8話 表通りの撮影会
午後に予定が詰まってたことを思い出し、急いで書いたので所々おかしいところがあるかもしれません。
ごめんなさい…。
「はーいみなさーん!今から猫ちゃんの写真会をやりまーす!」
一人の女性の声が通りに広がる。
その声を聞いて集まってくる人たち。
「映像記録のスクロールを今ならお安くしとくよー!」
さらに、男性の声が響き、その声によってさらに人が集まっていく。
映像記録のスクロールというのは、プレーヤーが使うスクリーンショットのようなものだ。
ただ、このスクロールはスクリーンショットよりも性能が高く、様々な角度から写真を撮ることができる。
空中で撮影ができたり、とかなり有用なものだ。
「今なら、銀貨1枚で、1回!撮ったものはプレゼントだよ!」
そして、このスクロールは一つで何回も使えるのだ。
さらにいうと、このスクロールは1つで銀貨2枚。
これを使って何回もお金を取ればじゃんじゃん儲かるというわけだ。
集まった人たちの中からにはもともとスクロールを持っているような冒険者たちもいるが、それを差し引いても問題はない。
ごめんね。猫ちゃん。後で、お高いキャットフードお腹いっぱいに食べさせてあげるからね。
女性のそんな心の声は誰にも聞こえることなく、霧散していく。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「んにゃ!?(どういうこと!?)」
私の周りに、巻き物みたいなものから出てきた透明なボードが私の周りをフヨフヨと飛んでいる。
(これって今どういう状況なのよ!)
いろいろな人が私の周りを囲んで、何やら巻物を読んでいる。
ほんとに読んでいるのかは疑問が残るが、私にとってそこは重要ではない。
(なんか写真撮られていない!?)
パシャパシャという音とともに透明なボードが光っている。
(絶対撮影されてるよね!?絶対そうだよね!?)
私のこと撮影してなんか意味あるん?
というか、なんかプレーヤー混じってない。
人混みに紛れてみにくいが、プレーヤーの緑色のマークが上にぷよぷよと浮かんでいるのが見える。
(今すっごい帰りたくなってきたんだけど…)
猫はストレスに弱いんだよ!
そんな囲まないでおくれ!
完全に逃げ場をなくしてしまった。
(あーもういいや……早く済ませておくれ……)
私は逃げようとするのを諦め、この撮影会が終わるのをただただ待つのだった。
なんでこんな撮影会が行われているのかを考えながら……。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「よし!ログインできた!」
私は自分の姿を確認しながら、待ち合わせ相手を待つ。
「おーい!こっちだこっち!」
待っているうちに遠くから声が聞こえる。
その声の主の方を見ると、ぴょんぴょんと飛び跳ねてこちらに手を振っている男性……というか、男の子がいた。
そいつは私と同じくらいの身長で、現実世界の年齢は私よりも下だ。
身長は、アバターを作るときいくらでも変更できるのだが、彼は自分のそのままの身長にしたらしい。
めんどくさがり屋な彼らしい選択だと思った。
彼は私の方に駆け寄ってくる。
無邪気に嬉しそうな姿を見て、私はふふふっと笑っていまいそうになるが、その思いを押し殺して近づいてくる彼に話しかける。
「見た目全然変えてないんだね。私はちょっとだけ身長伸ばしたり、肌の色変えたりしたのに」
「いいじゃん。なんか設定がたくさん出てきて、よくわかんなかったんだもん」
「ふーん…まあ、いいけどさ。それよりも早く街中を歩いてみようよ!」
「うん!」
とても楽しみにしていたEternal fantasy onlineというゲーム。
二人とも揃って、購入することができたのだ。
正確には私は友達に譲ってもらったのだが……。
「早く行こう!」
私の袖を引っ張って催促をする彼に私は『うん、行こう』と告げ、二人して歩いていく。
それにしてもこのゲームは作り込まれているな、と実感できる。
