12話 追いかけっこの末
お仕事疲れました…。(呟)
いつも見ていただいてありがとうございます!
さよなら〜!
私は白狼から全力で逃げていく。
身を前に傾けて、白狼の攻撃を避けながら……。
追いかけっこにおいて、追いかける側……鬼側が有利なのはみんな思っているだろう。
逃げる側は鬼がどこにいるかもわからないし、鬼は目の前にいる奴を見ていれば何かにぶつかったりすることがないし…。
そして、これは私だけだろうが、目線的な問題もある。
全ての障害物が自分より大きく、草が自分の視界に入ってきて、前がみにくい。
さらにいうと、白狼との一歩の歩幅的にも私が圧倒的に不利なのだ。
しかも、鬼側は攻撃ありというおまけ付き。
このゲームはとことん私を殺しにきている。
白狼がどんな攻撃をしているのかはわからないが、なんとか勘で避けている。
(唯一猫で良かったと思える……)
ただし、こんな大変な思いをするくらいなら最初から猫じゃない方がいいだろう。
みんなは猫にならないように気をつけようね!
それは私だけだろうけどね…。
私は草から覗く前の様子を確認しながらまだまだ逃げていく。
こんな時に便利な道具でもあったらな〜。
そこで私は思い出した。
(マップがあんじゃん!それ見てとりあえず街の方に逃げていけばいいんちゃいますか?)
そう考えた私はマップを開こうとする。
《戦闘中にマップ機能を使用することはできません。また、ステータス・設定画面などの表示もできません》
はあ!?
ふざけんなし!私のただ一つの希望を打ち砕くなし!
素早さに極振りのはずなのに逃げ切れないほどの白狼の速度。
他ステータスほぼゼロの私としては、極振りの意味をなさず、もはや一方的にやられるしかないのでは?
いや、そんなことないさきっと!
どこかに誰かいないかな…。
言い方は悪いがこの白狼の魔物をなすりつけてどうにか……。
別に死んでも問題はないのだが、さすがに2日目にして死ぬのはなんか違う。
もっと激戦の果てに相討ちとかならいいかもしれないけど、初心者の森にいるちょっと強い魔物に襲われて死ぬってのはなんか違うのだ。
(私の五感よどうにかしてくれー!)
私は自分の感覚に頼って、森とは違う匂いを辿ったり、わずかに映る視界から人間を探そうとする。
猫としての感覚をフル活用しながら私は走る。
結構しんどいのはいうまでもない。
まあ、感覚を働かせるだけならそこまで問題はないのだ。
初めて、猫として歩いた時とかも違和感なく四足歩行できたりとそこら辺はしっかりと設定がされていたようで…。
私はまた行きと同じくらい分走ったなと感じる。
(ここまできたら1人くらい冒険者がいてもおかしくないはず………。うん?)
私は皮のような匂いがすると感じる。
少なくとも森の中にはこのような匂いはしないはずだ。
そこに染みるのは、洗剤というかなんというか。
汗の匂いが混ざっているのかな?
そんな匂いが嗅覚から感じられる。
(なすりつけるのは申し訳ないけど、少なくとも私より強いだろうから……強く生きて……)
私はその二人に向かって方向転換する。
「んにゃあ〜!(曲がれない〜!)」
スピードをつけすぎて木に激突する。
そこへやってくるのは白狼で……。
(あ…やば)
そこで私は死んだと思った。
(だけど、もう少しで逃げきれそうって時に諦めるのは癪に触るんだよ!)
私はそこで『脱兎』のスキルを発動させる。
(おわ!?)
思いっきりぶつかった木から離脱し、白狼はそこに向かって爪による攻撃をする。
木がえぐれて、削れた方向に倒れていく。
それを避けて、私がいないことに気づきあたりを探すように見回している。
(あの攻撃を私はさっきから見ずに避けてたの?)
私は体を震わせる。
あれ当たったらめちゃくちゃ痛そうなんですけど…。
よくぞ何回もあの攻撃を避けたとさっきまでの私を褒めたくなってくる。
そこで、私は白狼と目が合う。
(今度こそ死んだわ…)
今のうちに逃げとけば良かったと後悔する。
そして、とんでもない速さでこちらに向かってくる。
(くっそ〜!絶対今度は倒してやる!)
