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第1話 神も驚き閻魔様!

俺は、前世の記憶を取り戻した。




 ────普通の高校生、神代蓮翔は、交通事故によってこの世を去りました。なんて、突然言われても信じる人の方が少ないだろう。だが、それを今、言われてしまっている。


「すみませんが、あなたは死んでしまいました」


 目の前の女性に告げられた言葉は、俺の心を折るのに十分な破壊力を持っていた。数秒間の沈黙の後、俺は口を開く。


「いやいや、嘘はやめてくださいって。大体、なんで死んだのに話せてんすか。俺」


「ここは、死後の世界……まぁ、あなたの世界で天国だとか地獄だとか言われてる場所ね」


「またまた~。どうせテレビとかのドッキリ企画とかなんでしょ?」


「ドッキリ……あぁ、まだ疑ってるの? じゃあ、これでも見たら?」


 そう言って目の前の女性は空中を指さす。すると、その部分を中心に映像が出される。そこでは、交差点を渡ろうとしている親子に向かってトラックが突っ込み、それに気づいた俺がその親子を庇って轢かれる、というとてもCGとは思えないような光景が映し出されていた。


「え……」


 俺は首を横に振る。


「じゃあ俺、本当に死んじゃったってこと?」


「だからそう言ってるじゃない」


 俺は今置かれている状況について今一度振り返ることにした。


(俺があの親子の代わりに死んじゃって、この……)


「天獄」


「え?」


「だから、ここの場所でしょ? 天国の天に、地獄の獄で天獄」


「いやいや、そうじゃなくって、なんで俺の考えてることがわかるんですか?!」


「いや、閻魔なんだから当たり前じゃない?」


 当然、といった感じで言ってくる女性……いや、閻魔様。


「はいはい閻魔ね……って、閻魔?!」


「うん。私が天国に行かせるか地獄に行かせるか、もしくはそれ以外か……それを決めてるの」


 それ以外、というところが少し引っかかったが、今はそんなことは気にしている場合ではない。俺は一回、冷静になって閻魔様に質問することにした。


「じゃあ、俺はどこに行くことになったんですか?」


「えーっとね……。天国か、『それ以外』ってところかしら」


「天国は分かりますが、『それ以外』ってなんなんですか?」


「生前、善行を働いた者。それこそ他人の為に命を張る、なんてことをした者が特別にもう一度生を受けられる場所よ。もちろん、どこの星に行くかは運次第だけどね」


 もう理解が追いつかないです、はい。


「どこの星、って、火星とか水星とかなんですか?!」


 冗談じゃない。学校で習ったんだ。めっちゃ暑かったりめっちゃ寒かったりして生命がいられる環境じゃない場所って! 


「違う違う。星っていうのは、……まぁ、並行宇宙……うーん、なんて言えばいいのかしら。まぁとにかく、普通に人とかもいるし、あなたの星で人気だったゲーム? とか、ラノベ? だったりの世界とかも行けるわよ。まぁ、どの星に行けるかはランダムだけど」


「あー、転生ってことですか?」


「うーん、ちょっと違うんだけど……。まぁいいわ」


 ゲームやラノベみたいな世界……。あれ? これ、かなりの好待遇なのでは? いやまぁ、ランダムってのが引っかかるけど……。


「で、どうする?」


 俺の答えは既に決まっている。


「────じゃあ、その『それ以外』でお願いします!」


「りょーかい。なんか特典とかもつけるけど、何がいい? 例えばこのムラマサとかクサナギとかの武器とか、魔法とかもあるけど……」


 そう言ってその特典とやらの表を見せてくる閻魔様。だが俺はとにかく早く新しい星に行きたかったので適当に選ぶ。確か、地図と、不死-Lv1-となんかかっこいい名前の剣だった気がする。


