18話 結果オーライ
誤字修正は明日とさせていただきます。
《スキル使用者とは別に、魔力が強くこもった魔法がかけられています。これによって肉体に付与するスキル、及び魔法が使用不可となります》
おいおいおいおい!
ふっざけんな!
私が唯一まともに使えるスキルが使えないってどういうことだよ!
強い魔法って言っていたけど、きっとラナの保護魔法だろうな。
2人だって私よりも圧倒的に強いのだ。
氷龍に苦戦はしているものの………。
そんな2人のうちのラナの危機すら救えないなんて私どうすればいいわけ!?
マジで人として終わってるじゃん……猫としてか……。
じゃなくて!
まずは情報整理を……
今の私には魔法とスキルが使えないわけか。
魔法はもともと使えないだろうし問題はないんだけど、問題があるのはスキルのほうだ。
『脱兎』のスキルが使えないのは結構な痛手である。
私が使っていてまだ使い道が見出せるスキルなのに……。
もう一つのスキルの方はなんかわけわらんスキルだし、私からスキルをとりあげたら生きていたとしても役に立たないよ?
実際、オークとの戦いでも1匹倒すのがやっとで、残りは全部ラナに倒してもらった。
これを足で纏いと呼ばずしてなんと呼ぶのだろうか。
(でも、今は違う)
思考を切り替え、ネガティブな感情を追い出す。
(どうしたらいいの……もういっそのこと、もう一つのスキルを使うしか…)
私が使えないと言われてしまったのは、肉体的……体にかける、付与するスキルだ。
だが、私のもう一つのスキルは違う。
それは、おそらく敵に対して作用するものだろう。
ついさっきのオークがすっぽんぽんになってしまった嫌な事件もよくよく考えれば、完全に私のせいだ。
自業自得というやつだ。
私の使ったスキルに反応して、服やら武器やらが脱げてしまったということ。
詰まるところ、装着していたら何にでも反応してしまう、いや、違うかもしれないが、今はそれを信じるしかないのである。
(例えば、攻撃とかもストックできないのだろうか?)
先ほどの例では情報が足りない。
オークは実際には装備を2つしかしていなかった。
そして、私のスキルの情報によると……
ーーーーーーーーーー
強奪
説明
スキル・『奪取』の進化系。
一人につき一度に二つランダムでアイテムを奪える。
最終進化先
『強欲』
ーーーーーーーーーー
2つのアイテムを同時に取ることができる。
これぞ、『強奪』なのだ。
オークは衣服と棍棒を身につけていたが、もし何も来ていない状態で使ったら?
何が取れる?
(そこが唯一の希望なんだな〜)
私は間に合わない体を氷龍の方に向けて、スキルを使う。
「んにゃ!『強奪』!」
声を出した理由としては、黙ったままでは味気ないということ、叫んでみたかったということ、それ以前に、氷龍がこちらに注意を向けてくれるという可能性に賭けたからだ。
だが、氷龍は反応を示さず、私のスキルがただただ、発動する。
(なんでもいいから動きを止めて!)
私はありったけの願いを込める。
それがなんの意味もなさないとはわかっていたが……。
スキルは誰の目にも映ることをせずにまっすぐと氷龍に向かっていき、着弾する。
その瞬間、氷龍の動きが止まる。
「え?」
そこに響くのは驚くルキさんの声。
ラナは驚きすぎて声が出なかった。
私自身は氷龍の動きが止まったのは自分がしたこととは思わず、ただずっと眺める。
次の時には、氷龍の体が崩れ始めた。
崩れた部分からポリゴンにかわり、跡形もなく消えていく。
「「「え?(にゃ?)」」」
全員の心の声が重なり、その疑問も重なる。
さらに私の頭の中に声が響く。
《『エミ』は経験値を獲得しました。レベルが2から20に上がりました。レベル10に到達したため、職業『暗殺者』のパッシブスキルが解放されました。パッシブスキル『落下衝撃緩和』の効果はーー》
先ほども耳にしたこの機械的な長ったらしい説明。
だが、今回は先ほどよりもかなり長い。
《ーーレベル20に到達したため、職業『暗殺者』のパッシブスキルが解放されました。パッシブスキル『俊敏』の効果はーー》
レベル20に到達したと言う部分で、私は説明も終わりかと思った。
だが、私の予想は外れた。
《プレーヤー名『エミ』が領域守護者の撃破に成功しました。これにより、ワールドイベントが進行します。全プレーヤーに通知を送ります。称号『龍殺し』の獲得条件である、『龍を一体討伐する』の条件を満たしたため、『龍殺し』を獲得しました。称号『先駆者』の獲得条件である、『ワールドイベントを更新させる』の条件を満たしたため、『先駆者』を獲得しました》
????????????????????
「どういうことだ?」
最初に口を動かしたのは、ルキさんだった。
私は別の意味でわからないが…。
理解することをしない私にはこの長文は未知の言語として認識された。
故に、私は2人の会話の方に戻る。
「いや、私にも何がなんだか……」
非常に困惑しているラナが言葉を返す。
そして、しばらくの間沈黙が訪れる。
「えっと……とりあえず……ラナ」
「あ、ありがと」
ルキさんがラナに駆け寄っていき、手を差し出す。
それをとったラナはおもむろに立ち上がり、氷龍の残骸を眺める。
「なんか情報量が多すぎるわ……」
「俺もだ……」
疲れたような表情をみせる2人に安堵しつつ、私も駆け寄っていく。
私に気付いたラナは私を撫でる。
ゴロゴロと唸りながらも、私の意識は常に別の元にあった。
(もしかしなくてもあれって私がやっちゃった?)
でも、私はスキルを発動させたこと以外は特に何も変なことはしていない。
この2人のうち、どっちかがどうにかしたのか、はたまた……私のスキルが予想以上に強かったのか?
そんなことはないと思うが、もう一度スキルの能力を確認する。
………2つ以上のアイテムは取れない。
でも、私アイテムなんて手に入れてないよ?
その疑問点を私は見つけ、詳しい説明を最後まで読む。
実を言うと、私は文を飛ばし飛ばし読む癖があるのだ。
テストで説明文を読むのが面倒になり、飛ばしたのがきっかけ。
誰もが経験するようなものだ。
そんな私の癖のせいで、どこか大事な部分が見落とされているかもしれないと思い、注意深く、この2人には見えない場所を見つめる。
(アイテムは一度に2つ………同時使用は無理………クールタイム………空間的距離による使用制限………盗賊系の職業には感知される危険がある………一定の状況下での使用不可、もしくは効果半減……あ!)
そこで、見つける。
『スキルを使用し、奪ったアイテムは、空きインベントリに自動で収納されます』
この一文を……。
待って待って待って待って嫌な予感しかしない。
私は2人が運が良かったね、助かったね、と、話している間に、確認を急ぐ。
久しぶりに開くインベントリ。
そして、最初に目に入ってきたのは、見慣れないアイテムだった。
『オークの腰布』
冷や汗が私の全身を伝うのを感じる。
「猫ちゃん大丈夫?すっごい汗……」
「ただの猫が上位龍を目の前にしていたんだ。こうなって当然だ。むしろショック死しなかった方がすごいんじゃないか?」
何を勘違いしたのかは知らないが、2人が話す。
その間にも私は絶望の淵へと叩き落とされる。
『氷龍の魔石』
ですよねえええええええ〜!
私はラナの腕の中で萎れる。
そこにはしっかりとアイテムが保管されていた。
私は、本当は違うと言うことを信じて、取り出してみることにした。
(ただの表記ミス。ただの表記ミス。ただの表記ミス)
そう念じながら……。
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