36話 起床
《確認しました。個体名『エミ』にかけられた呪いが発動しました。これにより、一部のステータスが0になり、レベル値が初期化されます。リンクした相手のステータスの一部を反映されます。これにより、素早さ以外のステータスが0となります。同時に、リンク者のステータスは攻撃力に100振り分けられました》
ベットで横たわっている、その猫には未だ声は届かない。
《リンク者との魂の繋がりを強化します。これにより、リンク者のダメージが直接、個体名『エミ』にも反映されます。》
外には、雨の音が鳴り響き、その猫は目覚めることをしない。
《スキルレベルがリセット、手持ちアイテムの初期化、職業スキルの消去の実行……完了しました。》
彼女の知らないうちに事はどんどんと深刻化していく。
《呪いの発動により、一部の竜化が実行されます。……………失敗。原因を模索します。………レベル不足による、魔力機能へ異常が見られました》
バグだろうか?
だが、それを知るものは今のところ1人しかいない。
そのものも、すぐに現実へと戻っている。
《代わりに、ステータス、素早さにステータスを振ることで代用します。よろしいですか?》
その言葉も、猫には届かなかった。
《残り10秒以内にお答えください》
淡々と告げる言葉は彼女の頭のみに響き、その音も脳の中で掻き消える。
《無条件でYesを選択します。………完了》
そして、彼女の体に贈り物を受け取る。
同時に力が溢れてくる。
といっても、それを実感できる……もしくは、確認できるものは、現実世界にいるため、もはや、事態を止める事は誰にもできなくなっていたと思われた。
《記念ガチャアイテムの消去を実行………妨害が発生しました》
それは、呪いに誰かが介入したことを意味する。
果たしてそれは誰なのだろうか?
《呪いの進行を一時的に終了します》
このまま呪いが進行していたらどうなってしまっていたのだろうか?
それは、知らないくていい事実である。
《代用として、MPが10から0へとなりました。体力の低下………妨害されました。プログラムを完全に終了します》
そこで呪いは一旦止まる。
《呪いの妨害者の居場所を探知可能となりました》
どこかで何かが起こったのだろうか?
《称号・『呪われし者』を獲得しました。これにより、特定のステータスにしかステータスポイントを振り分けできなくなります》
称号がまた1つ増える。
本来称号はそんな簡単に手に入るようにはなっていない。
にもかかわらず、大量の称号の獲得。
これはある意味ですごい事なのである。
《『エミ』のログインが実行されます。サポート機能作動開始》
そこから、彼女の目に光が宿る。
♦︎♢♦︎♢♦︎
おっはようございます!
いや〜今日は朝から大変だったわ!
変な奴に絡まれるわ、野菜は買わされるわで……まあ、ちょっと楽しかったけど……。
久しぶりというのか?友達と会えて嬉しくないという酷い輩はこの世には存在しないはずだ。
「あら?猫ちゃんおっきした?」
どこか色気のありそうな声がする。
(えっと?お医者さんか)
私が寝っ転がっているへやに入ってきたその若い白衣を着た女性は、私の前までやってくると、しゃがみ込み顔色を伺ってくる。
「うん!だいぶよくなってきたじゃない!本当に死にそうな顔していた昨日が嘘みたいだわ……」
呆れたような、嬉しそうな声を聞き、私は昨日何があったのかを完全に思い出す。
(あれま、もしかして夜も看病してくれたりした?それは……まじありがとうございます!)
感謝大事これ絶対。
お世話になって人には挨拶をしないとね!
誰かに感謝の気持ちを伝えるのは結構久々。
でも、そういうと私が礼儀知らずな奴みたいに聞こえるため、やめておこう…。
「傷も治っているみたいね!じゃあ、もうちょっと寝ててもらったら大丈夫かな?」
えーまだ寝るの〜?
さっき起きたばっかりで睡眠はバッチリなのだ。
だから、休憩する必要もない。
故に早く退院させてくれ!
私はやりたいことが山積みなのだ!
ちょうど昨日レベルめっちゃ上がったし、ステータスの確認。
とはいっても、結局素早さに極振りしてしまったため、あんまり見ても意味ないような?
それよりもさ!
実際に走ってみたりして、速度を体感したり、魔物……あ。
ネットで見たんだけどさ、魔物ってこの世界ではモンスターっていうらしい。
私は魔物だと思ってずっと呼んでたんだけどな〜。
それはいいとして、モンスターに追いかけられてみたりして、感覚を掴んでおきたいのだ。
なぜなら、迷宮の時にめちゃめちゃ制御が難しかったからである。
徐々に増えていくはずのステータスを一気に素早さに振ったのだ。
それが当然といえば当然のことなのだ。
つまりは、今のうちにこの速度に慣れていた方が、今後の戦闘や日常生活に大いに関わってくる事柄だと、私は思っているからである。
だからこそ、早く退院してしまいたいのだが……。
「ここの傷は……治っているみたいね。ここは………う〜ん、多分平気かな?いやいや!多分なんて曖昧なのはだめ!この子の命に関わるんだから!」
真剣な表情をして、私の体をじっくりと観察をする先生。
(いや、そんな顔されたら抜け出すわけにもいかないじゃん!)
最悪、長くなりそうだったらそうしようと思っていたのだが、ほんとの意味で最悪である。
私はため息を吐きながら、観察が終わるまで待つ。
「あ、そういえば、この子って性別は……」
徐に先生が私の尻尾を持ち上げてくる。
反射で私はそれを避け、ついつい逃げてしまう。
「あ、ごめんね!いやだよね!もし、オスだったら恥ずかしいもんね!」
いや、そういう話じゃないのだが?
純粋に見られるのがいやなのだ。
だってあれだよ?
私にとってはこの格好裸のようなもんだからね?
そんな私の体で一番大事なとこ見ようとされたら、それは嫌になるでしょ……。
男子にスカートめくりされた気分といえば、たいていの女子諸君ならわかってくれるだろう。
あれはまじで最低だから!
ほんとにやめたほうがいいよ、世の男子たち……。
相手の興味を引きたかったら、褒めるのだ!
純粋に今日も可愛いねとかではなく、今日も肌きれいだね!とか、このリボンどこで買ったの?めっちゃ君に似合ってるね!とか。
そういうのをいってくれれば、話に乗ってあげないこともないよ?って思えるというものだ。
そんなどうでも良いことを考えているうちに誰かの足音が鳴り響く。
「どうですか?先生!」
「猫ちゃん……あ!」
入ってきたラエルちゃんが私を見るなり、声を上げる。
「猫ちゃーーーん!」
「んにゃ!?(わ!?)」
私が寝ていたソファにダイブして、わんわん泣き始める。
「よかった〜……ほんとよかった〜」
心の底から心の底から胸を撫で下ろすかのような声に、私もちょっぴり嬉しくなる。
心配してくれる子がいるって思うだけで、かなりの嬉しさだ。
「あぁ。よかった」
トルクくんの方はその場でほっと、安堵の息を漏らしている。
君たち2人、猫に対して大げさすぎないかね?
大した怪我も……怪我したかもわからないが……していないというのに、こんなにも心配しているなんて……。
過剰な反応に困惑しつつも、私は大人しくその場が収まるまで待つ。
「では、猫ちゃんにはもう少し寝てもらってですね、危険がないと判断したら、退院。まあ、どこへでも好きなところへ行ってもいい、ということでいいですね?」
「「はい」」
2人の声が揃う。
先ほどまで騒がしかった部屋が一気に静まり返る。
その2人の反応は嬉しさを通り越して、気恥ずかしくもあった。
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