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第2話 始まりの村での出会い

 森を出て数分、俺はようやく街……多分村だが、それが見えてきた。そして、その村の入口と思われるところには二人の鎧を着た男が立っており、俺を見ると、「そこのお前、冒険者か?」と問われた。


「えっと、俺……ですよね? その冒険者っていうのは、なんか免許みたいなのが必要なんですか?」


 なんか、初めて人に会った喜びから少し言葉がしどろもどろになってる気がする。


「……。……わざわざそんなことを聞くとは、冒険者ではないということか。まぁいい」


 そう言って目の前の男は手を差し出す。


「ん? なんですか?」


 多分、お金か何かだとは思ったが、持っていないのであえて知らないフリをする。


「はぁ……」


 頭を抱えてため息をつく。


「それすら知らないのか……」


 彼は頭を抱えてため息をつく。そしてその後、この村(フーガ村というらしい)の規則について教えてくれる。まず、この村に初めて来た者は行商人を除いてなんでもいいからモンスターの討伐した証を持っていかなければいけないらしい(モンスターの部位とか)。


(なら……)と俺は懐からゴブリンの耳を取り出して彼へと手渡す。


「ほう……切り口が綺麗だ……」


 綺麗……って、倒したら勝手に落ちてきたんだけど……。


「これでいいんですか?」


「あ、あぁ、ではようこそフーガ村へ」


 木でできた柵が開けられ、俺はようやく村の中へ入ることができる。歩いていると村人たちに沢山挨拶される。


(……うれしいな)


 俺は冒険者とやらになるための施設の場所を聞き出すことにした。


「あの……初めまして。聞きたいことがあるんですが、冒険者になりたい人って、どこに行けばいいんですか?」


 すると、村人は親切にその場所まで付き添ってくれた。そして、俺はギルドっていう場所に着く。まぁ、RPGでありがちな場所だな。


「このギルドの受付に言えばなれるはずだ。じゃあ、頑張れよ兄ちゃん」


「あ……ありがとうございますっ!」


「いいってことよ」


 そう言って親切な村人はどこかへ行ってしまった。俺は心の中で気合を入れ、受付の女性に話しかける。


「すみません。俺、冒険者になりたいんですけど……」


「あ、冒険者志望ね。じゃあ、まずはこの水晶に触って」


 そう言って机の下から占い師が持っているような水晶玉を取り出す受付の女性。多分、魔法適正とかそんなの測るんだろうな。


「わかりました」


 そう言ってその水晶玉に手をかざす。が、一向に光ったり動いたりはしなかった。


「えーっと……」


 受付の女性も困っている。


「じゃあ、このプレートを持ってもらえるかしら」


 彼女はそう言って金属で出来ているであろうプレートを差し出した。


「あ……はい」


 俺は一瞬躊躇ったがそれに触れる。すると、そのプレートに自動的に文字が書き込まれていく。


 シンダイ・レント


 Lv.1 男 HP120/120 MP130/130


 装備品:スペリオルクラッシャー 不死-Lv.1-


 職業:なし


 使用魔法:無


 STR:25 DEX:10 AGI:13 SPD:12 INT:30


(……。……弱くない?)


 てか、魔法が『無』ってなんだよ?! なんで魔法使えないのにMPがあるんだよ?! 


「……。……ふむ。魔法が使えない以外は至って普通の能力値ですね。では教官と戦うコースか、村のお使いをこなして冒険者になるコースか選んでください。前者は短時間で終わりますが、教官に勝たなくてはいけません。ので、後者を選んだ方が良いと思います。どちらにしますか?」


 その教官とやらに勝てば即座に冒険者になれるそうだ。俺は少し考えてから答えを出す。


「じゃあ、教官と戦うコースでお願いします」


「失敗すれば料金が発生しますが、それでもよろしいでしょうか?」


 ……正直、今の俺は一文無しなので負けたらどうしようもないが、まぁいい。


「はい。それでも受けます」


 俺は奥の闘技場のようなステージに案内される。すると、その中央に筋骨隆々の男が立っており、あれが教官だと伺われる。もちろんどちらも実剣を持っている。


(あれ? 無理じゃね?)


