表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すばやさに極振りした猫〜VRMMOで最強目指す〜  作者: 翡翠 由
第一章 ゲームを始めました
17/46

15話 初戦闘

長くなってしまいました、すみません…

1匹が私に向かって手に持っていた棍棒を振り下ろす。


「んにゃ!?(うわ!?」


 来るとわかってはいても、思わずという風に声が漏れてしまう。

 その声でさらにオークの棍棒が私の方向に向かってくる。


 一撃目を回避したのち、横からの攻撃に反応が遅れ、体が勝手に下にしゃがみ込んでその二撃目もなんとか回避に成功する。


 EFOの世界での私の勘とも言えるような直感は今ここにきてかなり役立ってくれている。


(役立ってくれるのはいいんだけど、結局決定打がないんだよな〜)


 私が持っているスキル……唯一の希望とも言えるそれは、攻撃的な能力ではない。


 直接的な攻撃ができるわけでもなく、私にとって有利な状況を作り出してくれるわけでもない。


 正直いって、戦闘中に使うことはほぼないだろうスキルたちだ。

『脱兎』のスキルは最悪の場合、これでずっと逃げ続けることができる。


 ただ、この周りにいる数を考えたら最終的にじり貧になるだろう。

 私は周りを囲い込む十数匹の巨体を眺める。


 だが、私がよそ見をしている間にもオークの連撃は途切れない。

 タックルをしてきて、私に隙を作らせようとしたり、ただただ単純に私のことを踏みつけようとしてくる。


 逃げ出す方法は残されていないのかも知れない。

 いや、この状況で逃げ出せる方が無理だろ。


 そう思ったが、私の後ろに現在進行形で余裕な表情でオークたちを捻っている可愛い女の子の姿がある。


 文字通り、()()()……。

 だが、そんなことは今はどうでもいいのである。


 私の置かれた現状は非常にまずい。

 誰から見ても、2メートル越えの巨人と、いたって標準的な猫。


 私の素早さをもっても結構ギリギリだったりする。

 猫や犬などの感覚に近しいものをとことん使い、利用してもギリギリ。


 シルバーウルフの時もそうだったが、逃げるだけで精一杯だ。


 私のことを弄ぶかのように攻撃しているだけあってやっぱりまだ本気じゃないのだろうか?


 薄気味悪く笑いながら、私に向かって棍棒を叩きつけにくる。

 その姿はまるで、モグラ叩きのモグラ側になった気分である。


(どうにかして、こいつをぶっ倒せないかな?)


 試行錯誤して、この状況を打破できるような解決策を私は模索する。

 まずは相手のステータスの予想を立てる。


 オークは私と同じくらいのスピードを持っている。

 攻撃力は向こうが確実に上。


 体格の面では私の方が小回りがきく。

 面積が小さい分、攻撃が簡単には当たらないだろう。


 だからといって、私が勝てるわけでもない。


(ここは、女の子が終わるのを待ってから助けに入ってもらうか……。それとも、なんとか……倒せなくていいから、足止めできたりしないだろうか?)


 私にできるのはこの2つだけだろう。

 だが、ルキさんは助ける気ないだろうし、女の子は戦闘を楽しんでいるみたいだから絶対長くなる。


 私の選択肢は最初から1つしかないわけだ。

 選ぶは後者。


 どうにかして足止めする。

 結果的には、女の子に助けてもらうことになるが、それでも女の子にすぐに助けてもらうわけにはいかない。


 少しは自分の力がどれだけ通用するか、オークの特徴とはなんだ、と調べる必要もあるのだ。


 ちょうどいい機会といえば機会だろう。


(単純なスピード勝負で一戦だ!)


 私は走り出す。

 オークは若干驚いたものの、すぐに後を追いかける。


 私のすぐ後ろに張り付いてくるあたりやっぱりスピードは互角。

 ならば……


 私はそこで立ち止まり、急カーブする。

 今度は自分の方に向かってきたとオークが身構えようとするが、さすがに反応が遅れ、私はオークの股下をくぐり抜ける。


「グオ!?」


 私はオークに飛び乗り、そいつの頭まで登ろうとする。

 いつの間にか出ていた自分の爪を使い、オークの体をよじ登ろうとする。


 攻撃力が0、確かに0だが、それはあくまで種族の最低値からのプラスの値に過ぎない。


 例えば、普通の猫がステータス0とする。

 するとプレーヤーはレベルが上がるとステータスも上がるわけだ。


 説明するのが難しいが、簡単にまとめると、私にとってのステータス0はただの猫と同じだけの筋力、攻撃力をしているということだ。


 自分の体をオークに押し付けて、爪で肉がえぐれているのを感じる。

 だが、さすがにEFO。


 グロ表現はオフにしてあるため、血などは出ないし、私がえぐれていると勝手に思っただけで、そこまで感覚は伝わってこない。


「ブヒ!」


 怒ったように私はつまもうと背中に手を伸ばしてくる。

 それを私は自慢の歯で噛んであげる。


「ーー!?」


 声に出ていないような悲鳴を上げるオークに『隙あり!』頭までよじ登る。

 オークは我に帰ったかのように、棍棒を持ち上げ、私を叩こうとしてくる。


 だが、さすがにそれは悪手だと誰が見ても思うような攻撃をしてきたもので、強いだけで知能ないのかな?と、思ってしまう。


 嘲笑しながら、頭からおり私はオークの方を振り返る。

 脳天に自ら棍棒を力一杯叩きつけて、そのまま棒立ちになっていた。


 棍棒というのは、木でできた棒のことだが、それは武器として十分の威力を持っているから彼らも武器として使っているのだ。


 自分と同じくらいの大きさの棒が自分が出せる全力の速度で落ちてきたら、さらにそれが、弱点である脳天に落ちてきたら、果たしてそれは人には耐えられるのだろうか?


