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第5話 姿なき襲撃者

 突然、彼は俺の前に現れた。


「お待たせしました。蓮翔さん。僕は来栖圭太」


 彼は自己紹介をした後、アーディヴァインに向かって斬りかかっていった。


「待てそいつはっ!」


「……仕方、ありませんよ」


 そう呟いた彼は、俺の言葉を無視して奴を斬る。そして奴は避けることも無くその斬撃に当たり、真っ二つになった。だが奴は、死んだというのに奇妙な言葉を残す。


「ハッハッハ、この少女は、肉体だけでなく記憶すらも死んだ! 愚かだ。また戦えるのを楽しみにしているぞ!」


 そして奴のいた場所には、セントさんの身体が倒れ込む。俺は咄嗟に彼女を抱え込んで脈を確認する。


「嘘だ……」


 既に彼女の体は冷たくなっており、脈も無かった。


「んでだよ……っざけんなよ……!」


 セントさんと俺の間に、あまり関わりはなかった。でも、これから3日間を過ごす友だったのは変わらない。彼女には彼女の人生があり、親や友達がいて……俺は気づくと圭太の胸ぐらを掴んでいた。


「僕はただ……あなたを助けたかっただけで……」


「……俺は、お前を許すことは決してない。だから、お前と仲間になる気もない」


「ちょっとレント……」


「アザレアは黙ってて!! ……俺を、一人にしておいてくれ」


 俺は手を離して、一人夜の森へと足を運んだ。森の中では、ゴブリンたちが宴会のようななにかを開催しており、それを見た俺は気がつくと剣を振るっていた。そして正気を取り戻すと、周りには、血の海が広がっていた。俺は思い返す、ゴブリンたちは俺を見ると言葉は理解できないが誘ってくれたのだろうということ。それを俺は聞こうともせずに惨殺したこと。


「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」


 静かな森に、俺の声が響く。






















 夜は明けた。清々しいまでの朝日が俺を包む……なんてことはなく、俺の目に映ったのはアザレアの姿であった。


「あれ? 俺、確か……」


「ホント、あんた運ぶの大変だったんだからねっ」


「アザレア……」


 俺の目から涙が溢れてくる。


「俺……俺は……。あああぁぁぁっ」


 そんな俺を、アザレアは何も言わずに抱き締めてくれた。────涙も収まり、俺はみんなと合流する。


「よっ、レント、なんだ? 浮かない顔して」


 アイゼンさんが俺に問いかける。


「……いえ、なにも」


「じゃあ、2日目はドラゴンの巣まで行くらしいから、早速出発といくか」


「え?」


 どうして、どうして疑問に思わないんだ? 


「ねぇ、1人足りなくない?」


 アザレアが俺の疑問を代弁してくれる。


「はぁ? 何言ってんだ? 俺たち最初から5人だっただろ」


「え……?」


 ……おかしい。俺の頭の中に奴の声が反響する。


『記憶すらも死んだ!』


 記憶……。俺は涙を堪えながらみんなの意見に合わせる。


「……そうだぞ。アザレア」


「はぁ? あんた何言って────」


「……後で話す」


 俺はアザレアの肩を掴み小声で言った。彼女は無言で頷く。


「……うん。そうね! 私の勘違いだった! ごめん急に!」


(こんな辛い思い……ごめん)


「おっそうか。もう、ビックリさせんなよな。幽霊でも見たのかと思ったじゃねぇか」


「幽霊ねぇ……はは」


 そんな乾いた笑いで、俺達の2日目は開始した。


「……で、だからみんなに記憶が無いのかなって。私たちの記憶が残ってる理由は分からないけどね」


 道中、馬車に揺られながら俺とアザレアは考察をしていた。


「あー……、ていうか、昨日来たアイツってどこに行ったんだ? 朝起きたらいなかったけど」


「あの圭太って奴? あいつならあんたに合わせる顔が無いって言ってどっか行ったわよ」


 ……今思うと、かなり酷いこと言ったよな……。次会ったら謝らなきゃな。






























 ◇◇◇


「ハァッ……ハァッ……なんなんだよ一体!」


 僕は今、正体不明の敵に襲われている。誰かわからないから正体不明なんじゃなくて、そもそも姿が見えないのだ。蓮翔さんにあんなことを言われて、僕は1人さまよっていた。大体、1日か2日ぐらいだろうか。その上この仕打ちだ。レーダーを見てもモンスターや人の反応はない。


「なんで僕が……」


 足音が、近づいてくる。が、姿は見えない。


「なんで……なんでだよ……!」


 僕は走り続ける。なのに足音は大きくなってきている。


「他所者は、死ね」


 僕の耳元に女性の声でそう告げられる。


(殺す……?)


 あぁ、こんなことなら、蓮翔さんと一緒にいたら良かったな……。なんて、考える暇もなく、僕の命は1人の女性によって刈り取られる。






























 ◇◇◇


「はい、今日の仕事終わりー」


 私はレージン・レイスター。ある人からの情報で『転生者』という存在と、ソイツらが過去に起こしてきた悪事を教えてもらって、今は、転生者を殺す仕事をしている。その人からある能力、『透明化』を貰って殺しまわってるってわけ。


「これで5人目」


 ちなみにさっきの男で5人目。今日は『5』っていう記念すべき数なのであの人と記念パーティーをするつもりだ。ちなみに、さっきの男はここに来て2日目だったらしい。ま、出る杭は打たないとね。私は死んでしまった男に手を合わせてからあの人が待っている『家』へと帰る。


