6話 お買い物
そして私はそこで目覚める。
目を開けると広がっているいまだに明るい空。
この空ってずっと明るいんだろうか?
前にログインした時……昨日と特に変わらない昼下がりって感じ。
(時間設定は常時一緒なのかな?)
そんなことを考えながら、私は起き上がる。
そして、私は猫さんの巣からでる。
このゲームって、ログアウトしてもキャラクターはその場に残るのだ。
つまり、ログアウトしている間魔物に襲われるかもしれないと言うことだ。
だからちょっとだけ猫さんの巣をお借りして、そこで寝させていただきました。
あの後、ログインし直して、猫さんの巣に移動して速攻ログアウトし直すというね……。
ほんとだったら、宿に泊まったりしてログアウトするらしい。
昨日ログアウトした後、掲示板を見て気づいた……。
チュートリアルとかないわけ?
…で、今日は何をしようかな?
特に予定を決めていなかったから、どうしようか。
森に入って、レベル上げをするべきか…。
私は、そう考えレベル上げをしようと思ったが…
「にゃう…(無理かな…)」
倒す手段がないことを思い出し、踏みとどまる。
一日で結構どう言う状況か忘れちゃう……。
ガックリと肩を落としながらも私はどうして過ごすか考える。
(あ、そうだ!お買い物行こう!)
猫の分際で、お買い物ができるのかは知らないけど、私だって女子なんだよ!
お買い物くらいはしたい!
最近は学校以外で外に出ていないので、ここらで外出気分を味わっていたい。
ということで、お買い物です!
私は買い物ができるようなお店を探すことにする。
私がいるのは路地……お店なんてあるわけない。
(表通りとかにしかないよな〜普通はお店って。一応いってみてもいいけど、誰かに見られないかな?でも、昨日はプレーヤーに見られてもバレなかったんだよな…。まあ、お買い物初だからね。まずは裏通りとかで探してから行こう)
私は歩き出す。
マップを横目に裏通りがあるであろう場所を目指す。
といってもすぐそこに行けば裏通りに入ることができる。
私が今いるこの路地は表通りと裏通りを挟んだ真ん中の入り組んだ場所にあるのだ。
したがって、猫である私にとってとても行き来がしやすいのである!
「にゃやにゃ?(えっと、こっちかな?)」
角を曲がって私は、入り組んでいる地帯を抜ける。
そうして、私は裏通りについた。
(うわ…人全然いないじゃん!なんでだ?)
それもそのはず、まだ発売してからたった一日しか立っていないので、誰もがこぞってレベル上げに勤しみ、武器や防具の芯っ蝶は表通りで済ませている。
いくらマップに裏通りの存在が明かされていたとしても、立ち寄ろうと考える人は皆無なわけで……。
(ま、いっか!そっちの方が私としてはやりやすいしね!)
そう思い、意気揚々と歩き出す。
全体的に暗いイメージがある裏通りにポツポツと小さな店が並んでいる。
私は武器屋らしき場所まで出向く。
(あれ、そういえば私って猫だから話せないんだっけ?)
またまた〜と、その考えを振り払う。
そんなことあるわけないない!
そして、でかいお店の扉が私の前に立ちはだかる。
(うーん…どうしようかな?)
だが、扉の前で悩んでいるところで、すぐにそれは解決する。
「んにゃ!?(うわ!?)」
中からお客さんだと思われる冒険者っぽい人が出てくる。(NPC)
「お?どうしたニャンコ?」
いや、何言っているかわかんねえよ!
「ルキ〜。行くわよ〜…さっさと支度してー!」
「はいよ!じゃあなニャンコ」
遠くから聞こえた女の人の声に反応して、冒険者入ってしまった。
(なんだったんだ?)
私は、開けたまんまになっていた扉に入っていく。
そこには武器がたくさんあった。
武器屋だから当然か…。
戦斧…槍…ダガーナイフ…片手剣に両手剣。
いろいろな種類の武器が揃っていた。
私は店主らしき人物がいるカウンターまで向かう。
そこで私の嫌な予感は的中する。
「お?どうしたよ、猫がこんなところにいるなんて」
お前も何言ってるかわからねえー!
