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月明かりの妖姫  作者: 穂月千咲
藤ノ宮編
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第二十八舞 緊張

 その直後に連絡を聞き、秋人と宗悟、遥希が駆けつけてきた。部屋の悲惨さが状況を物語っていたようだ。


「申し訳ございませんでした、紫苑様。私がお傍にいれば…」

「お前が気に病む必要ないだろ。仕事だったのだから」

「和の娘もすまない」

「い、いえ。私のことはお気になさらず」

「おい、雪葵と雪男の治療は本当に大丈夫なのか?」


 宗悟や周りに気付かれないよう、遥希がこっそり聞いてくる。日和は困りながらも頷いた。


「うん、すぐ治るから気にするな、の一点張り。いくら妖とは言え、重症だろうに」


 雫はさっさとどこかに消えてしまった。雪葵は他の武官には視えない為、蹴られないよう部屋の隅で休んでいる。秋人が雪葵に気付かれぬよう超人技で腹に晒を巻いた。雪葵はそのまま眠っている。


 武官達が怪我人の治療や部屋の片付けに追われている中、紫苑はふらりと部屋を出て行く。日和は追いかけようとしたが、秋人に止められる。


「私が行く。和の娘は妖狐の傍にいてやってくれ」

「……はい。お願いします」



御所内のある一室にて。二人の人間が向かい合って座っている。


「彩芽と悠羽の容態は?」

「問題ありません。優秀な従者のおかげで怪我一つありません。ただ衝撃が大きいようで先程やっとお休みになったところです」

「そうかー……。普通に話して良いのだが?」

「なんのことでしょう」


 紫苑が微笑んで言う。襖を挟んだ隣の部屋には悠羽が眠っている。本当は二人を自身の部屋に連れていきたかったが、あそこは子供以外の男性は禁制の場所だ。見守るには不適切である。


「あの男達、御二方を狙ったことは吐きました。ですがそれ以外は何も。口が堅いようです」


 反帝軍の可能性が高いが、証拠は何もない。厄介だ。


「その男達は身動きが取れないのだな?」

「はい。縛り上げた上、見張りが数人ついています。容易に逃げ出すことは不可能かと」

「それなら心配はないだろう。それより彩芽と悠羽が無事で良かった」


「えぇ。万が一怪我をなさっていたら大変なことになっていました。彩芽様自身や悠羽様自身だけでなく、御苑全体も」

「あぁ」


 秋人が紫苑を見つけた時、紫苑は御所内の柱に頭を叩きつけた後だった。秋人の気配を察知してか紫苑が静かに低く呟く。


「……許さん」


 恐らくは反帝軍の仕業。結亜が狙われ、悠羽も狙われた。確実に天皇の命を奪いにきている。


「武官の気が緩んだ結果かもしれません。今一度気を改めさせます」

「あぁ。これ以上、あいつらの好きにはさせん」


 紫苑の握る柱がビキッとヒビの入る音がした。

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