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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~  作者: 溝上 良
第3章 2つの宗教編

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第51話 お前を殺したら解放されるのでは?

 










「よお。誰だか知らないが、ちょっと待ってもらっていいか?」

「うん?」


 アルに勇者の一人、アランが声をかけてくる。

 まあ、あっちからしたらそりゃ知らないわよね。


 だって、アルって勇者を自称している頭のおかしい人だから。

 そんな彼は、正当な勇者であるアランを見やり、一言。


「誰だ、お前は」

「いや、それはこっちのセリフ……」


 げっそりするアラン。

 結構自分勝手なタイプなんだろうけど、残念だったわね。


 ウチのアルはそれ以上に他人のことを考慮しないわ。


「マスター、マスター」


 ちょいちょいとアルの袖を引くアンタレス。

 というか、最初に見せていた狂気の部分はいったいどこに……?


 構ってほしい忠犬みたいな感じになっているじゃない……。


「あれは、勇者の一人、アランですわ。勇者の権力と暴力を持って、自分の欲望を好き勝手叶えている、悪予備軍です」

「なん、だと……?」

「おい、ちょっと待てぇ! その言い方、そいつにするのはまずいだろ!」


 ギロリとアルの鋭い眼光がアランを見抜く。

 おいおい、死んだわあいつ。


 まあ、一応予備軍だしセーフでしょ。知らんけど。


「まあ、どちらにせよ追及するのは後だな。で、何か用か?」

「(絶対に後でこっそり逃げよ)……ああ、そのバカ勇者のことだよ」

「ん?」


 アランの見る先には、ボロボロになったレイフィアを見てあわあわとしているメリアがいた。

 いつでもアルが殺せるようにしているから、身動きを取ることもできないでいた。


 ……これ、どっちが正義側でどっちが悪側か分からないわね、マジで。


「俺たちは付き合いが長いから分かるが、こいつが自発的に人類を裏切って魔族に与するとは考えにくいんだよ。俺が嫌いな、善人の中の善人みたいな奴だったしな」

「へぇ、そんな方でしたのね」

「お前、俺より付き合い長いだろ……。どんだけ興味ないんだよ……」


 アンタレスの言葉に、心底呆れた目を向けるアラン。

 彼の言っていることは、元仲間を庇うため、というわけではないことは知っている。


 なにせ、勇者メリアの名声は、他の勇者の追随を許さないレベルで有名だからだ。

 アランは好き勝手、ルルとロイスは気まま。アンタレスはやべー。


 それが、今代の勇者の評判らしい。

 ふっ、もっとやべー奴が、私を無理やり連れまわしているわ。


「とすると、この愚か者の意思ではなく、他者の力が介在している可能性があるということか」

「ああ、その通りだ。俺と戦っていた時、愛だのなんだの恥ずかしいことをペラペラしゃべっていやがった。となると……」

「魅了ね」

「ああ。こいつもバカだけど底抜けのバカじゃなかったから、そういった対策は取っていたはずなんだが……」


 私の言葉に頷いたアランが、メリアを呆れたように見た。

 ただ、まあ勇者相手の攻撃だと、こういったことって割とあることなのよね。


 なにせ、勇者っていうのは聖剣の力を振るうことができるから、まともに武力で討伐しようとすると、とてつもなく大変だ。

 基本的に、一対一では誰が相手でも負けないし、圧倒的な物量で押しつぶすくらいしかなかった。


 だから、基本的に魔王軍が勇者を倒すときに使う方法というのが、まずは暗殺。

 気が緩んでいるときに、寝首を掻くようなこと。


 あとは、毒殺とかもあるわね。

 もう一つは、今回メリアがされたであろう魅了のような精神支配の魔法をかけられることである。


 正攻法ではなく、搦め手を使って対処されるのが、勇者という存在だ。

 ちなみに、基本的に勇者を殺すのは魔王軍だが、人間も割と殺していたりする。


 それは、敵国の人間であったり、あるいは勇者の強大な力を恐れた国に潰されたり……。

 まあ、どうでもいいけど。


「それを打ち破るほどの強力な魅了をかけられた可能性があるということですわね」

「なるほど。そして、一番強く反応を見せたのが貴様だ、魔族」

「ッ!?」


 抱えていたレイフィアの目をガン見するアル。

 こ、こわ……。


 あのドロドロに濁った眼で見据えられると、誰でも怖気づくだろう。

 しかも、アルだけでなく、似たような目をしているアンタレスも凝視である。


 私は絶対にごめん被りたいわね。


「貴様、あれに何をした?」

「あ、あの、それはそのぉ……」


 言いよどむレイフィア。

 ……もう何かしていますと言っているようなものだけれどね。


 しかし、アルはうんうんと頷いた。


「ふむ、まあ話したくないこともあるだろう。私はそれを無理やり聞くことはできない。勇者だからな」

「お前みたいな同僚、知らないんだけど」


 アランの言葉を無視して、アルは優しく声をかけた。


「だから、話したくなったら話してくれ。アン、太い釘はないか?」

「準備していますわ」

「さすがはアンだ」

「えへへ」


 アンタレスは懐からぶっとい……本当にぶっとい釘を取り出した。

 ……なんかさびているんだけど、それって使用例があったわけじゃないわよね?


 その釘を人体のどこに刺したとか、聞かない方がいいわよね?

 そんな悍ましいものを当たり前のように差し出したアンタレスは、アルに褒められてご満悦である。


 えぇ……。


「実は私は淫魔の魔族で魅了がかなり強くかけられるんですしかも四天王の一人に選ばれるくらいですからかなり強力なんですこの力を使ってもっぱら私の仕事は敵の内部に協力者を作り上げて情報を集めたり破壊工作をしたりするんですだから大して戦闘能力は高くないし痛みに耐性もないから許してくださいお願いします!!」

「すっご。一息に言いきったわよ。人って死なないためなら何でもできるのね」


 冷や汗を大量に流しながら……というか、身体中からありとあらゆる体液を流しながら絶望するレイフィア。

 どうやって息継ぎなしであの文字数を話せたのだろうか。


 本当、人って追い詰められたら何でもできるのね。

 魔族だけど、そこは人と一緒みたい。


「ちっ、なるほどな。淫魔の魅了かよ。しかも、四天王レベルだからな。いくら精神攻撃にも対策をとっているとはいえ、本職じゃねえこいつだと、どうすることもできなかったんだろうな」

「ふぅむ……」


 アランは苦々しそうに顔を歪める。

 それを聞いていたアルは、顎に手を当てて少し考えて、口を開いた。


「ならば、お前を殺したら解放されるのでは?」

「…………」


 レイフィア、黙り込む。




過去作『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』のコミカライズ第2話がニコニコ漫画で公開されていますので、ぜひ下記URLや表紙からご覧ください!

https://manga.nicovideo.jp/comic/73126

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殺戮皇の悪しき統治 ~リョナグロ鬱ゲーの極悪中ボスさん、変なのを頭の中に飼う~


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― 新着の感想 ―
やっぱり殺されるw
無理やり聞く事をせず太い釘だけで自白させるスマートな所業(笑)直ぐに魅力を解く方法を導き出す頭脳、やっぱり勇者にふさわしい(洗脳済み)
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