覗く片鱗(十九)
「金髪なんだぁ」
黒髪の早苗が、何故か『どうだ』と言わんばかり。誰とも言っていないが、手紙の主『ジェニファー』のことだろう。
「へー」
特に興味はない。と言いつつも友香里は自分の髪を眺めた。
いつも通りの黒である。金髪に染めるのも悪くないと思っているのだが、営業上の『キャラ設定が黒』なので変えられない。
いや本当は、父が何と言うか判らなかっただけ。
友香里は髪の色よりも、音楽活動の方に興味があった。
表情を変えずに友香里が早苗に視線を戻したので、早苗も『金髪では効果が無い』と感付いたようだ。
直ぐに繰り出される次の攻撃はと言うと?
「ボインなんだよっ」「へー。お姉ちゃんよりぃ?」
同じ『三年生』でも、小学生と高校生では育ちが違う。
小学生から見れば高校生は大人も同じ。それでも友香里の問いに早苗は大きく頷いた。それどころか、右手を顔の前に持って来ると、横に振り出したではないか。
「もう、全・然・!」「なっ、なによっ!」
早苗の細めた目を見て、友香里は一瞬にして頭に血が昇った。
ホームステイ中、一緒に風呂に入り『実物を拝んだ』のか知らないが、服の上から見ても『判別可能な程の違い』なのだろうか。
早苗の口元を見ていると、右側の口角だけが上がって行く。
顔も少しづつ横を向き、横目がちの細目で友香里を眺め始めた。
憐みの目。小さく鼻息まで。誰の影響だ!
それでいて目だけを動かして、友香里の胸と顔とを交互に観察し続けているのには理由がある。
胸の方は『ジェニファーと比較するため』であり、顔の方は『身の安全を守るため』だ。友香里が殴り掛かって来たら、ダッシュで逃げられるようにしている。そうに違いない。
そもそも、かさ上げしているかもしれない『服の上からの比較』など、スタイルの基準にする方がおかしい。絶対おかしい。
しかしこういう時、本人は『頭に血が昇った』と自覚はしていない。お出かけ前にちゃんとチェックした所でもあるからだ。
友香里は足を肩幅に広げ、両手を背中に回し胸を張った。
「どう?」
聞いたのは、手紙を読む雄大の方だ。絶対今の会話は聞いていたはずだ。何しろ口を挟んで来た実績が物語っている。
雄大は『チラッ』と『友香里の顔』を見たが、肝心の『胸の方』は見ない。それどころか、若干迷惑そうな顔をしているではないか。
結局『どう言って良いか判らない』を無言で訴えて、目線を手紙に戻してしまった。
多分雄大は、ジェニファーと一緒に風呂へ入っていないのだろう。
「まだまだぁ」
代りに答えたのは早苗だ。友香里が振り向く。
すると早苗は、友香里の奮闘を讃えているのか、それとも呆れているのか。更に勢い良く手を振っている。顔の前で横に。
友香里は頭に来て、思わず右足をその場に叩き付ける。