私は猫なんだ!
お客には猫語を使いなさい!
って、無理か。
お客さんに猫がいる方がおかしいってもんよ……。
私は諦めて出口に向かう。
切り替えが早いのは大事なことだ!
「って、もう言っちまった…。なんだったんだ?」
私は、そそくさと武器屋を出て、防具屋を目指す。
まだ…まだ諦めないぞ私は!
もしかしたら、猫語話せる人がいるかもしれないし!
楽観視大事。
前足で胸を叩きながら自分に自信を持たせる。
(えっと…防具屋はこっちかな?)
私は淡い希望を持ちながら防具屋に向かう。
♦︎♢♦︎♢♦︎
(え?これってお店なん?)
そこにあったのはボロボロのお店………ではなく、もはやテントを貼っただけのような質素なものだった。
(ちゃんと営業してるのかな?)
不安に思いつつも、私は中に入ってみる。
「いら…?しゃい。猫のお客とは珍しい」
そこにいたのはライオン?
あ、ライオンの獣人か!
服を着ているところで、気づき私は再び悪態をつく。
「んにゃお…(私と話せる人いないわけなの?)」
そう呟きに返す言葉が聞こえた。
「ん?猫の言葉ならわかるぞ?」
「!?」
え?わかったの!?
「んにゃ?(なんでわかるの?)」
「わかるだろ。俺はライオンの獣人だ。近しい種族の言葉なら覚えておいてある」
ライオンって確か猫科だっけ?
「にゃあ(なるほど)」
「で、何をしにきたんだ?」
「にゃにゃう(装備が買いたいの)」
用件を伝えて、反応を待つ。
そして、再び私は絶望することになる……。
「お前に装備は無理だろ」
「?」
「まだわかってないのか?猫用の装備なんてあるわけないだろ?」
「にゃ(あ)」
そこで理解する。
私用の装備なんてあるわけないですよね……今思えばそうでした…。
「あ、そうだ!一個だけなんかあった気が…」
「にゃにゃ!?(あるの!?)」
ライオン獣人さんは後ろから何かを取り出す。
「猫用の首輪ならあるが…」
「にゃあ!(ふざけんな!)」
私はライオン獣人さんの頭を叩く。
「なんで、怒ってんだ?」
わかっていないようなライオン獣人さんを私はポスポス叩きまくる。
「わかったわかった!今なら無料にしといてやるから!」
首輪を無料にされても嬉しくないわ。
だけど……。
「にゃお?(無料ならもらってあげないこともないよ?)」
お金をかけずに手に入るに越したことはないからね!
例えそれが首輪だったとしても!(泣)
そして、頭の中で声が響く。
《アイテム・『猫の首輪』を入手しました。スキル・『強奪』を獲得しました。称号・『恐喝者』を獲得しました》
やかましいわ!
恐喝なんてしてないでしょ!
私はそんなことしたことなんて一度もないよ?
私は、そのままお店から急いで出て、違う違うと頭の中で念じる。
再び頭の中に声が聞こえてくる。
《スキル・『脱兎』を獲得しました。称号・『逃走者』を獲得しました》
いや、だから違うって!
逃げたんじゃないって!
いや、無料で貰っちゃって、なんか申し訳なくなったからすぐに帰っただけだよ!
だから決して逃げたわけじゃないから!
私はとりあえず入り組んでいるあたりまで走って戻ってきた。
「んにゃにゃ!(なんでこんな形でスキルと称号ゲットしちゃったんだよ!)」
くっそ運営め!
私のことをどこまでも陥れやがって!
色々と私って普通の遊び方できてないよね?
私はただ、純粋に遊びたいだけなのに!
(とりあえずはスキルのチェックからやった方がいいかな……。後は称号か……。まあ、予想外の利益と思えば…)
私は思考を切り替え、スキルと称号のチェックをするのだった。
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覚えなくていいこと…
ライオン獣人さん「やべえ。メスを怒らせたと知られれば…嫁に叩かれちまう…」
お嫁さんの尻に敷かれているライオン獣人さんであった。
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