そこで私は目を瞑る。
だが、やってくるであろう衝撃もリスポーンの通知もこない。
(あれ?)
不思議に思ってつぶっていた目を開ける。
そこに広がっていたのは、気に倒れ込み、ポリゴンへと変化しようとする白狼と2人組だった。
(どっかで見覚えがあるような…この2人……)
私は失礼ながらも、感謝の前に2人の目の前に回り込み、顔を確認する。
(あ!)
「ニャンコ?どうした?」
「あ!私を追っかけてきちゃったの?ルキ。今度こそ飼ってもいい?」
「今は仕事中だ。後でしてくれ」
「はーい」
2人が会話をする。
(ん?ちょっとだけ意味わかる気が…)
私にはそれがなんとなくだが、わかったような気がする。
勉強の成果だろうか?
こんなにすぐ成果を身近に感じれるのは少々予想外だが、まあいいだろう。
ちなみに今の会話は私にはこう聞こえた。
『繝九Ε繝ウ繧ウ?どうした?』
『あ!私を追っかけてきちゃったの?溘??繝ォ繧ュ。今度こそ飼っていい?』
『今は仕事中だ。後縺ァ縺励※縺上l』
『はーい』
私を飼うとは何様だ!
私はプレーヤーだぞ!
色々とツッコミ出来そうな箇所があるが、ひとまず置いといて…。
若干わからない部分もあるが、全然聞き取れる。
なお、話せるわけではない。
聞き取れるようになっただけで、発音の練習とかも一切していないので、私にはいまだにまともに話していい権利はない。
帰ったらもっと勉強しよ…。
本はインベントリに入れていない。
あの後、帰って一旦ログアウトしようと思って(結局してない)猫さんの寝床に行ったんだけど、そこで見た猫さんが寒そうに見えたから布団がわりにかけておいたのだ。
丸まって寝るのは猫にとって平常運転なのかもしれないけど、私からしたら外で寝るなんて絶対寒いか暑いかして起きてしまうだろう。
なのでかけてあげた。
私の本はかなり分厚くて重たいけど、その分ちょっとだけ熱がこもっているので、意外とあったかい。
というのも、猫さんが私の本の中に入ってムッチャ幸せそうな顔をしていたからである。
結構切れ長の目をしていた猫さんからは想像できないほどに……。
少なくとも私の普段見るザ・猫みたいな?
そこで、私は抱き上げられ、思考を切り替える。
「あ、にゅ」
「ん?なんか言ったの?猫ちゃん」
やっぱダメだった。
頑張って人族語を言ったつもりなのだが。
私は恥ずかしくなり、女の子の胸に顔を埋める。
「あらま」
「おい。早くいくぞ?」
「はいはいわかってるよーっと」
「今回の任務はオークキングの討伐だ。今殺したシルバーウルフがCランクだから、だいたいBランク、もしくはAランク程度だろ?」
私はまだ知らない言葉を聞き、耳を傾ける。
(ランク?なんぞや?)
2人は話を続ける。
「へー。そんぐらいだったらあんた1人でもなんとかなるんじゃない?それと、魔族でいう難易度的に幾つよそいつ」
「おい。誰がいるかわからない。気を付けろ。それと難易度4がいいところだろ」
「やっぱ雑魚じゃん!」
そんな会話が繰り返される。
(難易度?魔族?)
またよくわからん単語が聞こえてくる。
私のわかる言語で言ってくれません?
「ああ。雑魚は雑魚だが、束になれば厄介なんじゃないか?知らないが」
「雑魚集めても私たちには意味ないでしょ?一応ランクでも難易度的にも私たちが圧倒的に高いんだから」
「まあそうなんだがな」
男が苦笑する。
この2人って意外に強そう…。
2人の会話を聞いている限り、雑魚とかどうの……こんなの強者のみの許された態度っていう奴でしょ?
いや〜さすがですわ〜。
守っていただいて、あざっす!
心の中で感謝を述べていると、2人の会話からとんでもない話が聞こえてくる。
「私たち魔族の敵ではないわね」
「所詮は魔“物”だしな」
その会話を最後に二人は森の中に入っていく。
もちろん私を連れて…。
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