第七話
ごめん、ごめんよ。アタシが悪かったって。調子に乗って随分恐ろしい話を聞かせちまったね。許しておくれ。だからそろそろ手の力を緩めちゃくれないかい。さっきから握られてる指先、血が巡らなくて痺れてきたよ・・・。
ふふふふ。余程恐い話が堪えたようだ。これに懲りたら家出なんてもうおやめ?次に目が覚めたら、ちゃんと家に帰るんだ。大丈夫、きっと御母堂は怒ってないさ。恵介さんが戻るのを待ってるよ。
そうだ。眠るまで、ちょいと独り言を喋ってもいいだろか。ちっとも恐いことなんかないし、寝ながら聞いてくれたらそれでいい。ほらほら、羽織が落ちてるよ。ちゃんと肩までかけてあったかくしなさいな。
子供は七つまでは神のうち。昔はこんな言葉がよく流れていたっけ。病院も薬も、今よりうんと少なくてね。子供がある程度大きくなるまでは、いつ神様の元へ戻されるか分からなかったんだ。そう、恵介さんと同じ年頃の子たちが幾人も天へ還って行くのを見たよ。つらい時代だったなぁ。
あぁ、話が逸れちまったね。実はさ、アタシにゃこの「七つまでは神の子」って括りがイマイチ分からなくって。七つを過ぎたって神の子は神の子だろう?ただのたとえ話?うぅん・・・まぁ・・・。でもさ、人はやっぱり死ぬまで神の子だと思うわけだ。子供の方がどう考えていようとも、親はずぅっと子を見てる。道を外せば叱るし、悪事を働けば罰する。その身が危機に晒されれば、力の限りに守り抜く。だってそれが親というものだもの。
はは、腑に落ちないって顔してるねぇ。構やしないよ。言ったろ?これはアタシの独り言。良いも悪いもありゃしないのさ。覚えとく必要だってない。・・・・・・うん、嘘だな。できれば少しだけでも覚えてて。
きっとこの先たくさん、つらいことがあるだろう。大人になるたび、心が荒むことも増えるだろう。それでも決して自分を粗末にしちゃいけない。他者を害してはならない。迷っても逃げても間違ってもいい。今与えられた人生を最後まで全うしなさい。どんな時でも必ず見ててあげるから。
絶対、絶対約束だ―――――・・・。