 少なくとも私は軽く病院に運ばれてしまうだろう。


 だが、オークは私の予想とは違った結果をもたらした。

 予想より嬉しいことにそのままぽっくりとポリゴンになって消えたのだ。


(ーっしゃ〜!どうだ見たかこんにゃろー!)


 心の中でガッツポーズをして、私は勝利の余韻に浸る。


(いや〜こういうのはなかなかにいいもんですな〜!私の理想の戦い方とは程遠いものの……)


 ただ、理想に近づけたと自分で思う。


 そして、その時私の頭にメッセージが流れてきた。


 《『エミ』は経験値を獲得しました。レベルが0から2に上がりました。レベル1に到達したため、職業『暗殺者』のパッシブスキルが解放されました。パッシブスキル『隠密』の効果はーー)


 長ったらしいんじゃボケ!

 こういうのは『レベル2になったよ〜。パッシブスキル『隠密』ゲットだぜ!』くらいの長さでいいっちゅうねん。


 まあ、レベルが上がったのは上々だろう。

 何せ私は常人の4倍の経験値を必要とするのだから。


 ほんとだったら、4レベくらいになったのかな?

 そう考えると損した気分になってくる。


「ブヒー!」


「ブガー!」


 オークの鳴き声で私は我に帰る。


(そうやったー!私かなりの数に囲まれてるんだったー!)


 女の子の方を急いで振り返る。

 いまだに楽しそうに、『片手で遊んであげる』とハンデをつけたりしてニコニコしながら攻撃を防ぎまくっている。


 助けてもらうのは無理そうだと思い、私は囲んでいるオークの方に向き直る。

 そこに見えたのは、先ほどよりも迫力が増したオークの群れが見えた。


 いや、オークがたくさんにいるのはわかっているんだけど、なんかかかる圧力が違うというか……。


 さっきと人数も同じなのに、どうしてこんなにも背筋が冷たくなるのだ?

 そんな疑問は女の子によって解消される。


「あれま〜!オークキングそっちにいるの?シャイな王様だね〜」


 オークの全力だろう攻撃をよそ見しながら捌き切る女の子に尊敬の眼差しを送りつつ、しっかりと話は聞いておく。


「ちょっと待ってね〜。この子ともうちょっと遊んだら殺してあげるから〜」


 そういってオークキングと呼ばれた奴から目を離す女の子。


(いや、助けてくれないの?)


 再び、オークが一体出てくる。

 装備自体は先ほど自滅させたやつと対して変わらないが、なんとなく自分よりも強いと感じる。


 そんなオークがいきなり突進をかましてくる。



「!?」


 それに驚き、後ろに下がろうとするが、オークは寸前の所まで迫ってきていた。


(やば…)


 私は何か手段がないか考えたが、何も思い浮かばなかった。

 そして、思わずという風にとっさにスキルを発動させる。


(どうにかなってー!)


 使ったのは『奪取』のスキルである。

 私は『脱兎』を使おうとしたのだが、焦りすぎてどっちがどっちか分からなくなってしまった。


 だが、その行動は正解だったのだろう。

 目の前のオークは急に体が、光出すと同時に動きを止める。


(なんだ?)


 距離を確保しながらオークを凝視する。

 オークを包んでいた光がかき消え、やがて中にいたであろうオークが姿を見せる。


(え?)


 そこに見えたのは()()()のオークだった。

 だからだろうか、思わず()()に目が止まってしまい……


「んにゃああああああああぁぁぁぁ!(いやああああああああぁぁぁぁ!)」


 私は叫ぶ。

 女子にそんな汚いもん見せるな!


 心の中で何度もその裸のオークを罵倒する。

 もちろんオークが何かやったわけではなく、当の本人も何が起きたのかいまだに理解できていないようだった。


 だが、そんなのは関係ない。

 乙女の純情な心を返せ!


 私の叫び声で何かに気づいたのか、女の子がこちらを向き、彼女も絶句する。


「お…オ…オーーー」


 何か我慢できないように体が震え出す女の子。


「猫ちゃんになんてもん見せてやがんだこの豚があああああぁぁぁ!」


 発狂とも思えるような声を上げた後、女の子はこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。


 ただ、どんどんとスピードを上げて……。

 やがて、私の見えないほどの速度になり、オークの方に向かって何かがなびくのを感じる。


「待て!ラナ!」


 茂みから出てきたルキさんにそう呼ばれた女の子ことラナは我に帰ったかのようにスピードを若干緩める。


 ただ、それは周囲を消し飛ばすには十分な威力を持っていた。

 それをまともに食らったオーク……裸のやつは即ポリゴンとなり、オークキングと呼ばれた個体はどこか遠くへと吹き飛んでいってしまった。


 そこで、彼女が呟いた言葉は…


「やっちゃった☆」


「やっちゃったじゃねえよ!」


「んにゃにゃ〜にゃ!(やっちゃったじゃねえよ!)」

続きが気になるという方はブクマ・評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