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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~  作者: 溝上 良
第2章 5人の勇者たち編

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第28話 でも、闇の力よ!?

 










 ハンナを連行することを諦め、一度王都に戻ることを決めたスピカ。

 さすがにすぐさまとんぼ返りは、体力的にも心情的にもしたくなかった。


 あまりダラダラと時間を無為に使うわけにはいかないが、今日は一日泊まって体力を回復させることにした。

 先日賊の襲撃を受けた村ということもあって、宿屋はそれほど立派なものではなかったが、特に寝られたらそれでいいスピカとルルは、文句も言わずに宿の部屋の中にいた。


「ふわぁ、ねむ……」

「さっさと寝たらいいにゃ。私も眠いし……」


 目をしばしばとさせる二人。

 柔らかくはないベッドだが、一瞬で眠りにつけそうなほど疲れていた。


「日が昇ったら、王都に帰るのよね?」

「うん。ちょっと想定外のことが起きすぎているからねぇ。色々と発生しているから、ちょっと面白くなってきちゃったぁ」

「私は疲れたわよ……。あんなエセ勇者が現れるなんて……」


 ウキウキしているスピカと違い、ルルはげんなりとしていた。

 猫耳もしっぽもしんなりと垂れていた。


「あの人は勇者じゃないの? とっても面白そうな人なのにぃ」

「勇者は五人って決まっているでしょ。聖剣の数がそうなんだから。六人目の勇者なんて、偽者に決まっているじゃない」

「どうかなぁ? というか、それは実際に戦う姿を見た方が分かっているんじゃない? 私は少なくとも、あの聖剣は相応の力があるように見えたけど?」


 スピカはすべてが終わってからこの場所にやってきたので、結局アルバラードが勇者らしく活躍したのか、それが分からない。

 だが、ルルは違う。


 何なら、共闘をしたと言っても過言ではない。

 共通の敵である魔王軍四天王の一人を消滅させたのだから。


 確かに、その実力の高さは認めている。

 ヘタをすれば、自分と同等かもしれない。


 だが、どうしても認めたくない理由があるのである。

 それは……。


「でも、闇の力よ!? 聖剣なのに、光とか火とかじゃなくて、闇を操ったのよ!? 聖剣というより、絶対に魔剣よ、あれ!」


 そう、闇である。

 ルードリックとの戦闘で聖剣の力を行使したアルバラード。


 その力こそが、闇だったのである。

 ……どこの世界の聖剣が、闇を纏って闇をあふれさせる力を持つというのだろうか。


 ルルはとくに勇者という名称などに強く執着しているわけではない。

 辞められるのであれば、すぐにでも辞めたいくらい。


 とはいえ、自分がアルバラードと一緒に考えられるのも、また嫌だった。


「……確かに、闇の聖剣って言われると一気に信ぴょう性がなくなったなあ」


 スピカも苦笑いだ。

 聖剣が聞いていたらブチ切れていたことだろう。


「なんにせよ、面白い人だし、報告しないとねぇ。あの方は、すっごく喜びそう」


 キャッキャッと喜びそうである。

 そんな姿を想像すると、かわいいなあと思う。


「勤め人は大変だにゃあ……」

「あなたなら、あの方も喜ぶと思うよぉ?」

「嫌よ。私は自由に生きるの。勇者という肩書も面倒くさいくらいなのに。そろそろ、勇者会議もあるし」


 はあっと、重たいため息をつくルル。

 何にも縛られずに自由に生きたい意向が強い。


 基本的にほとんどのことに強制されることはないのだが、数少ないそれが勇者会議である。

 まあ、あまりそりの合わない人間が集まって近況報告をするだけの簡単なイベントなので、我慢できなくもないのだが……。


 アルバラードに匹敵するようなおかしな連中ばかりなので、気が滅入るのである。


「……それって、あの人も呼ばれるのぉ?」

「な、ないでしょ。ないでしょ……」


 余計なことを言ってくれるな。

 実現したらどうしてくれるんだ。


 ルルは、自分は関係ないからと好き勝手言うスピカを睨みつける。


「も、もう寝るわ。嫌なことは忘れるに限るもの」

「私も眠いし賛成」


 そう言って、二人はベッドに入る。

 明かりを消し、しばらくすると寝息が聞こえてくる。


 それから、窓が音も立てずに開く。

 扉も、同じく無音で。


 そこから入ってきたのは、複数の暗殺者たち。

 彼らは、何の躊躇もなく、暗闇の中でベッドに鋭利な刃物を突き立てた。









 ◆



 就寝しているときは、人間に限らず生物がもっとも無防備になる瞬間の一つである。

 当然、暗殺のようなことをする場合も、こういった夜中に行うことが多い。


 今回、暗殺を行おうとしたのは、ハンナを誘拐する際に邪魔されないようにしておくためである。

 騎士と勇者がいれば、間違いなく邪魔になるだろう。


 だから、先に脅威を排除しようとしたのだが……。


「…………」


 手ごたえがない。

 完全に不意をつけたと思っていたが、空振りに終わる。


 しかし、優れた暗殺者である彼らは、数瞬の硬直で自分を取り戻すことができた。

 それは、素晴らしいことだっただろう。


 だが、その数瞬の隙が生まれただけで、今回の暗殺対象は十分だった。


「私みたいな立場を暗殺しようとするなんて、驚きだよぉ」


 つい先ほど命を狙われたとは思えないほど、柔らかい声を発するスピカ。

 すぐに構えをとる暗殺者たちであるが、ギョッと目を見開く。


 それは、彼女が手に持つ、部屋の天井にまで届きそうなほどの、巨大な鉄槌を見たからだ。


「どーんっ」


 振るわれたそれは、宿の壁を一撃で吹き飛ばすのであった。




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殺戮皇の悪しき統治 ~リョナグロ鬱ゲーの極悪中ボスさん、変なのを頭の中に飼う~


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