差し入れは高級
「お引き取り願います」
「...辰也君の事を思ってお見舞いに来たのですが?」
「お引き取り願います」
さっきから何度も繰り返されているこの終わりのない押し問答は町娘の住んでいる宿の前で繰り広げられていた。
妹さんと少し話して知った事は妹の方はレイラ、姉の方はリビアで二人はこの宿屋を経営している夫婦の養女たちだという事。そしてレイラちゃんが辰也の様子を見に行った直後、リビアの方が突っかかってきた。
「...嫉妬でもしてるのかしら?」
「ばっ、はぁっ?!嫉妬って、嫉妬じゃ...うううぅぅう、とにかくタツヤに関わらないでください!」
「私は達也君の知り合いなのよ?別にあなたにどうこう言われる関係ではないのよ?」
「S級が一介の冒険者に会いに来たらそれだけで迷惑になるの」
「それは私には関係ないでしょ?むしろS級だから助けられる事がある――」
「そうやっていつも上から目線で――」
「あー、ごめんなさいごめんなさいフーカさん!お姉ちゃんも宿の前で突っかからないで!タツヤさんはすでにお目覚めでお会いしてもいいとおしゃっていました」
「これでいいでしょ?」
「...タツヤがいいならいいけど」
いいけど納得はしていないのがひしひしと伝わってくる。そこまで毛嫌いされる理由は思いつかないのだけれど。
タツヤが住んでいる部屋に上がる途中、レイラちゃんからその事について聞いた。
「お姉ちゃんは...良くも悪くも面倒くさがり屋なんです。それがタツヤさんと同調したようでもともと思っていた事を口に出すようになってしまって」
「それは、私の知り合いがあなたにも迷惑を――」
「いえいえ!悪い事ではないのです!むしろ昔と比べてお姉ちゃんは元気ですし、生きる事に前向きになっていますから感謝しているのです」
面倒くさがりね。確かに辰也は転移前も面倒がっていたところはあった。クラスには馴染んでいたけど、浮かない最低限の事しかしていないようにしていたのは今になってわかる。
彼がいる部屋の前に案内され、少しばかり息を整えてからノックをする。
「どうぞ」




