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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~  作者: 溝上 良
第1章 自称勇者と自称聖剣編

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第21話 心臓止まってそうな奴が一人いるわね……

 










 ふわりとした、丁寧に手入れされた栗色の髪。

 ニコニコと緩い笑顔を浮かべた彼女に似合う髪色だ。


 そしてなにより……。


「で、でかい……!」


 私が思わず戦慄してしまうほどの胸部装甲。

 馬鹿な……。ハンナと互角……いや、それ以上か?


 まさか、そんな人類が存在するとは思わなかった私は、激しく狼狽する。

 ……いや、あれか。牛の獣人とかそんな感じじゃないか?


 猫の獣人もいるし、いないことはないだろう。知らないけど。

 しかし、獣人特有の獣の耳やしっぽなどがないから、普通に人間なのだろう。


 ……こわ。


「で、こちらの方は?」

「えーと……名前を聞いていなかったわね」


 ルルの顔がアルに向けられる。


「私の名はアルバラード。勇者だ」

「んん? 勇者……?」


 不思議そうにスピカが首をかしげる。

 確かめるように、ルルを見る。


「もう出そろっているはずなんだけど、勇者と言って話を聞かないのにゃ……」

「自分のことを勇者だと思っている頭のおかしい……」


 その通りだわ。


「私もそう思っていたんだけど、実際に魔王軍四天王を倒すほどの力を持っているし、聖剣っぽいのも持っているのよね……」

「ぽいってなにかしら?」


 私を見つめてくるルルにブチ切れそうになる。

 アルは自称勇者だけど、私は本物の聖剣だから!


 自称聖剣じゃないから!


「四天王を倒した!? それって、すっごい凄いことだよ!」

「ふっ……それほどでもない」


 何でもないようにしているが、実際に凄いことだろう。

 ほとんど引きこもっていたから最近のことは分からないが、少なくとも私が嫌々使われていた時は、四天王はかなり人類にとっての脅威となっていた。


 それこそ、一人で小国を滅亡させることができる実力者ぞろいだった。

 私の力を使わせてあげたというところもあるけど、アルもよくわからないわねぇ……。


「死体とかが残っていないからはっきりと倒せたとは言えないけど、撃退できたのは事実みたいだね。ルルもいるし、嘘じゃないってことは分かるから、褒賞とかもらえると思うよ」

「いや、不要だ。私は誰かに褒められたくてしているわけではないからな」

「……本当に勇者っぽくて嫌なんだけど」


 ルルが嫌そうに顔を歪める。

 ここで私利私欲を優先してくれるような奴だったら、私もここまで強く惹かれることはなかっただろうに!


 聖剣としての本能が、アルの善性に引き付けられまくっている。


「適性はバッチリなのよ。適性は……」


 そう、適性だけは間違いなく今までのどの勇者よりもあるに違いない。

 それが困るのだが……。


「それで、君たちはどうしてここに? 四天王がいることに気づいてやってきたのか?」

「ううん、違うよ。さすがにそれは分からなかったし」

「じゃあ、賊に襲撃を受けた村を助けに?」

「それも違うかな。もちろん、助けを求められたら援助はできるだろうけど、一義的に対応するのはその村を治めている領主だし。求められていないのに勝手に助けに入れば、越権行為だしね」

「じゃあ、どうして?」


 私が問いかけると、スピカがコクリと頷いた。


「この辺りに潜んでいるという、一級犯罪者を捕まえにきたんだよぉ」

「一級、犯罪者……?」


 ピクリと、アルが反応する。

 まあ、一番嫌いな言葉の一つだろうしね、犯罪者って。


 ……そんな反応を見つつも、私は視界の端でとある女を捉えていた。

 いやぁ……やっぱり目が離せないわねぇ……。


「名前は知れ渡っていないけど、二つ名は轟いているよ」


 スピカはニコニコと笑いながら口を開く。

 笑いながら言うことじゃないと思うけど……。


 やっぱり、こいつもどこかおかしいわね。


「その名も、『快楽人体実験錬金術師』ハンナ」

「なん、だと……?」


 とんでもない二つ名に愕然とするアル。

 なにこの顔、おもしろ。


 ずっとアルの顔を見ていたいくらいだったが、私はどうしてももう一人気になる人間がいて、そちらを見てしまう。


「――――――」


 心臓止まってそうな奴が一人いるわね……。

 ねえ、ハンナ?


 ……てか、アル。その無表情でじっとハンナを見るのは止めなさいよ。怖いわ。




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