19話 スキルの使い道
昨日投稿できませんでした、すみません!
ボトンと音がったって、私と2人の目の前に何かの物体が落ちてくる。
ゴロゴロとその場で何回か音を立てているその物体を全員が注視する。
「え?これって……」
「魔石……だよな?」
2人が驚きの声を上げ、魔石に触れている。
その間私は、絶望の淵にいた。
(ですよね〜)
諦めの思いが心の声に混じり、私はうなだれる。
(なんで、私が倒しちゃったわけよ?)
魔石を持っているということは、それは私が魔物を倒した証である。
つまりは、私がなぜか倒したのだ。
いや、なんで2人が倒せなかったのを私が倒しちゃったのよ?
申し訳ないのだが、この2人には氷龍には勝てなかっただろう。
そして、私はその2人よりも弱いのだ。
つまりは絶対に私は氷龍に勝てないわけだが………。
(私のスキル………)
唯一重当たる節があるのは、私のスキルによる効果だった。
私の先ほど放った『強奪』のスキルは文字通り強奪するもの……言うなれば、アイテムを強制的に奪うことができる、PKや私のような暗殺者や盗賊になった人であれば、かなり重宝するであろうこのスキル。
おそらくであればだが、このスキルは本来人間……プレーヤーに向かって使うべきものなんだと思う。
だってそうでしょ?
プレーヤーに対して使えば、インベントリにたっくさん詰め込んであるアイテムのうち2つ手に入れることができるっていうことだよ?
いわば、運ゲーのようなものだ。
どんな良いアイテムが手に入るのか、悪いアイテムでも使い道あるかも……などと、とにかく手に入るまでのドキドキ感を味わえるだろう。
ガチャのようなものだ。
無償でガチャが引けると考えれば、誰もがこのスキルを欲することだろう。
場合によってはかなりの巨万の富を築き上げることができるかもしれない……石油王以上の金持ちだって夢じゃないのだ。
そういうところが、ゲームにおいてEFOは結構セコいなと思う。
まあ、それも顧客獲得のためだもんね……。
それはいいとして、人間に使えればかなりのメリットを生むことんあるだろう。
とりあえず使っておけば、何かしらの利益を得ることができるのだから…。
だが、私が言いたいのはそこではないのだ。
私が本当に言いたいのは……。
(この、スキルって魔物に使ったらどうなるの?)
この疑問である。
普通に遊んでいるプレーヤーでも、疑問に思うであろうこの部分。
魔物に対して使ったら一体どのような効果がもたらされるのか。
だが、例えこのスキルを持っていたとしても、普通のプレーヤーならば使ったりはしないだろう。
魔物にどのような効果がもたらされるかも知らないスキルを使うよりかは、実用性に特化したスキルを使うべきだと誰もが考えつくからである。
それは、ごくごく当たり前の考え方だと私も思う。
私は魔物に対して使ったわけだが……しかもドラゴン……龍に。
もう一度おさらいしておこう。
このスキルは、アイテムを奪う……妨害ともいうべき効果を持っている。
手に持っていた、伝説の剣などをあっさり奪われたりでもしたら、敵としてもたまったもんじゃないだろう。
そんなこのスキル……そこでもう一つの疑問に思い当たる。
(では、2つ以上アイテムを持っていない場合は?)
答えは単純だ。
確定でその2つ、もしくは1つが手に入るのだ。
魔物はどんなものを持っていただろうか?
オークであれば棍棒や腰に巻いていた布だった。
しかし、それは一見装備しているものは2つのみのように見える。
少なくとも、私は違うと確信している。
まず、魔物の持っているアイテムだが、奪わなくても倒せばドロップするだろう。
実際に、オークは自らの体のみ消滅して、布や棍棒はその場にドロップする。
これが意味している事は勘のいい人ならすぐにわかるだろう。
魔物は何をドロップする?
討伐証明部位として、どこを提出すると2人は言っていた?
