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序章 2-6



「わたしの館の金はもうすっからかんでしてね、傭兵たちにすべて渡してしまったものですから。通常の五倍の金貨でここまで連れて来た。なあに、勝てばまた金儲けができる、敗ければそれまでのこと。だから払った金の分はあいつらには働いてもらう、いつ裏切るやもしれぬ傭兵どもゆえ、こうして監視役としてわたしがついて来た。先方はわが傭兵どもが務める、異存ござらぬな」

 通常の五倍の金貨をすべて前払いしているという、

 その額に見合う対価は命しかない。

 アムンゼイは全財産と引き換えに、傭兵の命を買ったのである。


 いつ裏切るか分からぬ傭兵たちの監視役として、槍働きが出来るわけでもない身に慣れぬ甲冑を纏って、戦場最前線にまで来ているのだ。

 文官にしては、相当に胆の据わった人物である。


「あいや異存は大ありだ、傭兵どもに先陣を譲ったなどと知れればサイレン武人の恥だ。ここはどうあってもこのトールン防衛騎士隊にやらせて頂きたい」

 セルジオラス防衛騎士隊大隊長が、勢い込んで口を挟む。


 一途な性格らしく、イアンのどこか悟ってでもいるかのような静かな雰囲気とは正反対に、顔どころか全身から悲壮感を漂わせ、身体を小刻みに震わせている。

 恐怖から来る震えではなく、正真正銘の武者震いであるらしい。


 トールン防衛隊とは武門の組織ではない。

 サイレン元帥府に属してはおらず、トールン行政府の管轄下にある特殊な騎士隊であった。

 組織的には『公都警護隊』『トールン武装警護隊』の上位に位置する、警察組織の一部であった。

 人数的にも、総勢千五百名弱の小さな集団である。


 しかし公都トールンを守護するという一点においては、聖龍騎士団にも引けをとらぬ強固な意志を持っていた。

 その中でもこの大隊長セルジオラスは生来の一本気らしく、今かいまかと決戦を待ち望んでいる風でもある。

 この男も、とうに命を捨てている一人であるらしかった。


「なにを生意気なことを言っておる小僧どもめが、ここが儂の死に場所と決めておるのじゃ、先陣はこのエリオットとわが騎士団に任せておけ。死兵と化したリッパ―騎士団の、尖槍陣の威力をとくと馬鹿者どもに馳走してくれる。でないと先に死んだクローネに土産話が出来んでな、この老人に死に花を派手に咲かさせてくれい。このとおりじゃ──」

 老人が居並ぶ諸将に頭を下げる。


「お手をお上げくださいエリオット老、わかりました今日の先陣は貴男にお願いしよう。しかし無茶な突撃はお止めくださいよ、生きてこの戦を勝つのです。老にはまだまだこの先も長生きして、みなを叱ってもらわねばなりませんからな」

「おおかたじけないなイアン、なんの儂とてむざむざ死ぬための戦をするつもりはない。出来れば今宵もみな揃って夕餉を共にしたいものじゃ」

 エリオットの言葉に諸将たちも頷く。



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