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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~  作者: 溝上 良
第3章 2つの宗教編

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第55話 その時、不思議なことが起こった!

 










「ふぅん!」

「わっ、と」


 猛然と振り下ろされる巨大な瓦礫付きの聖剣。

 平気で重量のあるものを振り回すアルバラードの腕力を考えれば、まともに打ち合うのもしんどい。


 メリアも鍛えているから武器ごと潰されることはないだろうし、聖剣も頑強だから破壊されることもないだろうが、腕は間違いなくしびれる。

 力がうまく入らない状態で戦える相手ではない。


「本当、とんでもない力ですね……」


 だから、メリアはアルバラードとの戦闘の初めから、遠慮なく聖剣の力を行使していた。

 彼女の保持する聖剣の力は、亜空間を作り出すこと。


 空間を切りつけ、次元の切れ目を作り、そこに飛び込むことができる。

 当然、時空が異なるものだから、その場所にいた者たちからすると、突然消えたように見えることだろう。


 そして、あちらの事象がこちらに干渉してくることはない。

 すなわち、ありとあらゆる攻撃は、メリアには届かなくなる。


 特訓をして鍛えてきた彼女は、亜空間の中を自由に行動することもできる。


「ふっ……!」

「むぅ……」


 そのため、亜空間の中で移動して切れ目を作り、アルバラードの死角から命を何度も狙うことができる。

 移動している間は絶対に攻撃を受けることはないため、気を付けるべきはカウンターだけである。


「しかし、こんなにも一方的な展開なのに、まったく逃げる様子を見せないんですね。本当、仲間になってくれたら、どれほど心強かったことか」


 ため息をつくメリア。

 アルバラードが協力してくれたら、世界平和への道がかなり近づいたことだろう。


「でも、そうならないのであれば、私の夢を邪魔する愚者。とくに、強い人は早いうちに処理しておかないと、後でもっと強くなって立ちはだかってくるかもしれません。申し訳ありませんが、ここで死んでもらいます」


 しかし、すでに道は決裂しているのだ。

 そして、そんな奴を生かしておくわけにはいかない。


 将来、自分の障害になることが確定しているのであれば、早いうちに処理しておくべきだ。

 メリアは冷徹な判断を下し、亜空間からアルバラードを見据えて……。


「…………ん?」


 その時、不思議なことが起こった!

 命を仕留めるために、アルバラードのことを観察していたメリア。


 そんな彼女の目と、アルバラードのどす黒く濁った目がバッチリ合った。

 ……そう、百年の恋が始まりそうなほど、バッチリと。


「……こっちを見ている? い、いや、そんなことないですよね? だって、あちら側からは観測できない亜空間にいるわけですから。猫が空間を凝視するようなものですか?」


 冷や汗を大量に浮かび上がらせながら、メリアはふと沸いた考えを必死に否定する。

 そう、ありえないのだ。あちらから、亜空間の中にいる者は感知できない。


 だからこそ、彼女はこの力で絶大な力を振るっていたのだ。

 どれほど目を凝らしても、影すら浮かび上がらない。


 強者であれば悟ることができる気配すらも、あちらに漏れることはない。

 絶対的な不可視空間こそが、メリアの聖剣が作り出すことのできる亜空間なのである。


 だというのに、じっと見ている。

 アルバラードは、対象に穴が開くほど、じっと見ていた。


「き、気持ち悪いですし、早く終わらせましょう。移動して、また死角から……」


 偶然だとは思うが、気持ち悪いことは気持ち悪い。

 さっさとアルバラードを殺して、この居心地の悪い気分から解放されよう。


 そう思って、亜空間の中を移動する。

 アルバラードの死角に回り込み、今度こそ防ぎようのない必殺の攻撃を……。


 死角に移動してから、彼の急所を目でしっかりと捉えようとして……。

 がっつり、アルバラードの赤黒い目と見つめ合った。


「……やっぱり目が合っている!?」


 今度こそ確信してギョッとしてしまうメリア。

 思わず硬直してしまう彼女に向かって、聖剣を振り上げるアルバラード。


 しかし、それは無意味だと、メリアは嘲笑する。

 亜空間の中にいる自分をどうやって視認しているのかは知らないが、そこまでだ。


 ……いや、それだけでも十分におかしいのだが。

 しかし、亜空間の中に干渉することは、自分以外はできない。


 それは、確かな事実なのだから。


「きゃっ!?」


 しかし、そんなものは知ったことじゃないと、アルバラードは思いきり聖剣を振った。

 すると、バチッ! と耳を塞ぎたくなるような音と共に、空間に亀裂が入った。


 すなわち、それは亜空間にも及ぶ。

 ひび割れた亜空間を見て、メリアは信じられないと目を見張る。


「なっ、なななななっ……!?」


 言葉がうまく出てこないレベルの衝撃だった。

 彼女がメリアとして完成されてから、こんなにも狼狽したことは一度もなかった。


 アルバラードは、のしのしと亀裂に向かって歩いてくる。

 それは、メリアに近づいてくるということで、ぶっちゃけめちゃくちゃ怖かった。


 アルバラードは聖剣を放り投げると、その亀裂に向かって手を伸ばし……ギチギチととんでもない音を鳴らしながら、亀裂を引き裂こうとし始めた!


「む、無理です! 亜空間をこじ開けるなんて、腕力でできるはずがない! 私の聖剣の力がなければ、そんなことは……!?」


 空間を自力で引き裂くなんて、できるはずもない。

 亜空間を自在に操るメリアですら、聖剣を使ってやっとできることなのだ。


 だから、いくらきっかけがあるとはいえ、そんなこと人間ができるはずがないのだ!

 バチバチバチ、と空間の悲鳴がどんどんと大きくなることは、気のせいだ。


 気のせいでないといけない。でないとおかしい。

 亀裂がどんどんと広がっていっているように見えるのも、完全に見間違いなのだ。


 メリアの顔色はどんどんと青くなっていき、そして……。

 バリィン! と空間が割れた。


 割れたのだ。

 人間が、腕力で、空間を引き裂いた。


 唖然とその様子を見るメリア。

 そして、そこからのそりと顔を見せたのは、満面の笑みを浮かべるアルバラードであった。


「こんにちはぁぁぁ……!」

「きゃああああああああああああああああああああああ!?」


 メリア、ガチの悲鳴を上げる。

 ちょっと股間部が湿った気もするが、そんなことは気にできないほど、若々しい子供のような悲鳴を上げるのであった。




過去作『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』のコミカライズ最新話が、期間限定でニコニコ漫画で公開されています。

下記の表紙から飛べるので、ぜひご覧ください!

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― 新着の感想 ―
仕方ないね、悪い子はナマハゲからは逃げられない…… 悪い子はいねーがーバリバリバリバッキャーン うーん、ホラー(自称勇者
ホラー映画のワンシーンだ(笑)
聖剣を持たない方が強いなんて本当に驚きました(笑) けど放り投げた聖剣怒る様な気が。
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