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経過

「ほらほらソフィ様、素敵ですよ!素晴らしいです、そのままそのままー!」

「うわーん、もう無理ぃーー!お姉様ぁーー」

「頑張って下さい、あと10秒ー!」


あれから数ヶ月。

私は毎週ソフィ様の元へと通っていた。

その目的は彼女を王女として立派な淑女するための基礎教育と……。




「わーい、ケーキ美味しい!」

「ふふ、ソフィ様ったら頬にクリームがついておりますわ。お可愛らしい」

「わ。ほんとだ!レティお姉様ぁ、今日もありがとうございましたぁ」

「ソフィ様こそとても頑張っておられましたね」

「この後はおままごとしよー?」

「はい、喜んでお付き合いさせていただきますわ」


そう、話し相手と遊び相手。

私はソフィ様への教育係兼話し相手兼遊び相手として彼女の元へ通っているのだった。

とは言え、私はまだ10歳。

教育係としてはまだまだ至らないところの方が多い。

そのため主たる目的は…そして"私の目的”としても、ソフィ様の遊び相手として通っていた。


"ソフィ様の遊び相手”。

これが当面の私の大きな目的だ。

もちろん、彼女を悪役令嬢にさせないための布石として。




───…


数日掛けて懸命にゲームの内容を思い返したところ、彼女の悪役令嬢としての原点は"幼少期の孤独”であった。

ソフィ様は3兄妹の末っ子。

末子であるが故か、はたまた女性であるが故か、彼女は兄達のように厳しく育てられることはない。

寧ろ、甘やかされて育つと言っていい。

しかしそれは決してレティシアのように溺愛されて温室で育つわけではない。

周りに関心を持ってもらえず放任された結果の無関心による甘やかしなのだ。


ソフィ様は能力的に劣っていない。

却って、同年代の子供と比べると優秀なくらいだ。

しかし兄達と比べるとそうはいかなかった。

比較対象が悪過ぎた。

殿下もアレン様も優れ過ぎている、それだけのことなのに。

それなのに、皆は自分勝手に口々にこう言うのだ。

"ソフィ様は不出来で、いようがいまいがどうでもいい存在だ”と。


そんな心無い言葉を投げ掛けられ続ければ、傷だらけに育つに決まっている。

孤独感と絶望に呑まれて育つに決まっている。

他にも悪役令嬢化するきっかけはいくつかあるが、この幼少期からの出来事が彼女に影を落とす大きな一因なのだ。




となると、今私に出来ること。

「ソフィ様、本当に本当に大好きですわ。私と出会ってくれてありがとうございます」

「ふふふー、レティお姉様だーい好き!」

それはソフィ様に目一杯の愛情を向けること。

しっかりと心からの愛を伝えること。

彼女に"自分は価値がない”なんて感じさせないこと。

それを実行していくためには、教育係をするだけではどうしても多少なりとも師弟のような上下関係が発生するので上手くいかない。

故に、彼女の遊び相手役は非常に好都合だったのだった。




しかし、それにしても……

「相変わらず仲が良いね」

不思議なのはフレデリックだった。


彼は何故か私がソフィ様の元へ訪問する度に、必ずこちらへ来ているのだった。

しかも私が来ている間、ずっといるのだ。

ソフィ様の学習の時間に指導するでもない、一緒にお茶を飲むでもない、遊び相手になるわけでもない。

そう、本当に"いるだけ”。

私がソフィ様に何か失礼なことをすることを案じて監視しているのだろうか。

ソフィ様付きの侍女にひっそりと確認したところ、私が来ていない日は彼女の部屋に入室することはないらしい。

何がしたいのか全く意味が分からない。




フレデリックに関しては何がしたいのかよく分からないが、特に邪魔をするわけでもないからまぁ良しとしよう。

こうやって時間を共にすることで、ソフィ様が寂しさを感じずに済むかもしれない。

そしてこの幼少期の記憶が悪役令嬢化の歯止めになるかもしれない。

その願いを賭けたのだった。

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