3話 意識改革
本日二本目です。
とりあえず、状況は理解できた。
いや、できてないけどそういうふうに思っておかないとまじでキレそうだし、GMコールしちゃいそうだからね……。
でも、GMコールしたとしてもどうせ『バグなどの情報が見当たりませんでいた。申し訳ございません』くらいで、謝罪されるだけで、特には何もしてはくれないんでしょ?
できたばかりのゲームなんてそんなものだよ。
ましては有名な会社のゲームだからねこのゲーム。
きっと社員さんたちは忙しく働いてるんだろうね。
だとしても私の怒りは治りはしないけど。
そんでもって、私はこれから何をすればいいのだろう?
正直言ってもはやこれ詰んでるよね?
バッドステータスに、猫の見た目に、そして今さっき気づいた猫語という厄介なやつ。
このゲームって妙なところにこだわっている。
まず、このゲームを作った会社の掲げている目標だ。
『異文化理解を深める!』が第一目標である会社が作ったゲームだ。
当然、異文化交流の何かしらの要素が含まれているのは確かだ。
それが、この言語システムだろう。
言語システムという名前なのかはさておき、このゲーム、最初に設定した種族の人としか話せないらしい。
人族を選んだ人は人族と。
獣人族を選んだ人は獣人族と。
エルフを選んだ人はエルフと。
そんな具合で、お互いの言葉でしか会話ができないようになっているらしい。(パッケージ情報)
まあ、私は種族選べなかったんですけどね!
まあ、私は種族選べなかったんですけどね!(二回目)
ここまで言えば薄々感づいて、さらに同情してくれる心優しい人がいると思う。
問題です!
私の種族はなんでしょうか!
そう!猫です!
猫だよ?多分イレギュラーな猫だよ?
パッケージにもただの猫の絵は描いてなかった。
つまり、私は運営の嫌がらせの対象として、実験されたわけだ。
猫が会話できるのって、同じ猫だけだよね?
私の他にプレーヤーで猫になった人は多分いないと……。
やっぱ詰んでるわ。
会話もできないし、レベルも上げにくいし、猫だし…。
翻訳をしてくれる素晴らしい職業の方もいるっちゃいるらしいんだけれども、日常会話にいちいち翻訳してもらわないといけないっていうのもなんか嫌だしな〜。
でも、ここでクヨクヨと悩んでも仕方ないか!
私は楽観的な性格に生まれ変わる必要があるようだ。
「んにゃあ〜(目標決めたぞ!)
私は肉球高らかに突き上げ宣言する。
「んにゃにゃあ!(まずは、自分の根性を叩き直そう!)」
私の性格といえば、あまり家から出ないような引きこもり大好きな感じ。
かと言ってゲームにのめり込んでいるわけでもなく、ただ何もしないでじっとしているのが一番!という性格をしている。
引きこもってばかりじゃレベルは上がらないし、何もしないと運営を見返せない。
何かしら行動して、どんどん強くなっていかないと、私自身も楽しめなさそうだしね。
楽しむためにゲームを買ったのに、そのゲームで楽しめないと本末転倒すぎる。
だから、私は強くなるんだ!
そうと決めたならば、まずは何をすればいいのかな?
今すぐに初心者の森?みたいなところに行って魔物を狩るっていうのもいいかもしれないけど、残念ながら私のステータスだとそんなこともできなさそうなんだよね。
今は、全ステータスプラス10の恩恵があるからいいものの、絶対この後死にまくったりしそう。
プレーヤーに助けてもらうっていうのもいいかもしれないけれど、それだとこの恥ずかしい姿を他人に見られることになるしな〜。
そこまで考えて、私の頭の中に新しい疑問が湧いてくる。
(なんで、さっきのプレーヤーたちは私もプレーヤーであると気づかなかったのだろう?)
思い出したのは私が屋根の上から落ちそうになっているところで助けずにワーワー騒いでいた二人組。
あれって、あの二人組が性格悪いんじゃなくて、単に私のことただの猫だと思ってたのかな?