 そう思いながら俺はその男の立っている場所から少し離れた場所に立つ。


「俺はこの村の副ギルドマスター、カザミだ。手加減はしない。そちらも全力でかかってこい!」


 向こうが自己紹介をしたのでこちらもすることにする。


「レントです! 対戦よろしくお願いします!!」


 俺はこの場の全員に聞こえるぐらいの大声で自己紹介をする。すると、周りから少し笑い声が聞こえる。


「ではこれより、冒険者試験を、開始する!」


 審判から魔法かなにかでスタートの合図が鳴らされる。


「ハァッ!!」


 すごい速度で向かってくる教官。俺はその攻撃を受け止めるので精一杯であった。


(やばい……!)


 そう思うと、またもや力が湧いてくる感覚が体を駆け巡る。


(これなら……!)


 俺は剣を握る手の力を少し緩め、相手の体幹を崩す。その一瞬の隙に教官の体に一撃を叩き込む。


「ガハァッ」


 生身の人間を剣で切るのに抵抗はあったがあらかじめ死ぬことはないと教えられていたのと、教官の『全力でかかってこい』という言葉のおかげで全力の一撃をくらわせることが出来た。


「勝者 挑戦者、レント!」


 周りの観衆からドっと声が上がる。


「うおおぉぉおお!!」


「では、これを」


 受付の人からさっきのネームプレートが手渡される。


「これであなたも冒険者よ。この冒険者の心得に準じて行動するのよ」


 一緒に手渡されたのは表紙に『冒険者の心得』と書かれた薄い冊子であった。例えるなら、高校の説明用紙のような。


「ありがとうございます。では、これで」


 俺はギルドを出る。






















 冒険者になったのはいいものの、魔法が使えないのはかなり痛い。ゲームではお馴染みの物理無効の敵が出てきたときには何の役にも立てないし。それに補助魔法とかも使えないし……。ということで、俺はパーティーメンバーを集めることにした。


(出来れば奴隷がいいな……。なんでかって? そりゃあ裏切られたくないし……、って、なんで裏切りなんて発想が出てくるんだ? 確か前世で……まぁいっか)


 思い立ったが吉日、ということで俺は早速、奴隷商を探そう……と、思ったが……。


「金がないんだった……」


 一応、教官からこれからの活躍に期待してということで金貨を五枚貰ったが、多分足りないし、第一俺も鎧とか買うことを考えると……。


「どう考えても足りないよな……」


 とりあえず冒険者といえばクエストということで俺はもう一度ギルドに向かう。


「クエストって、ここで受けられるんですか?」


 俺は受付に聞く。


「はい。あなたのランクなら……このクエストたちが良いと思います」


 そこに書かれているのはDランククエスト レッサーウルフ10体の討伐 銀貨30枚や、ファイアーファルコン5体の討伐 銀貨25枚といった銀貨100枚で金貨1枚という相場を考えるとかなりお得なクエストたちであった。


「じゃあ、これでお願いします」


 俺が選んだのは『ポイズンフロッグ8体の討伐 銀貨40枚』……言うまでもなく、報酬重視だ。


「では、お気をつけて~」


 俺はそのポイズンフロッグとやらがいる場所を示した地図を受け取り、その場所へ向かった。そして、その場所に着くととても大きいカエルのモンスターがそこかしこに鎮座していた。俺は早速切りかかる。そして、当たった……のはいいのだが、そのカエルはなんのダメージリアクションもとらず、俺へと舌を伸ばして攻撃してくる。


「う、うわぁー!」


 情けない声を上げて倒れる俺。俺はダメだとわかっていても剣を相手に向かって突き出す。


「え……?」


 そして、目を開くとそこには、口から血を出したカエルと、血に染まった剣を持った自分の手という光景が広がっていた。


(わかった……この剣の条件は、気持ちの問題とかではない。もっと、潜在的な恐怖感を感知して効果を発揮するんだ……!)


 あの効果が出たとなればこちらに分がある。俺は周辺にいたカエルたちを全滅させる。


(少し……やり過ぎたか……)


 そして、残骸の跡に残ったのは恐らくカエル舌と思われる部位。


 俺はそれを拾い、説明文を見る。


『ポイズンフロッグの舌:多くの獲物を舐めてきたポイズンフロッグの舌。驚異的な柔軟性を誇る』


(……まだマシか)


 俺はそれらを全て拾い上げ、フーガ村へと帰ることにした。そして、帰路に着いている途中、俺は燃える馬車と、数人の覆面を被った人間、それと戦っているご老人が目に入った。


(どういう状況……?)