「たっだいまー♪」


 扉を開けた私は機嫌よく挨拶する。


「おかえり、レイスターくん」


「ふっふーん。今日もアイツら倒したんだ~」


「いいねぇ、その意気で、どんどん倒していきなさい」


「でも、君はいいのかい? 人を殺すのに精神的にくるものがあるだろう?」


 普通の人ならキツイだろう。だが、彼女は違った。レージン・レイスターは、人一倍正義感の強い女性であった。そのためならいくらでも残酷になれるほどに。


「え? なんで? 生きててなんの価値もないじゃん」


「ハッハッハ、いい心意気だ。ってことで、今日は君のために食事を用意したんだ」


 私の前には、たいそう豪華な食事が用意されていた。


「あっりがとうケーちゃん!」


 感謝の言葉を言って私は料理に手をつける。あぁ、生まれてこんな幸せ、初めてかも! 














 ◇◇◇

 Cランクへの昇格試験を終え、みんながバラバラになって帰路に着いている途中、俺は正体不明の化け物に襲われた。その化け物は龍の頭に両手に鎌、そして背中に翼にトゲトゲの尻尾。小学生が考えたようなごちゃごちゃな見た目とは裏腹に、奴の振るった鎌は地を裂き、翼のはばたきで竜巻を起こす。この姿は、確かキマイラとか言った気がするな……。


「なんだよコイツは……」


「こんなの……逃げるしか……」


 でも、こいつを放っておいたら……。俺が導き出した結論はこうだ。


「アザレア、お前は先に戻って村の人らに助けを求めてこい」


「だったらあなたは────」


「俺はここでこいつを食い止める。だから……!」


「でもそれじゃ────」


「……これは、命令だ」


 ……命令、それは奴隷にとって命より重いもの。のはずなのになぜ、なぜ君は……! 


「私の補助魔法がないと、あんた戦えないでしょ?」


「お前って奴は……全く……。好きにしろ」


 俺たちは、戦闘を開始した。 アザレアはキマイラに移動速度ダウンと痛覚ダウンの魔法をかける。そしてレントは剣を振るい、キマイラの胴体へと当てる。


「はぁっ!」


 そして、レントは考える。


(この強さ……やばすぎんだろ……)


 すると、レントの体に力が漲り、彼の力が大幅に上昇する。


「これなら……!」


 痛覚が鈍り、攻撃されても気づかなくなったキマイラに、2度、3度と剣を振るう。


「はああぁあぁ!!」


 そして首へと剣を当てようとしたレント、だが……。


「や、やめろっ!!」


 そう、気づかないということは攻撃している間にも相手は攻撃できるのだ。鎌をアザレアに向けて振るうキマイラ。レントは咄嗟にアザレアの目の前へと急ぐ。


「……ッ?!」


「ちょっとレント?!」


 背中を切り裂かれ、あまりの痛みに言葉を失ってしまうレント。最大HPが790に上昇したとはいえ、彼のHPはもう7まで下がっていた。


だが、『不死』の能力によって即座に回復され、そしてそれをしまっているボックスが光り始めた。


「な、なんだ?!」


 パッパラパッパッパー、という陽気なBGMが流れる、レントはボックスの中を確認する。すると、不死-Lv2-という新たな装備品が入っていた。


それに触れると、『不死-Lv1-を装備している間にHPを1割以下へと減らすことで手に入る。効果:毎秒HPを200回復する』


(まぁ強いっちゃ強いけど……)


 レントの言う通り、強いのだが……はっきり言って地味であった。


「でもこれなら……!」


 レントは背中に負った傷の痛みをアザレアに治めてもらい、キマイラの眼前へと立つ。


「本当の名前はわからねぇがキマイラ! 今からお前を倒すッ!」


 レントはそう宣言し彼はキマイラへと斬りかかる。


「はぁぁああ!!」


 Cランク昇格クエストにて会得した補助魔法、回避率アップでレントの援護をする。新たな力を得て更には味方を庇ったあとに味方が新たな能力を使うという展開、レントは倒せると思っていた。フィクションの世界ではそうだった。だが、これは現実であった。


「グハァッ……」


「レントッ!!」


 俺は背後から聞こえるアザレアの声とともに後ろに下がる。


「死ねぇぇええ!!」


 どこかから、女性の声が聞こえる。だが、見回しても姿は見えない。


「ガァッ!」


 今、俺たちは攻撃などしていない。なのに、奴は痛みの声を漏らす。ってことは、あの魔法の許容量よりも大きな痛みってことだ。そして、奴が痛がっている隙に俺は剣を首に振り下ろす。


「これで終わりだっ!」


 ようやく首を切り落とした俺たちは、助けてくれたであろう女性に見えないながらも感謝の言葉を述べる。


「お助けー! 感謝しまーす!」


 すると、1人の年端もいかない少女が姿を現した。


「うんうん♪ 君はまだいいかなっ」


「えっ……?」


「意味がわからないんなら、あっちに行ってみるといいよっ」


 そう言って彼女は1枚の地図を手渡してきた。


「あ、はい……」


「私はレージン・レイスター。君はいつか殺すから、準備しててね♪」


(殺す……?!)


「あなた……!」


 アザレアはレージンに襲いかかろうとする。だが、そんな物騒なことを言って直ぐに、彼女はすぐに姿が見えなくなる。これが俗に言う、透明化ってやつだろう。


「チッ、待ちなさい」


「アザレア……!」


 アザレアを引き止めた俺は、地図の場所へと向かった。


「これは……!」


 そこにあった物とは……! 

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