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序章 2-2



「クリウスのとっつあん、あんたもいまさら気落ちしてる場合じゃないだろ。あんたにしっかりしてもらわなきゃ死んで行った、クローネの親父さんにどう申し開きするんだよ。親父さんは俺たちに後のことを託して死んで行っちまったんだぜ、ここに来て弱気になるんじゃねえよみっともねえ」

「しかしなイアン、こうまで当初の作戦が裏目に出ては、根本から対応を練り直さなくてはどうにもならんではないか」

 カーベリオスは、苦虫を嚙み潰したような顔で年下の武人を睨み付ける。


「なにをどう練り直すんだよ、もう援軍はどこにもいないんだぜ。だったら堂々と正面から、あの馬鹿なヒューガンにまんまと踊らされている糞野郎どもを、ぶっ潰すしか手はねえんじゃねえかよ。そうすりゃいっぺんに片が付く」

 イアンは数に勝る利点を生かして、全面衝突で一気に相手を叩くことを考えているようである。


「万が一緒戦で後れを取ったらどうする、われらには逃げ場はないのだぞ」

 慎重論を口にする上官に対して、まるで意に介した風もなくイアンは反論する。


「なあに、俺は絶対に負けねえから安心しな。例えこの身が粉々になろうと絶対に勝ってやる、俺も俺の可愛い騎士たちも、あのバラン家を滅ぼした時からとうに命なんざ捨てちまってるんだ、俺の騎士団に命を惜しむ臆病者は一人もいやしねえ。それに俺たちにはクローネの親父がついてる、親父は言ったじゃねえか〝たとえ此の身は滅びようとも、わが心は永遠にサイレンの地にとどまり護国の鬼とならん〟ってね」

「クローネがサイレンを守ってくれるか──」

 カーベリオスは柔和な表情でいつも笑っていた、いまは亡き親友の顔を思い出していた。


〝こんな時にこそお前にいて欲しかった・・・〟

 彼は心の底からそう思わずにはいられなかった。

 あの口髭をたくわえた穏やかな顔で、

〝なにを慌てている、後ろには儂がついておるのだ安心して闘ってこい、お前は敗けはせん〟

 低い声でそう言われるだけで、本当に力が湧いて来たものだった。


 いなくなって尚更、クローネという男の存在が大きかったことがわかる。

 彼こそがサイレンの主柱であったのだ。


「絶対に勝つ、死んでも勝つ。じゃねえと俺がこの手で殺したルバートのやつに、あの世で合わす顔がねえんだよ。カーベリオス将軍あんただってそうだろ、ガキの頃からの盟友だったクローネの親父に笑って会いてえだろ。だったらここで踏ん張り切るしかねえんだよ、ごちゃごちゃ言ってる場合じゃねえ後は気合いだ、やり切るんだ」

「よし、カーベリオスこうなればイアンの献策通りに正面から雌雄を決しよう。数で勝っている内が勝つ機会だ、あとは運を天に任せ聖龍騎士団と心中だな」

 クリウスが決断を下した。


「いいのかクリウス、その一戦で敗れればわれらは二度と巻き返すことは出来んかもしれぬのだぞ。あるのは死だけだ」

「いいじゃないか、その時は潔くあの世のクローネにすまなかったと頭を下げるさ。あいつのことだきっと笑って許してくれる」

 そういってクリウスは、カーベリオスの肩に手を置いた。


「馬鹿いってんじゃねえよ、あんたらは死なせねえぜ。俺と騎士団がどうなろうとあいつらに政は返さねえ、たった一人になろうと闘い抜いてみせる。聖龍騎士団はトールンに散ろうと、俺たちの心はいつまでもここに残る。死ぬのは俺の仕事だ、万が一の時にはあんたらは逃げてくれ。まだバロウズにもノインシュタインにも味方はいるんだ、他の地方領主だってきっと俺たちに味方する奴らが出て来る。あんたらが生きてりゃなん度だってやれるんだ、最後に勝ちゃいいんだよ。トールン決戦で意地を見せるのは俺だけでいい、あんたらは勝つまで諦めるな。いいか、どんなに惨めだろうと生き残ると約束しろよ」

 漢イアンが歯をむき出して嗤った。



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