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保健室と美人な同級生

 「おはよう…」

 「おは……ってどうしたお前、特に目の下のくま」

 「あぁこれは──」


 高橋に昨日のことを話した。


 「なんだそれ羨ましいなおい!!」

 「どこが羨ましいんだどこが!!」

 「だってよぉ…お前……」


 高橋が泣きながら肩を掴んでくる。

 なんで泣いてるんだコイツ……。


 「美人な姉が、しかも同じ空間で、一緒にゲームしてくれたんだろ?そんなん漫画でしか見たことねえよ!!」

 「近いなおい!!」


 至近距離で言ってくる高橋をなんとか両手で遠ざけた。


 「それはそうと休めば?保健室で」

 「急に冷静になったなおい」


 コイツの情緒どうなってんだと一瞬思った。


 「てことで先生には言っておくから保健室行ってこいよ、今から」

 「は?別に授業受けるくらい我慢でき…」

 「良いから行ってこい!!」


 高橋に背中を押され、教室から廊下に押し出された。


 「わ、わかったよ」


 その後保健室に行く途中で高橋が先生に説明をし、俺は保健室で休む(寝る)ことになった。


 「まさか授業を休むことになるとは」


 ベットに寝ながら天井を見上げる。

 近くで別の先生が仕事をしている為、静かに目を瞑った。


 (そう言えば……)


 ふと思い出した。

 朝のこと、鈴鳴すずなりさくらが自分を尾行し、話しかけようと後ろを突いてきていたこと……。

 体を横にし、しばらく考えた。


 「もしかしたら彼女は……」


 鈴鳴すずなりさくらは、俺のことが──。


 「…考えすぎか」


 布団に潜りながら目を瞑り、静かに眠りに入った。


 『ガラガラ──』


 誰かが保健室に入ってきた。


 「すいません、具合が悪いので休んでて良いですか?」

 「良いよ〜、あと先生用事あって保健室離れるけど、教室に戻るなら鍵閉めといて、鍵は置いとくから」

 「はい、ありがとうございます」

 「それじゃあ休んでてね〜」


 先生が保健室を出て行った。


 「……」


 あれから何時間寝ただろうか、ふと目を覚まし、周りを見た。

 まだ先生は帰ってきていない、なのでもう少しだけ寝ることにした。


 「……っ」


 なにかに手の甲が触れた。

 何度も何度も触れている。

 気になって薄めになり、隣を確認した。


 「……」


 鈴鳴すずなりさくらが俺の手を指で撫でていた。


 「はぁ…」


 ため息を吐きながら、ずっと指で撫でている。

 俺が起きてないと思っているのだろうか、少しくすぐったい……。


 (いや…え??)


 混乱しながらも、起きないように様子を見る。

 なかなかやめてくれない、それどころかなにか呟いている。


 「肌白いの良いな……」


 どうやら白い肌が気になっているようだ。

 確かに肌が白いのは事実だけど、指で撫でるほどのことだろうか、俺は寝たふりをした。


 「…ゆ」

 (ゆ?)


 なにか言おうとしてる。

 耳を澄ませながらよく聞いてみと──。


 「遊園地、誘えるかな…」

 (……)


 彼女はため息を吐き、ゆっくりと腰を下ろしながら、指で手の甲を撫で続けていた。


 (遊園地か)


 学校の女子から遊園地に誘われた。

 なんて言ったらウチの姉どんな反応するだろうか、多分アドバイスしてくる。

 てか無視しても絶対してくる。


 (『お前それデートだからな?』、とか言いそう…)


 そしてフッと笑いながら──。


 「…良いよ」


 思わずボソッと呟いた。


 (……あ)


 つい口に出してしまった。

 てか誘ってる相手が自分かまだわかってないのに返事するの良くなかった。

 やばい、違ったらめちゃ恥ずい、姉に知られたら絶対馬鹿にされる。

 自意識過剰にも程がある。

 鈴鳴すずなりさくらから声が聞こえなくなった。

 思わず薄めで横を見る。


 「……」


 こちらを見ながら固まっていた。

 てか顔真っ赤になってた。

 ダメだなこれ、どうしようか、寝てると思っていた相手に独り言聞かれてたとか向こうも恥ずかしいだろうな、寝たふりを続行した。

 

 「起きてる?」

 「……」


 あー寝てます寝てます、起きてません全然まだ寝てます。


 「冷や汗出てるけど…」

 「……」


 バレてるなこれ、寝たふり意味ないは、うん起きよう。

 ゆっくりと目を開けて横を見た。

 こちらが起きてるのを知ると、彼女の顔が更に真っ赤になった。


 「起きてたんだ…」

 「うん」

 「…いつ?」

 「手の甲を撫で始めたところから」

 「……」

 「……」


 しばらく沈黙の時間が続く、お互いなかなか口を開かない、最初に口を開いたのは──。


 「あの、遊園地の件だけど……」

 「っ、うん…」


 俺から喋り始めた。

 

 「……」


 言うべきか迷った。


 『もしかして俺を誘ってる?』


 って言って違ったら恥ずかしいってレベルじゃない、最悪一日中ベットの上で項垂れる。

 どうするべきか考えていると、鈴鳴すずなりさくらはゆっくりと立ち上がり、ドアの方に向かっていく。


 「……」


 ドアの前で立ち止まると、少しだけ顔をこちらに向けた。


 「ほ…ほ…」


 何かを言いたそうにしているのがわかる。

 静かに待っていると、鈴鳴すずなりさくらはようやく言葉を口にしてくれた。


 「放課後……遊園地……」

 「……」

 「その、話したいから……」


 その後沈黙が続いたが、次に鈴鳴すずなりさくらの口から出た言葉は──。


 「一緒に、帰らない…?」


 声が震えていた。

 緊張しているのが後ろからでもわかった。


 「……良いよ」

 「……」


 その言葉を聞くと、鈴鳴すずなりさくらは静かに保健室を出て行った。

 残された俺は、ゆっくりとベットに仰向けて寝転がり、そのまま天井を見上げる。


 「……はぁ」


 安堵のため息を吐きながら、ゆっくりと目を閉じた。

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