 俺がそんなことを考えていると、さらに戦闘が激化していくのが感じられた。どうする……? 


(どう見ても、覆面の方が悪者だよな……)


 俺は、その老人に加勢することにし、戦闘に加わり、そして勝利を収める。もちろん、覆面の彼らは殺してはいないし、ギルドに突き出すつもりだ。なので、その老人(デットというらしい)に縄で縛ってもらい、今はそのまま放置しているという状況だ。どうやらデットさんによると、デットさんは奴隷商人であり、フーガ村へ行こうとしていたらあの覆面集団に襲われたらしい。しかも、その奴隷たちはほぼ全て殺害され、生き残ったのは一人の女性だけらしい。俺はその女性に声をかける。俺にだって少しは下心はある。男に生まれたものは仕方ない。だが今、そんなことを考えている余裕は俺にはなかった。


(こういう時、大丈夫ってのは逆効果らしいんだよな……)


「……ごめん。間に合わなくって」


 悩んだ末に出た言葉がこれだった。


「レントさん、そこまで自分を責めずに。元はと言えば守れなかった私に責任があるのですから」


 だが俺は、謝らずにはいられなかった。


「あの中には、君と仲良かった子だっていたはずだ。だからこそ……そんなかけがえのない者を失った悲しみは計り知れないものだ……と、思う」


「……いいんです」


 初めて彼女は言葉を発した。


「……私こそ、あなたに救われるほどの命の価値があったのかどうか……」


「そんなことはない。と、思う」


 なにせ俺は彼女のことを何も知らないのだ。曖昧な返答しか出来ない。


「とりあえず、帰りましょうか」


 デットさんが促す。


「……はい」


 俺と彼女は、複雑な気持ちを残したまま、帰路に着いた。






















「命の価値……か」


 俺は宿屋の一室で受け取った銀貨と金貨を放りながらつぶやく。


「……よし」


 俺は決めた。あの子を買うって。今の予算は金貨が10枚と銀貨が30枚。カエルをたくさん倒したおかげで、素材の価格も上乗せされたのだ。もう防具だとか言っている場合じゃない。俺は急いで奴隷商へと向かい、さっきのあの女性を探す。


「いた……!」


 彼女は俺の姿を見ると少し表情が和らいだ気がした。俺は店員に問う。


「彼女を買いたいんですが、いくらでしょうか」


「えーっとね……」


 店員さんはなにかの冊子をめくり確認する。


「金貨10枚と、銀貨が5枚ですね」


 ……よかった。これなら足りる。


「じゃあ──────」


「あなた、初めてのお客様ですよね? では契約料として────」


 俺の言葉が遮って店員が言おうとするが、その言葉もまた遮られる。


「……そんな制度、この店にはなかったはずだがねぇ」


 さっきのデットさんが裏からやってきて言う。


「で、デットさん……!?」


「いい加減に懲りたらどうだサム。そうやってボッタくるのは」


 ……よかった、いつもの事なのか。


「す、すみませんお客様。では、金貨が10枚に銀貨が5枚、ちょうどいただきます」


 サムと呼ばれた店員さんが俺に謝罪の言葉をかける。俺は早く買いたかったのでお金を手渡す。


「では、次はこれを……」


 そう言ってサムさんはチェックシートのようなものを俺に渡す。見るとそれは奴隷の契約内容のようだ。正直早く済ませたかったので最低限のマナーのみにチェックをつける。主人を襲わないだとかの、本当に最低限の、な。


「では、ここに血を垂らしてもらいます」


 サムさんは丸が書かれた紙を見せる。おぉ、これラノベで見たことある気がする。そんな浮かれた気分で俺は血を垂らす。確かこれ、血の盟約っていうんだっけ。かっこいいなぁ……。そしてサムさんはその紙を彼女にあてる。すると彼女は、一瞬だけ痛みのような反応を見せた後、なにかスッキリしたような表情に変わった。


「では、お買い上げありがとうございます~」


 サムさんは上機嫌に俺たちを店から見送ってくれた。


(悪い人ではなさそうだな……)

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