sideフレデリック①
私の名はフレデリック・ロイヤル・オースティン。
この国の第一王子だ。
そして今私は非常にうんざり、いや、疲れている。
何故なら、現在王家主催のお茶会の真っ最中だから。
イライラする。
どいつもこいつも媚びへつらってきて、気持ちが悪い。
王族に取り入ろうという魂胆が見え見えで、浅はかで、辟易する。
けども、この人間達はまだマシだ。
私が最も嫌う人間は───…。
「フレデリック殿下にご挨拶申し上げます」
「やあ、レティシア嬢」
このオジョウサマ。
レティシア、我が婚約者サマだ。
私はこの女が、本当に嫌いだ。
私は物心ついた時から、様々なことを叩き込まれてきた。
暖かさや優しさに触れることなく。
感情を殺すように教え込まれてきた。
それが、当たり前だった。
元々私は覚えが早く優秀ではあるらしいが、それでもつらい時や苦しい時はあるわけで。
それでも手を差し伸べてくれる人がいるわけもなく。
後にこの国を統べる者として、1人でずっと耐えてきた。
なのにこの女は───…
初めてレティシアを婚約者として紹介された時から、彼女が嫌いだった。
私の顔を見て頬を染め、私を見て嬉しそうに笑い、私に好意を持っていることを少しも隠そうとしないその姿に。
率直に"馬鹿丸出しだな”と感じた。
私はこんなに、血を吐く思いでずっと努力してきているというのに。
この女はただ生まれ持った4属性持ちという運の良さだけで、何の苦労もなく愛情を受けながらぬくぬくと育っている。
能天気女。
今では、見ているだけで虫唾が走る。
───だったのだが。
先程挨拶をした時に、私は彼女に小さな違和感を感じていた。
何だろう、この感覚は。
何かが、いつもと違うような。
言動はいつも通りなのだけども…。
「あ、そうだ。レティシア嬢、屋敷の中を案内しようか」
「よろしいんですか?是非お願いします」
違和感の正体を探るため、そして取り入る奴らから離れるため、私は彼女に屋敷を案内することにした。
そして、気付いた。
いつものような馬鹿っぽさがないのだと。
私に対して、少しオドオドとしているようにも見える。
この能天気女に何かあったのだろうか。
まぁ何があろうとも私には関係ない。
どうでもいい。
違和感の正体も分かったことだし、適当なところで切り上げよう。
そう思った矢先だった。
「嫌なの!嫌なのぉ!もうお勉強しない!絶対しないんだからぁああ!うわぁぁぁあん!」
聞こえてきたのは、妹ソフィの叫び泣く声。
刺すようなうるさい叫び声に、私は苛立ちを覚えた。
ソフィのことも、そして弟のアレンのことも、私は嫌いだ。
"私より後に生まれてきた”。
ただそれだけの理由で私より甘やかされて私より可愛がられている弟妹のことが。
そんなことを考えていたら、いつの間にかレティシアが私の方を見ていた。
慌てて表情を取り繕い、彼女をお茶に誘った。
もう切り上げるつもりだったのに。
私は一体何をやっているんだ…。
それもこれもソフィアのせいだ。
虫唾が走る人間との、お茶。
背景音楽は嫌いな妹の泣き声。
あまりに不快な時間過ぎていっそ笑えてくるな。
私はたまにレティシアを気遣う素振りをとりあえず見せながら、お茶を飲んでいた。
すると、しばらくしてレティシアは私にこう言ったのだった。
「ソフィア様の様子を見させていただけませんか?」と。




