序奏舞 プロローグ
我が主人は不運だと思う。小さい頃から忙しい親には相手にしてもらえず兄妹の世話ばかり任されていた。主人は嫌がった。親に構って欲しくて兄妹の面倒など全く見なかった。侍女達の気遣いも嫌がった。そのせいもあって今では兄妹、特に妹から嫌われているようである。
また侍女達の間での黒い話を幼い頃から聞かされていた。どこからとなく、いじめや愚痴が聞こえてくる。遂には主人にある侍女を無視するようにとお願いした侍女がいたそうだ。せめてもう少し主人が大きくなってからにしてほしかった。いや、いくつになってもしてほしくはなかったのだが。
主人は幼い頃に女の標的になった。主人の有無も聞かず服を脱がせ迫ってきた。次から次へと女達は主人に手を伸ばしてくる。主人の女嫌いはここから来ている。
それに。主人は命を狙われた。主人の両親のやり方に納得行かない連中が集まって脅しとして主人を殺そうとした。誘拐されたこともあった。その時はなんとか見つけ出し、助け出せたから良かったものの、彼の心は深い傷を負っていた。自分の親の子であることを嫌がるようになった。
それからはなんでも一人でこなしている。噂話などを含め、他人のほとんどの話に関心を持たないようになり、また命を狙われても対処できるようにと鍛えた。誰にも相談もせず、一人で考え一人で決める。大人らしくなったと同時に子供っぽい所は何も変わらない。
行き詰まれば、怒りを声に出して叫ぶし、自分が不利だと分かれば子供のように拗ねたり、思ってもいないことを口走る。多少呆れることがあるが、仕方ないことである。そりゃぁ怒りたいことは度々あるが、時に尊敬したいと思う時もある。
私はただこの主人に一生お仕えするのみ。私の命は主人の物であり、どのように使われようとも文句はない。
全ては我が主人の幸のために…。