「じゃあ、星ガチャ、スタート!!」


 そう言ってルーレットを回す閻魔様。そして止まったのは、『イェスティンクション』という名のマス。多分、星の名前だろう。


「じゃあ、異世界生活、頑張ってね~!」


 そう言って手を振って俺の事を見送る閻魔様。


 よし、これから俺の新しい命が始まるのか。そう思い俺は目を瞑り、そして目を開ける。


「は? は? は~~~?!」


 俺の異世界での産声は、そんなかっこよさの欠片も感じられない、そんな一声であった。


てっきり、俺は赤ん坊としてどこかの家に生まれるものだと思っていた。なのに、自分の手を見ても一般的な成人男性の腕だし、近くの池で自分の顔を見てみてもちゃんとした……って言い方はおかしいかもしれないが、しっかりと成長した普通の顔つきになっていた。


いや、それはまだいいとしよう。だが……。


「ここはどこだよ?!」


 そう、どこかもわからない森に、俺は飛ばされていたのだ。俺は特典の地図を開く。


「……全然わからん」


 それどころか、その地図には『何も』書かれていないのだ。


「ふっざけんなよッ!!」


 俺は大声をあげる。すると、その声に反応したのか数匹の緑色の怪物がやってくる。


「いやいや、来てそうそう死ぬとかそんなの勘弁なんだけど……」


 俺は思い出す。特典としてなんかかっこいい名前の刀を選んでいたことを。俺は地図を懐にしまい、その刀を取り出す。……いや、取り出そうとした、が正しいだろうか。


「ないんだけど?!」


 俺は辺りを見渡す。すると、あった。あったはいいのだが……。


(遠い……)


 だが、今はなりふり構っている暇はない。俺は刀の元へ全速力で走る。後ろから、あの怪物の足音も聞こえたので、更に速さを上げる。


「はぁっ……はぁっ……」


 かなり疲れたが、遂にかっこいい名前の剣……どうやら、『スペリオルクラッシャー』というらしい。らしいっていうか、それを手に取ったらゲームみたいなステータス画面が出てきてそこに書いてあったんだけど。



能力は……と。『装備者よりも上位の者を相手にすると攻撃力が大幅に上がり、攻撃が90%の確率で当たるようになるが、防御力が大幅に下がり、被弾率が90%に跳ね上がる』と、書かれていた。


(上位の者って、どんな基準だよ……)


 そんなことを考えている内に怪物がやってきた。


「う、うりゃあー」


 俺は情けない声を上げて切りかかる。だが、いくら武器が強いとはいえ持っている者が弱いのでは意味が無い。いとも簡単に避けられてしまい、しかも避けられた瞬間に一撃くらってしまう。


「いっ……」


 だが、不死-Lv1-の効果で即座に傷は治る。まぁ、痛みまでは治まらないんだけど。


(コイツ、強い……)


 そう思うと、何故か力が湧いてきた。


「え? なに? まさか……」


 上位の者って、まさか自分の判断ってこと……なのか? いや、理由なんてどうでもいい。もしあの効果が本当なら……! 


 そう思い俺は剣を振る。すると、さっきは見事に避けられていた攻撃が面白いくらい簡単に当たり、見事全ての怪物を倒すことが出来た。するとその怪物の死体は光の粒子となって消えた。


「倒した……のか?」


 俺はその死体があった場所へと歩みを進める。すると、そこには……。


「耳……か?」


 先が尖った耳のような物がそこに落ちていた。


「一応拾っておくか……」


 地球にいた頃の俺ならそんなこと絶対にしないと思うが、ここは異世界だ。こちらの常識が通じないなど日常茶飯事だろう。なので、俺は少し躊躇いながらもその耳のような物を掴む。すると……。


『ゴブリンの耳:先端が尖ったゴブリンの耳。これを付ければ君もゴブリンになれるかも?!』


(……なんて悪趣味な説明文だ)


 とまぁ、ゴブリン討伐を終えた俺は、街を目指すことにした。


 実は、さっきのゴブリン討伐で一瞬だがあの閻魔様の声が聞こえた気がしたのだ。「森を抜けろ」って。


 多分、森を抜けたら街がある……とはいかないまでも、街かなにかの影が見えたりするのだろう。俺は一先ずこの森を抜けることにした。

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