装備品などでは、偽装が可能だろう。
体の一部は消滅して、跡形も残らないだろう。
もう、長々説明するのも疲れたため、答えを言おう。
魔石である。
冒険者と呼ばれる職業についているものは組合?にそれを提出する。
きっと、どのような魔石か判別する機械か、魔法……鑑定士がいたりするのであろう。
なぜ、組合はそれを討伐証明部位としているのか……。
それは、その種類の魔物でしかドロップしないためである。
倒さなければ、魔石はドロップしない。
買ってそれを提出……などもできるだろうが、そこはゲーム。
プレーヤーが真似しないように配慮をしているはずだ。
という事で、倒さなければ手に入らないわけだ。
そして、私が真に言いたいのは………
魔石も装備品としてAI?が認識してしまっているのではないだろうか?
装備品がドロップするのは、ゲームとして常識。
魔石の分類はなんだろうと私はずっと考えてみていたが、ここでなんとなくわかったような気がする。
魔石は言うなれば、魔物の動力源と言っても過言ではない。
魔物は魔素を吸って生きているらしいが、その吸い込んだ魔素は魔石に保管されるという仕組みだ。
吸い込んだ魔素の量で強さが変わり、それが個体差として現れる。
敵の強さに直結するわけだ。
そんな生命の動力源である心臓を取り上げてしまったらどうなるか?
死
誰だって心臓を取られたら死んでしまうだろう。
それと一緒である。
血を体に送るのと同じように魔素を魔力として使うために、魔石が全身に魔力として送り込む。
その仕組み……プロセスが一気に崩壊するとどうなるのか?
体の機能が停止することによって、その場で一旦体が停止する。
そしてその後、いまだに体内で循環していた魔力が底をつき、完全に死亡する……ポリゴンと化すわけだ。
まあ、言いたいことをまとめると……
(強くね?)
である。
このスキル1つさえあれば、どんな相手だろうと不意打ち、もしくは即死の攻撃をしてこない限り、勝ちが確定してしまうということ。
後、装備品……手持ちのアイテムが2つ以下であるという条件付きだが……。
誰だって最強になれる可能性がある非常に夢のあるスキルである。
(これで、最強ならこれの最終進化系の『強欲』とか一体どうなるん?)
10個以上のアイテムを速攻で奪えたり、無条件で奪えたりするのだろうか?
それはそれで、つまらなくなる気がする。
私は戦いを楽しみたい派なのだ。
つまりは熱い情熱的な戦闘がしたいわけ。
一瞬で戦いが終わるとめっちゃつまらない気分にならない。
まあ、私がスキルを使わなければいい話だけどさ?
絶対に勝てるとどうしても頭の中で理解してしまい、そこまで白熱しないような気がする。
(ここに来て、こんな障害が立ちはだかるとは……)
私の夢見る戦場を駆け巡っていき、ギリギリの戦いを繰り返すというものは、非常に難しいと思っていた。
私は猫である。
さらに、よくわからんバットステータスで、数倍レベル上げが大変という最悪な事態に陥っていた。
私が心配していたのはまともに戦えないという一点。
だが、私のスキルは思った以上に強く、逆に一瞬で倒せてしまう。
心配すべきことが1個増えたに過ぎなかった。
私が強くなったわけではないので、結局はそういうことである。
「お前……ほんとはお前が倒したのか?」
「んなわけないじゃん。私たち合わせて数段上の相手に、どうやって私が単独で勝てるっていうの?むしろあんたじゃない?」
「ばか!俺は氷龍とお前からだいぶ離れた場所にいた。遠距離攻撃も一応できるが、命中精度もイマイチ。詰まるところ俺でもない」
「って事は猫ちゃん?」
2人の視線が私に集まる。
自分1人で勝手に絶望していただけなので、2人の話を全く聞いていなかった。
「ただの猫なら余計に勝てないだろ。むしろおやつとしてつままれるのが精一杯だ」
「でも、魔石は猫ちゃんの目の前で出てきたよ?」
「ニャンコが空間魔術を使っただけだろ」
「普通の猫は空間魔術は使わないよ?」
「…………………………」
2人の視線が再度私に集まる。
なんか色々と2人の好機の視線が見え隠れしているのが見て取れた。
そして、2人の声が揃い……
「「ただの猫じゃない!?」」
大きいドームの中で2人の声が何重にもなって響いていた。
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