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第6話 過去との決別

「え……?」


 見間違えるはずもない。あの柄にある特徴的なスイッチ、それに彼の持っていたレーダー。間違いない。


「来栖……圭太……」


 僕を助けてくれた、あの子がなぜ……。この場所で……。


「死んでいる……?」


 確か死体が腐り始めるのは1日2日だったと記憶している。ってことは少なくともまだ死後1日くらいしか経過していないはず。


今のところ1番怪しいのはさっきの少女だが、今はそんな犯人探しをしている場合ではない。俺は彼の持っていた物資を拾い、土に埋めてやって供養する。


「……安らかに、眠ってくれ」


 そして持っていた剣とレーダーのステータスを確認する。


『リプログラミングソード 時を司る伝説の聖剣 効果:柄にあるスイッチを押すことで斬った物体の時間を巻き戻すor進めることが出来る』


『レーダー探知機 至って普通のレーダー探知機 効果:所有者の半径10kmにある生体反応を感知することが出来る』


 ずっと悔やんでいても仕方がない、俺は数時間経った後に森を抜けてフーガ村とは違う別の街、『ワイター』へと出発する。


「……ごめん。レント、私がいながら……。あの時引き止めていたら……」


「……いや、アザレアは悪くない。俺があの時あんなことを言わなければ……」


 元はと言えば俺の言葉でここに来たのが死んだ最大の要因だろう。そんなの、俺が殺したようなものじゃないか。


そんな気まずい空気を抱えたまま、新しい街『ワイター』へと到着した。俺は門番の人に冒険者のプレートを見せて街の中へと入った。


「……なんか、暗いな」


 まるで今の俺の気持ちを反映するかのように、街の雰囲気はどんよりとしており、活気というものがまるでなかった。


「じゃ、まずはだ。今日の泊まる場所を確保しようか」


 俺は地図を見て、場所を確認する。どうやらこの地図は、一度来た場所の情報を記録してくれるようだ。そして俺はついでにレーダーも見てみる。


「?!」


「? どうしたの? レント」


「い、いいや、なんでもない。……それより、早く宿に行こうか。話したいこともあるし」


「う、うん……。そうねっ」


 そう言って俺たちは宿へ泊まる。


「で、だ。話したいことなんだけど……」


 俺が話そうとするとアザレアは口元に人差し指を当てて黙れ、というサインをする。


「シッ」


 そしてアザレアは紙を取り出して文字を綴る。


 {聞かれたら不味いことなんでしょ? だったら、こうやって話す方がいいじゃない。どこに魔法が仕掛けられてるかわからないんだし}


(ほう……感心するな)


 俺もアザレアから紙を渡してもらって筆談を開始する。


 {さっき、レーダー見たら、反応の中に魔族ってあったんだ。しかも、なんか凄いでかい建物あっただろ? そん中になんかルイサーディストって人の種族が四天王ってなっててさ}


 すると、アザレアのペンを動かす手が段々と震えていく。


 {魔族……、それはホントに書いてあったの!? しかも四天王ですって?! あの時にケイタが倒したあの?! }


 {あぁ、レーダーの情報を信じるなら、だが。それより、魔族を知っているのか? }


「えぇ、知り尽くしているわ……。忘れられないもの」


 ……何かあったんだろうな。


 {教えてくれないか? 無理のない範囲でいいから}


 {えぇ……、魔族ってのはその名の通り、魔法の扱いに長けた種族で、それだけだったらいいのだけど、その性格はとても残忍で残酷なの。しかも私たちの心臓にあたるコアを壊さない限り何度でも蘇るの}


 厄介だな。


 {そうか……。良ければでいいんだが、その魔族とやらと何があったのか、教えてくれないか}


 アザレアはすこし悩んだあと、ペンを動かす。


 {あれは忘れもしない、10年前、私が8歳の頃……}


 そしてアザレアは、過去を綴っていく。
























 ────これは私が、まだ奴隷じゃなくて、平和な村でみんなと暮らしていたときのこと。


「ねぇねぇ、ママっ見てっ」


 その日は、お母さんの誕生日だった。私はお母さんの為に作ったカチューシャを見せた。


「あら、アザレア、上手いじゃな~い」


 期待通り、母さんは喜んでくれて、私もとても喜んでいたのを覚えている。


「ハッハッハ、お父さんだって負けてないぞ~」


 と、お父さんはお母さんに指輪をプレゼントした。


「あら、あなたったら」


 何度この時に戻りたいと思ったことか。──だが、幸せな時間はそう長くは続かなかった。


「お楽しみのところ悪いが、今日からここは俺たち魔族の領地とさせてもらう」


 突如現れたそいつによって、パパとママは、あっけなく死んだ。「アザレアちゃん! 逃げて!」


 村のおじさんが、私を逃がさせてくれたのを今でも覚えている。アイツらがいなければ、パパとママも死ぬことはなかった。なんで私たちの村を襲ったの? ねぇ、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで


「……ザレア、おいアザレア!!」


「え……?」






















 ◇◇◇


「……すまない。嫌な記憶、思い出させちまったな」


「……こっちも、ごめん」


 正気を取り戻したアザレアは、筆談を再開する。


 {で、ソイツらは何体いたの}


 {えーっと、正確にはわからないんだけど、10体は超えてたと思う}


 {わかった。早速殺しにいきましょう}


 そう書いたあと外へ出ようとしたアザレアを抑える。


 {闇雲に突っ込んだところで死ぬだけだ。策を練らないと。それに、魔族共は住人に化けてるんだ。武器を振るおうものなら逆に俺たちが悪者にされかねない。あの屋敷にいたやつがこの街の街長に化けてるなら尚更だ}