「いろんな人がいるね」
「そうだね。ここにいるのは、人族を選んだ人か、エルフを選んで、ここまでたどり着いた人かくらいだけど…でも、他にもたくさん選択肢があったよね。獣人とか魔族とか!」
このEFOの世界では、ワールドにおいて、種族選択によってどこにスポーンするか決まるらしい。
人族…普通の人間を得たんだ人はこの街に…エルフのスポーン地点とかなり近いこともあって、ここには二種類くらいの人種がいるわけだ。
「見てみて!武器屋があるよ!」
「ほんとね」
彼に続いて中に入る。
「いらっしゃい!」
おじさんのそんな声が聞こえ、私たちは入店する。
「武器がたくさんだ」
「それは武器屋だからね」
当たり前のことを言われクスッと笑ったのち、私たちは、それぞれにあった武器を選んだ。
「僕はこれにしよ!」
銅の片手剣を手にして振ってみている間に私も欲しい武器を少し振ってみる。
手に馴染むと思い、私たちは武器を購入する。
「ありがとうございました!」
という声を背に私たちは外に出る。
「次はどこに行こうか?」
そう話しながら、歩き出そうとする。
「見てよあれ。なんかやっているのかな?」
「さあな。いってみようぜ!」
他の歩いていた人がそんなことを言っているのを耳にする。
それを隣で聞いていたのか、彼も
「行ってみようよ!」
といいだし、私も気になるため、目の前をゆくさっきの人たちを追いかけることにする。
そして、追いかけた先に見えたのはたくさんの人だかりだった。
「何これ?」
いまだ状況が理解できないでいる間に、目の前に急にクエストの文字が見えた。
《緊急クエストを開始します》
「緊急クエスト?」
「緊急クエストってあれじゃないの?運営の予想外の出来事が起きたときに自動でAIがクエストとして出すやつでしょ?モンスターの反乱とか」
どうしてこんな場所でそんなものが起きているのかよくわからないが、その間にも事態は進んでいく。
ボン!
と目の前に巻物が現れる。
「何これ?」
「うーん、ちょっと待ってて…。『鑑定』!」
私は言われた通りに結果を待つ。
「これスクロールだって」
「スクロールって何?」
「なんていっていいのかわからないけど、スキルをこの中に閉じ込めた……的なもの?」
二人揃って、あまりチュートリアルを読まずに始めてしまったため、簡単なバトルと買い物くらいしかわからないのだ。
(とりあえずこれ広げるのかな?)
周りにいるNPCらしき人たちの真似をして、やってみると、透明なボードが目の前に現れ、そこから見えるであろう景色が開いたスクロールから映し出される。
「これでちょっと様子見てくるね」
「わかった」
といったはいいものの、動かし方がわからずしどろもどろしている間に、何かの鳴き声が聞こえる。
「んにゃ」
その鳴き声を聞いて私はとっさに猫だと思った。
だが、それはおかしいと同時に理解する。
一度、人混みから抜けて、なんで集まっていたのかを彼に伝える。
「猫がいたの?」
「鳴き声しか聞いてないから多分だけど…」
「それっておかしくない?」
彼も私と同じことを思ったのか私に説明してくる。
「まだ、このゲームって小動物……猫とか犬とかのペットを実装してないでしょ?なのに猫がいたなんて…」
「そうだよね。多分私の気のせいだと思う。NPCじゃないんだったらもしかしたらプレーヤーかもね」
「あはは!そんなわけないじゃん。猫になったその人がかわいそうすぎるよ!」
私の冗談に笑ってくれている間に…
《緊急クエストが終了しました》
頭の中で聞こえたその声に、私たちは後ろを振り返る。
どんどんと解散していくNPCたち。
その中にいるであろう何かはすでにそこにはいなくなっていた。
「ほんとなんだったの?」
「さあ?不思議な体験をできたと思えばいいじゃん!今はこの世界を楽しもうよ!」
「ええ、そうね!」
私は答える。
次はどこに行こうかな?
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