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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~  作者: 溝上 良
第2章 5人の勇者たち編

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第30話 お前たちは皆殺しだ

 










「(……何も感じられなかった)」


 ルドーは表には一切出さないが、内心では舌を巻いていた。

 男……アルバラードの接近を、一切気づけなかった。


 なるほど、気配を消して動くのは当然だ。

 不意打ちを仕掛けようとするのであれば、誰だってやる。


 だが、ルドーは優れた暗殺者で、殺された部下もまたそうだった。

 自分たちがそういうことをするからこそ、気配には敏感になる。


 だというのに、アルバラードがここまで接近するまで一切気づかなかったし、そのせいで貴重な部下が一人見るも無残な姿に変わってしまった。


「安心したまえ」


 顔を上げると、アルバラードが優しい笑顔をルドーに向けていた。

 ぶっ飛んだことを言わないでいつもこんな感じでしていたら、めっちゃモテるだろうに。


 精霊は、思ったが口には出さなかった。

 そんな評価を受けていたアルバラードは、にっこりと微笑んだまま言った。


「五分後には、お前たち全員がこうなっている」

「正々堂々とした殺害予告」


 ルルはドン引きである。

 勇者が殺害予告、しかも撲殺宣言なんて……。


 受け入れたくない現実だった。

 なお、同じく巨大な鉄槌で撲殺しまくるスピカとしては、共通点を見つけられてなぜか目をキラキラと輝かせていた。


「ふわあ……眠い。アル、おんぶ」

「うむ」


 目をしばしばとさせた精霊が、両手をアルバラードに向けて広げる。

 彼は腋から腕を伸ばし、彼女を抱っこし、そしておんぶに移行する。


 硬いが、なかなか寝心地はよかった。

 精霊はまた半分意識を飛ばしながら、寝そうで寝ない感覚を楽しむのであった。


「――――――ッ!」


 鋭いナイフが、そんな気の抜けたアルバラードに向かって投擲された。

 狙いは首元。一切ずれることなく、人体の致命傷となりうる場所に向かって突き進む。


 完全な不意打ちということもあって、彼にダメージが入るのは、投擲した暗殺者やそれに気づいていたルドーは確信していた。

 だが……。


「っ!?」


 ルドーも、ルルも、そしてスピカでさえも愕然とした。

 勢いよく飛んでいたナイフは、完全に止められていた。


 アルバラードの、二本の指で挟むようにして。

 指での白刃取りである。


 まさに、絶技と称されるべきものだった。


「返そう」


 なんてことないように、アルバラードが言う。

 ひゅっと腕が振るわれたと思うと、ナイフを投擲した暗殺者の額に、それがめり込んでいた。


 ドシャリと地面に崩れ落ちる。

 普通の人間では到底できないことを目の前でやられて、誰もが唖然とした。


「うわぁ、えっぐぅい」

「なんなのこいつ、マジで。どうして勇者でいけると思っているのよ……」


 いや、まあこれくらい強いのであれば、勇者というのも理解できる。

 正義を振りかざすには、力が必要だからだ。


 ルル以外の四人の勇者も、誰もが一騎当千の力を持っている。

 アルバラードも、そこに入れてもそん色がない……というか、圧倒するほどのものがある。


 ただ、なんというか……普通に認めたくなかった。


「おいおい、こんな怪物がいるなんて聞いていないぞ。どうなっているんだ、依頼主さん」

「なんと。お前たちに悪を依頼した悪人もいるわけだな。では、お前たちの後をちゃんと追わせてやるから、そいつのことを教えてくれ」

「教えるわけないだろうが」


 ぶっ殺す発言をしている奴に、どうして自分の依頼主を教えるのか。

 こういった裏家業は、汚い仕事をするからこそ、信頼というものが表の世界よりも重要になってくる。


 ペラペラと依頼主のことを話す奴に仕事なんて回ってこないし、そもそも口封じに殺されるだろう。


「私たちの邪魔をしないでもらいたいんだが……」


 その言葉を聞いたアルバラードは、ニヒルに笑った。


「それはできないな。お前たちは皆殺しだ」

「こんなこと言う勇者っているのぉ?」

「いるわけないでしょ!」


 スピカに問われたルルが怒りを爆発させる。

 別に勇者という立場に誇りなんて抱いていなかったが、あれと同じ扱いをされるのは断固として拒否する。


 ふざけんな。二言目に『殺す』が来る勇者と一緒にするな。


「……仕方ないな。私が手ずから、お前を殺すしかないようだ」


 ルドーは殺意をあふれさせる。

 暗殺者であれば隠しておかなければならないものだが、もはや姿を露呈している今、わざわざ抱え込む必要もない。


 正面から、アルバラードを殺す。

 ルドーはそう決めていた。


 そんな彼を見て、アルバラードは笑みを浮かべる。


「この私にそのような啖呵を切ったのは、百人目くらいだ」

「多い!? どれだけ恨みを買われているにゃ!?」

「そして、全員が血だまりに沈むことになったのだ」

「えぇ……」


 ことごとくを返り討ちにしてきたアルバラードが動く。

 瓦礫付きの聖剣を構えると、一瞬で移動。


 ルドーに迫る。


「では、さっそく死ね」


 急速な動きについて行けていないルドー。

 そんな彼に向かって、上段から聖剣を思いきり振り落とす。


 先程の暗殺者のように、同じく悲惨なミンチの死体をさらすことになると思われたが……。


「なん、だと……?」


 その聖剣を、身体に当てられながら通り抜けさせたルドーを見て、アルバラードは愕然とするのであった。




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殺戮皇の悪しき統治 ~リョナグロ鬱ゲーの極悪中ボスさん、変なのを頭の中に飼う~


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― 新着の感想 ―
悪ではないが殺意が高すぎる
作者様の今までの作品にない主人公でとても笑わせて貰いました。 これだけ殺る気に満ち溢れるキャラは初めてかも。
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