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覗く片鱗(二十三)

「じゃぁ、大丈夫だよっ!」

 友香里は改めて笑顔になった。何故か雄大よりも自信ありげに。

 雄大がピアノを上手に弾けることを、一番知っているのは友香里だ。何せ一日中聞かされていたから。いや違う。

 有難く拝聴させて頂いた。同じ曲を何度も何度もね。


 まぁ、それはそれとして、とりあえず友香里は窓の外を見る。

 営業用のシールが張ってあって良くは見えないが、どうせ見てはいない。それでも友香里には何故か遊園地が見えていた。


 数少ない遊園地での想い出は、楽しいことしかない。

 豆汽車に乗るも良し。父にしてみれば随分小さい乗り物だったのだろう。窮屈そうにしていたが終始笑っていた。

 雄大が乗ったら、どんな顔をするのだろうか。


 メリーゴーランドに乗るも良し。両親は馬車で。姉と並んで馬に乗り『どっちが速いか』競争したっけ。確か引き分けだったなぁ。

 今となっては流石に『当然』と思えるが、あのときは判らなかった。せめて『インコース』を選択した自分を褒めてあげたい。


 あぁ、コーヒーカップをぐるんぐるんするのも楽しい。

 そうだ。父が珍しく嫌そうに『止めろ』と言うから、かえって皆で回しまくったけど、結局フラフラしなかったのは父だけだ。

 どういうこと? 苦手じゃなかったの? でも、何か笑える。


 友香里が思い出している『遊園地の記憶』は、何れも断片的であり一度きりだ。家族揃ってだから、多分車で行ったのだろう。

 それでも『道順』はおろか、『何処へ行ったのか』さえも覚えてはいない。アハハ。いや両親には、ホント申し訳ない。

 挙句の果てに『いつ帰ってきたのか』さえ、全く思い出せないと来たもんだ。目が覚めたら父はおらず、もう日常に戻っていた。


 もしや『あれは夢だったのか?』とさえ、思ったものだ。後日写真が沢山出て来て『現実だった』と確認できたのだが。

 そう言えば『アルバム』は、何処へ行ってしまったのだろうか。久し振りに見たい気がする。姉にも会いたいし、父にも会いたい。

 勿論母にもだ。あの頃は皆若かった。


 友香里は突然『ニヤッ』と笑う。もう一つ追加で『お化け屋敷に行かれなかったこと』を思い出していた。

 明るい雰囲気の遊園地に突如現れた謎空間。それが初めて見たお化け屋敷。目の前で『どうするか』と、家族で随分悩んだ。

 見た目からしておどろおどろしい場所。父が看板を指さして、一つ一つの『お化け』を説明し、まじまじと見たものだ。


 だから、少しばかり興味はあったのだが、結局反対多数で否決されてしまった。一瞬『行くか?』と成り掛けたのに。

 それもこれも、泣き叫びながら飛び出してきた女の子のせい。当然『家もああなる』と思ったのだろう。致し方なし。


 雄大とならどうだろうか。入り口で渋るのか? そう言えば『慌てる姿』や『恐怖におののく姿』なんて見たことがない。

 横目で雄大の方を見ると真面目な顔で前を見ている。まさか『お化け屋敷に行く』だなんて、想像もしていないのだろう。


 友香里は『ニヤッ』と笑った。ちょっと楽しみだ。

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