表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月明かりの妖姫  作者: 穂月千咲
藤ノ宮編
95/114

第二十舞 隠す

 あれから三日後。仕事の合間に日和と雪葵は御苑裏の森を訪れた。頂上に向かうと大きな石の上に燈威が座っている。その背中はまだ寂しそうで、でも頼もしくも見えた。


「燈威」


日和が声をかけると燈威が振り返り、嬉しそうに駆け寄ってくる。


「わあ、日和に九尾。来てくれたんだ!」

「燈威元気そうで何よりだよ!」


 雪葵が人間の姿になって燈威に抱きつく。彼の目の周りは少し赤い。


「まだ夜になると泣いちゃうけど、でももう泣かない。俺、もっと強くなるんだ。そしてこの森を護ってみせる。だって蛇神様は俺の中にいてくれてるんだもん」


燈威の笑顔には曇りは見えない。日和も一緒に微笑んだ。


「うん。私達も協力するからね」

「うん!ありがとう」


 日和はふと雪葵を見る。


「そう言えば、雪葵は何か思い出したことない?」


 雪葵の顔が曇る。そして頭を抱える。


「なんか引っかかってる気がするんだよなぁー。けど全然思い出せない!」

「死神の言うことが本当なら、雪葵は記憶を思い出さなければならないってことだもんね。本当なら、の話だけど…」

「そうだ!燈威。僕ってどんな感じだったの?」

「え?あ、あー…普通の妖だったよ」

「えぇん?」


 目を泳がせる燈威に雪葵が顔を歪ませて迫る。燈威が「ひっ!」と小さく悲鳴をあげた。


「はいはい、雪葵、落ち着いて」


 日和が雪葵を燈威から剥がす。暴れる雪葵に拳骨を預けて大人しくさせると、日和は怯えた燈威を見る。


「前から思ってたんだけど、八妖樹のみんなって、どうして雪葵とのことを話さないの?そうしたら雪葵の記憶が思い出されるかもしれないのに」

「そうだよ!僕の罪ってなんなの?それくらい教えてくれたって良いじゃん!」

「そ、それは………うぅ」


燈威が二人の圧に負けたのか泣き出す。二人はわたわたと慌てる。


「え、あ、ごめん。そんな責めるつもりじゃなかったんだけど…」

「僕も苛苛してたの、ごめんね?」

「うぅ〜〜〜」

「何してんのー?」


 燈威が更に泣き出して二人で必死に宥めていると、上から声が聞こえる。と思うと燈威の目の前に降りてきた。


「あ…柚寧」

「うぅ〜覚〜」

「よしよ〜し。……いじめ?」

「断じて違う!」


燈威を抱きかかえながらの疑いの目を向けられ、必死に弁解する。なんとか分かってくれたところで、事情を説明する。


「あーそういうことねー。確かに俺達が話してやってもいいんだよ?」

「…上から目線」

「けど、自分で思い出す方が九尾の為だと思ってんの。罪を忘れたことも仕方がないって言えば仕方がないしね。許さないけど」

「いや、仕方なく思ってないじゃん」

「だから敢えて俺達からは何も言わないんだー」

「けど何かきっかけがないと、思い出せるものも思い出せないでしょ」

「うーん、何とかなる?」

「ならんわ!」


雪葵が柚寧に噛みつきにいったが、見事に打ち返されていた。


「はあ。それなら鬼の封じられたあの岩場に行ってみたら?何か感じるものあるでしょ」

「いってぇ。あそこはなんか嫌な感じがする。頭痛くなる」

「その先の感じを汲み取るのー。莫迦?」

「莫迦じゃない!わかったよ!やってやる!」


雪葵がヤケになっている。日和はため息をついた。



静まり返った夜。森の頂上には燈威の他に柚寧、依睦、そして雫の姿もある。


「死神がそんなことを…」

「助言してくれたのかー、はたまた挑発なのかー」

「おい!死神ってなんだ!」

「鎌鼬は黙ってて」

「分かんないよお。ただ、九尾は思い出さなきゃならないって本気で思い始めてる。俺達が何も言わないの、やっぱり不自然だよ」


燈威が心配そうに言う。柚寧が手をひらひらとさせる。


「でもー。昼間の俺の言い訳、中々それっぽかったでしょ?」

「うー、それはそうだけどー。少なくとも日和は納得してなさそうだった…」

「あいつは勘が鋭い。迂闊に嘘はつけない」

「あれ、雪男。もしかして怖がってる?琴葉とおんなじ?」

「うるさい」

「あいつには、このままでいてもらいてねーな!あいつは俺が倒す!」

「あぁ〜!鎌鼬、木を切り倒さないでよぉ!」


 依睦が木に鎌を投げまくっているのを見て、燈威が嘆く。


「でもそれってずるいんじゃない?本気じゃない相手とやり合うわけでしょう?」

「ぐっ……」


 図星をつかれ、依睦が固まる。しんと静まった空気に雫が呟く。


「あいつが本来の力を取り戻せば……俺達が滅ぶ」


突発的な風が吹き荒れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