それなら納得がいく。
だけど、なんで私がただの猫だと思ったのかはまだわからない。
まあ、いっか!
どうせ気にしたってしょうがないことなんだし!
私は記憶からあの二人の姿を消し、そのまま立ち上がる。
「にゃおにゃ…(とりあえず街でも探索するか…)」
そう思い、私はまず屋根から降りる。
屋根の上から降りるのは簡単で、二階であろうバルコニーに降りるだけで、後はそのまま…って感じ。
私は、バルコニーに降りたのち、部屋の中に入る。
(不法侵入だけど……ここから飛び降りるのはまだ怖いんだよねー。だから、名も知らぬお方。ありがたく入らせていただきます!)
私は、暗くなっている部屋の中に侵入する。
そこは普通の部屋だった。
EFOの世界の普通かどうかは知らないが、少なくとも私の部屋とは遜色ない。
木造の柱があり、その横には四人分の椅子とテーブル……近くには他の部屋への入り口がある。
私は、その近くにあった階段を見つけて降りていく。
猫だから階段を上り下りするのは結構大変だと思ったが、案外すんすんいけた。
そして、一階も特に変わった様子のない部屋だった。
私は窓……出入りできるような場所を探して、歩き回る。
そして、私は玄関に近いところで窓を見つける。
「にゃ!(よし!)」
私はそこの窓目掛けてジャンプする。
手前にあった段差……テーブルの上に乗る。
「?」
私は自分の目に留まったものを凝視する。
そこにあったのは写真たてだった。
ここの家主であろう男の家族写真。
左に母親らしき人物がおり、真ん中に眉が太い元気そうな男の子…そして、父親らしき人物。
(わお。イケメンやん!)
父親らしき人物のその顔立ちに私はしばし見惚れていると玄関の方から音がする。
ガチャリと、音を立てて少しづつ真っ暗な部屋の中に明るい光が灯ってくる。
(やば…。早く出ないと)
私は名残惜しい気もしながら、目線を家族写真から離し、窓に向かって急いで飛び込む。
幸い家主にはばれていなかったようで、何事もなく出ることができた。
(男性に見惚れたのなんていつぶりだろうか…?思わず目に止まっちゃった)
流石作り込んでいるわね…。
と憎き相手に少しだけ感心する。
「にゃにゃーお(そんなことは置いといて)」
まずはここら辺を探索することにしよう。
地図を見ればいいかもしれないけど、私の根性を鍛えるため、そして周辺の地理を頭に覚えさせるため!
猫である私に地図が意味をなすのかどうかも疑問だけどね。
だからこその探索なのである!
まずはどこに行ってみようかな?
窓から外に出たため、飛び出した場所は路地裏のような場所だった。
少しだけジメジメとしていて、いかにも危なそうな雰囲気。
女の子が一人できたりしたらたちまち誘拐されそうな危険そう予感がする。
ただし、私は猫であるため問題はなし!
むしろ他人に見られないだけ、マシかもしれない!
この世界に私より早く入った約一万人の人たちに、この姿を晒すわけにはいかないのである。
そう考えた私は、大通りを通るのは若干気恥ずかしいため、このまま奥へと入ることにする。
そして、数分歩く。
数分歩いたと言っても、所詮は猫の足。
おそらく、人間の30秒ほど歩いた距離にも満たないであろう。
そして、私は分かれ道に差し掛かる。
(あー。どっちにしようかな?このまままっすぐ行ってもいいけど…。横の道も気になるんだよな〜)
こういう、誰もこなさそうな場所に宝箱があったりすることが多いのだ。
ただでさえ、不利な状況の私。
どうにかその差を埋めて、敵をなぎ倒したりしてみたい。
そこでずっと私が悩んでいると、一人の声が響く。
「お主。ここら辺のものじゃないネ。どこから来たんだネ?」
その言葉は私の耳にしっかりと聞こえ、言葉の意味もしっかりと理解することができた。
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