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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~  作者: 溝上 良
第2章 5人の勇者たち編

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第45話 あれ? 殺し合いは?

 










 なぜか知らないけど、硬直してシンと静まり返る場の空気。

 このいたたまれない感じが好き。


 人が右往左往して何とか事態を好転させようと頭を巡らせるも、何もよくならないのとか特に好き。

 ちなみに、これに私が関係していたり巻き込まれたりしていたら嫌い。


 私は高みの見物がしたいのである。

 アル、女の勇者、レイフィア。


 三すくみの硬直状態である。

 ちなみに、レイフィアは死にそうな顔をしていた。


 女の勇者とは絶賛戦闘をしていたみたいだし、アルはもちろんぶっ殺そうとしていたから、彼女は基本的に二対一だものね。笑える。


「ぜはー、ぜはー……!」


 そんなことを考えていると、荒い吐息が聞こえてくる。

 そこには、ルルが大量の汗を流し肩で息をしている姿があった。


「あら、追いつくことができたのね」

「ね、猫の獣人を舐めてもらっちゃ困るにゃ……げーっほげっほげほっ!!」

「死にかけじゃない……」


 まあ、確かに身のこなしは軽かった。

 彼女でなければ、アルの高速移動にはついてこられなかっただろう。


 実際、もう一人の勇者はついてこられなかったみたいだし。

 そんなルルは、相対しているアルと女勇者を見て愕然とする。


「って、ああっ!? やばい奴とやばい奴が顔を合わせちゃったじゃない!?」

「あそこに魔王軍四天王がいるんだけど?」

「あんなのより、劇物同士の方が心配にゃ!」

「それはそうね」


 雰囲気で何となくわかる。

 あの女勇者も、相当にやべー奴だということが。


 それこそ、アルと出会っていなければ、私でもビビっていたかもしれない。

 そんなやばい雰囲気がプンプンと漂ってくる。


 まあ、ウチの馬鹿よりやばい奴なんていないんけどね。


「しかし、あの勇者もかなりぶっ飛んでいるようねぇ……」

「アンタレスは今代の勇者の中だったら、文句なしで一番やばい奴よ。人の話を聞かないし、独断で人を殺すし、メンタルがクソ強いし……」


 心底疲れ切った様子のルルは、中間管理職のような雰囲気を醸し出している。

 別にこの子にあの女勇者の手綱を握らなければならない理由はないのだろうけど、放っておけないんでしょうね。


 貧乏くじを引きまくるイメージがあるわ。

 それに、今羅列された特徴が……。


「……どこかで聞いたことがあるような特徴ね」


 全部アルに当てはまっているわ。

 似た者同士ということね。


「……大丈夫かしら? ああいう我が強い同士って、基本的にぶつかり合うでしょ?」

「あの女は強いの?」

「クソ強い。多分、アルバラードとの小競り合いの余波で、四天王は死ぬわ」

「ほー……」


 アルとまともに打ち合える人間を、私はまだ見たことがない。

 私の力を一切使わせない状態でも、瓦礫付きの私を振り回して相手を撲殺する。


 力を使わせてあげたら、もはや敵なしだ。

 小国なら単独で滅ぼせるレベルの魔王軍四天王でさえも、たやすく葬り去ることができる。


 そんなアルと、戦えるかもしれない。

 あまつさえ、殺すことができるかもしれない。


 ……私の目は、キラキラと希望に輝き始める。


「最高ね」

「最悪よ! 最低よ! 小競り合いの余波で街が一つ潰れるわ!」


 別に人間の街が一つや二つ潰れようが気にしないわ。

 全然かまわないから、死闘をしてちょうだい。


「自由気ままで自分勝手な勇者を自称するわりに、あんたって絶対に貧乏くじを引かされるタイプよね」

「常識的に考えて、勇者同士の戦闘で罪のない人が死ぬとかマズイでしょうが……!」


 誰かがやらないといけないのに誰もやらないから自分がやるしかないと思ってやっている。

 ……もう全部捨てて逃げればいいのに、それができないのね。


 本当、聖剣に選ばれるだけはあるわ。


「私はね、大歓迎なの。アルが死んだら、私は解放される。全力でやり合ってほしいわ……!」

「そこまで追い詰められるようなら、あんたも全力で戦闘に引きずり出されると思うにゃ」

「…………」


 ルルの言葉に、なるほどと納得してしまう。

 ふーん、私の命も危ないってこと?


 なるほどなるほど……。


「そうならない程度に……なんとか……!」

「なんでお前が聖剣にゃ?」


 知らないわよ。聖剣なんてなりたくてなったわけじゃないし。

 誰か代わりにやりたい武器があったら代わってあげるわ。


「さて、魔族よ。私から逃げたということは、すなわち悪。四肢切断して首を魔王城に送り付けてやろう」

「絶対おかしい! これが勇者はおかしい! 聖剣はどういう選定をしているの……!」


 ジリジリとレイフィアににじり寄っているアル。事案かな?

 あと、私はアルを選んだわけじゃないから。


 嫌がっているのに無理やり酷使させられているだけだから。

 そんな時、ようやく女勇者……アンタレスの様子がおかしいことに気づく。


「あ、ああ……」


 フラフラと揺れながら、小さくうめく。

 長くて見事なロールの金髪がゆらゆらと揺れる。


 そして……。


「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「ひぇっ……」


 絶叫である。

 空高くまで響き渡るその声は、強烈な感情が込められていた。


 隣にいるルルはガチビビりであるし、レイフィアなんてもう泣いていた。

 仕方ない。マジで怖いもん。


 ただ、私の心は歓喜に震えていた。

 なぜなら! アルとアンタレス!


 この二人が激突すれば、万が一、億が一、私が解放される可能性が出てくるからである!


「おぉっ! 来たわね! ついに私が解放されるチャンスが!!」

「喜ぶな! この二人を衝突させたら、周りの被害がとんでもないことになるって言っているでしょうが!!」


 ルルはそう言うと、聖剣を構える。


「絶対に、衝突させない……!」


 覚悟を決めた表情を見せるルル。

 アルのこともアンタレスのことも恐ろしいと思い、その強さをしっかりと理解していてなお、多くの人々のために危険に身を投じようとするのである。


 ……マジで勇者らしい勇者じゃないのよ。

 この子に使われているこいつも幸せ者ね。


 ……なんで私はあんなのに使われているのよ!!


「おおおおおおおおおおおお!!」


 猛烈な勢いで駆けだすアンタレス!

 地面を砕き、猛然と走る。


 その目には、もはや魔王軍四天王という巨悪は一切映っていなかった。

 瞳に映っているのは、アルただ一人である。


 あまりの速さに、二人の激突を止めようとしていたルルであるが、間に入ることもできていない。

 そして、遂にその二人が激突して……!


「マスタああああああああああああああああああああ! やっとお会いできましたわああああああああ!!」

「ふっ、アンよ。立派になったな」


 アンタレスが涙を流しながら、感動的な抱擁をした。

 そして、アルもまたそれを優しく受け止めた。


 …………ぽあ?


「……ますたあ?」

「……あん?」


 私とルルは、二人してバカみたいな顔をさらすのであった。

 ……あれ? 殺し合いは?




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殺戮皇の悪しき統治 ~リョナグロ鬱ゲーの極悪中ボスさん、変なのを頭の中に飼う~


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― 新着の感想 ―
信仰集団ではあるのか…
マスターは分からんけど、あまりに似すぎてるから、 1弟子 2妹など 3兄弟子と妹弟子 のどれかの可能性を考えたけど、ここにきて、 4信者 の可能性も浮上した。
ああ、ここにも狂信者が…。
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