 {……そうね。わかったわ、てか、そろそろ口頭で話したいし、街の外で話さない? }


 {それもそうだな}


 特に外に出れないといったトラブルもなく、俺とアザレアは街の外へと出られた。アザレアにテントを張ってもらい、その中で策を講じる。


「とりあえず四天王の奴は後回しにするとして、その魔族って奴のコアとやらは場所は決まってるのか?」


「私の知ってる限りだと、この位置で固定みたい」


 自分の左胸を指さしてそう言うアザレア。……正直、その格好でそのジェスチャーはやめていただきたい。


「お、おう……」


 俺は頭をブンブンと振って言葉を続ける。


「それしか弱点がないってのはキツイな……」


「それと、魔法を使うときだけそのコアが露出するぐらいかしら……」


「ただ壊しやすくなるだけか……」


「それだったら、もうアザレアの言った通り強行突破しか道はなさそうだな……」


 俺たちは、覚悟を決めて街へと戻った。 俺は今、魔族たちと戦っている。事の経緯はこうだ。


「……ッ?! どうなってんだこりゃ……」


 街に着くと、俺たちを待ち構えるかのように街の人々が俺の顔写真(しかも、人殺しの罪を擦り付けられて、だ)をばらまいていた。


ソイツらが全員、魔族だったというのは、言うまでもない。それでアザレアが先走って攻撃した。


、魔族なのでコアとやらを破壊されない限り死ぬことはないので俺たちの身の潔白は証明できたというわけだ。


「はぁっ!!」


 そして現在俺……いや、俺とアザレアと街の守衛さんたちで魔族たちの討伐をしている。そして奴らも狡猾で策を張り巡らしてくるのだ。


「わっ、私はあんな酷いことしませんっ! 信じてください!」


 そう言って守衛さんを油断させて……。


「ははっ、ラッキー。まだ通じるんだぁ、あれ」


 胸糞悪ぃ……。俺はそいつが死体に向かって魔法を打ち込もうとしたところで、コアをグサリと突き刺した。


「このド外道が……」


「レント! こっちは片付いた!」


 アザレアの方は終わったようだ。そして俺も、残り1匹というところまで来ていた。


「おやおやぁ? こんなところで騒いでもらっちゃ困るなァ……」


 残りの1匹とは違う、とても上品な格好をした男性がこちらに話しかけてきた。


「……誰だ?」


「おぉ、すまないすまない。自己紹介が遅れたねぇ、私はマーティン。この街を治めている……いや、この場でこの名を使うのは違うな。私はルイサーディスト。魔王直属の四天王部隊、……さしづめ、幻惑の貴公子とでも呼んでもらおうか」


 あぁ……そういうやつか……。


「そんな話、聞くつもりもないわ。さっさと倒すわよ! レント!」


「あぁ、そのつもりだ……って、アザレア?」


 気づくと、アザレアどころか、周りにいた人達すらいなくなっていた。
























 ◇◇◇


「ここは、どこ?」


 って、あれ? なんだか声がおかしいな……。


「おいアザレアー、どこに行ってたんだ~?」


 そこには、死んだはずのパパとママ、いや、それ以外にも村の人達があの日のまま、私の目に映っていた。


「なんで……?」


「おいおい、今日はママの誕生日なんだし────」


 え……? ママの、誕生日……? 忘れもしないあの日、私は大切な人を、全員喪ってしまった。


「ママ……ママぁ……」


 気がつくと私は、ママの懐で泣いていた。


「おいおいどうしたんだアザレア? 今日は何かおかしいぞ?」


 パパが心配そうな声をかけてくれる。


 ────そして平和なまま、1年が過ぎた。あれ? 私はなにか、大事なことを忘れている気がする……。


私をとても大切に想ってくれてる、私にとって大事な人が、もう1人いた気がする。


「シンダイ……レント……」


 そう、シンダイレント……! 何故今まで忘れていたのだろう。あんなに旅を続けてきたというのに。


……確かに、ママやパパが生きていれば幸せだったかもしれない。


でもそれはたらればの話で、もしあんなことがなければ彼とは出会えなかったかもしれない。だから私は、────今を選んだ。


















 ◇◇◇


「ねぇ蓮翔、私たち別れましょ?」


 その声を聞くと、なぜだか心の底から怒りの感情が湧き上がってくる。


「はぁ? 何を言ってるんだ? そもそも、お前は誰なんだ?」


「そっちこそ何言ってんのよっ、私はあなたの彼女、天童由香でしょ。……って、今はそんなことどうでもいいの、ほら私たち別れましょ?」


 ……全くもって意味のわからない、そんな状況のまま、目の前に選択肢がでてきた。


過去か、現在か。────そんなの、決まっている。俺は現在を選んだ。その瞬間、俺は意識を取り戻す。


「ったく、幻惑ってこういうことかよ。それなら、もっと強いのを用意するんだな!」


「そうよ。私にとっては今……いや、レントが1番大切なんだからっ!」


 え……? えーっと……まぁいいや。


「ふっ、まぁいいでしょう。幻惑が効かないのであれば、実力で殺すまで! それにあの魔法に屈さなかったのはあなた達2人だけです。ほら、周りを見てみてください」


 周りを見渡すと、みんな昏睡状態に陥ってしまっていた。


「……過去を選ぶと、どうなる」


「くだらない質問をするねぇ君は。もちろん死ぬに決まってるじゃないか。今より過去を優先するような人生の冒涜者は死んで当然、そう思わないかい?」


「てめえ……!」


 俺は圭太の武器、リプログラミングソードで奴を斬り、時間を逆行させる。そして、若くなって力を増したルイサーディストを、スペリオルソードで切り裂き、討伐する。


「これでトドメだッ!!」

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