはないだろうが……」


 それぞれの勇者の評価を話す。

 個性が強すぎないと聖剣を振るうことはできないのかと思わせられるほどのレベルである。


 逆に言うと、他の宗教に取られるという心配がないので、そこだけは助かるのだが……。


「となると、どうしますか。無神論者のパイもないでしょうから、そうすると……」

「今、別の神を信じている者を引き入れていくしかなかろう」


 結局のところは、そうなるのである。

 これ以上の拡大を目指すのであれば、すでに他宗教を信仰している者を、宗派替えさせるほかない。


 しかし、それが個々人の判断で行われるのでも小さな問題となるのだが、それを組織的に行おうとするとなると、非常に危険な橋を渡ることになる。

 他の神を信仰する宗教が、組織的に鞍替えさせようとしていると、下手をすれば戦争に発展しかねない。


 だが、そうすることも考えていたからこそ、今の勢力拡大があるのである。

 これまでの地道な活動のおかげで、彼らの規模は非常に大きなものとなった。


 信者たちを武装させ、組織化し、軍事力すら保有することができた。

 すなわち、戦争への備えである。


 もはや、小国の軍隊を軽く凌駕するレベルの軍事力を、彼らは保有していた。


「そもそも、二つの神は不要。我らがアリアス神さえいれば、それでいいのだ」


 結局は、そういうことである。

 彼ら――――アリアス教のみならず、過激な宗教はすべてそういう信条だ。


 自分たちの敬愛する神以外は認められない。

 最終的には、どちらかが倒れるまで戦うしかないのである。


「では、どこを攻撃するので? さすがに主要な宗教となると、こちらも被害が大きくなるでしょうし……国からの横やりもありましょう」


 攻撃対象を決めるのは、なかなか難しい。

 ある程度の規模の宗教とドンパチすることになると、当然どこかの国で戦が発生するわけだから、その国も見過ごすわけにはいかないだろう。


 加えて、大規模な主要宗教は、アリアス教のみならず、往々にして軍事力を保有しているものだ。

 そことぶつかり合うと、被害の大きさも考慮しないといけない。


「そこまでことを急くつもりはない。じっくりと時間をかけて、丁寧に進めていく」

「とりあえず、ほとんど信者のいない、小さな宗教を潰していくとしよう」


 彼らの結論はそうなった。

 大規模な宗教を潰すハイリスクハイリターンではなく、小さな宗教を潰して信者を獲得していくローリスクローリターン。


 そんな彼らがめぼしをつけていた宗教名を、ポツリと呟いた。


「――――――たとえば、シャノン教とかな」


 アリアス教の悪意が、小さな宗教に襲い掛かろうとしていた。











 ◆



「ところで、アルって何か宗教を信仰していたりするの?」

「シャノン教」


 そして、とんでもない信者がいる宗教に襲撃しようとしていることに、まだこの世界の誰も知らないのであった。



過去作『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』のコミカライズ最新話が、期間限定でニコニコ漫画で公開されています。

下記の表紙から飛べるので、ぜひご覧ください!

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殺戮皇の悪しき統治 ~リョナグロ鬱ゲーの極悪中ボスさん、変なのを頭の中に飼う~


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― 新着の感想 ―
アルが信仰心を持っていたとは…。 シャノン教の教義が気になるのです。
フラグがどんどん積み重ねるなと思いながら読んでいくと、秒速で回収ですかwww
勇者を取り込むのは難しいとか悩んでる宗教の横に、どっぷり浸かってる信者な勇者を抱えてる宗教があるなんて!しかもそこに狙いを定めちゃうなんて! ……まあ、自業自得か
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