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01 怪しい誘い


「ねえ・・・まだなの?」


「もう少しなんだよ・・・もう少しで起動するんだ」


「もう少しってどれぐらいなのよ!?私たちには時間がないの!」


「分かってるよ・・このままじゃ俺達は・・・」


「お願い・・早く・・早く・・!」



ガシャン



「もう駄目だわ・・・逃げましょう?」


「逃げるってどこにだよ!?これに賭けるしかないだろ!!」


「私は少しでも生きていたいのよ・・・!!」




ガシャン



「あ・・もう・・・来ちゃった・・・」


「よし!『タイムワープ』起動した!おい・・グズグズしてないで行くぞ!」


「あ・・・あ・・・」


「早く! 【平和な世界】に・・・・!」













春。4月8日。

実に、実に平和だ。ただ一人 俺を除いて。

俺は何の変哲もないただのサラリーマンだ。

今年で25歳。新卒で入った会社にずっと勤めている。

これがまた、ブラック企業でひどい。

残業は当たり前、有休取る暇もない。

低賃金、パワハラ上司。 挙げだしたらキリがないくらいの漆黒要素。

求人票には完全週休二日制、年間120日休日ありとか書いてたけど、実際働いたら60日くらいだった。

労基法的にダメだろこれ。

そんな闇に呑まれつつ俺は働いている。

そんな会社捨てて転職すればいいって?

何を言う君。してーよ、でもな、やめられねーんだ。

実は近々彼女にプロポーズしようと思ってさ。

結婚するってなったら旦那が無職じゃ厳しいだろ? 結婚して、式挙げてやりてーし、子供ができたら金も必要になる。

そのための費用も稼がなきゃならねーし、今は転職してる暇なんてない。

今日も重たい足で、会社に向かう。



「・・桜庭、お前、またクレーム入ってたぞ。新藤クリニックからだ。電カルソフト点検行ったのお前だよな?」


会社に着いて早々上司から嫌な報告だ。


「はい・・僕です」


「お前が点検行ってから不具合が起きてるらしい。お前しっかりしろよ!!もうここ勤めて三年だろ!!」


「すみません・・僕もう一度新藤さんのとこ行ってお詫びに・・」


「もういい、別のやつに行かせた。お前が帰った後に連絡が来たからな」


「・・・・・・」


「ったく・・使えねーな・・」



後に分かったことだが、俺が点検して何か余計なことをした訳ではなく、新しく入れた医療用ソフトでバグが発生していたらしい。俺点検とか営業係だから悪くねーよ。作ってる部署が原因じゃんこれ。


それが発覚しても上司は何も言ってこなかった。




22時、帰宅。

疲れた。もう無理ゲーや。明日休みだけど。

俺が休みの間会社燃えねーかな。油撒いて給湯室のガスいじって帰ってくりゃ良かった。

そんな事を考えながら、アパートの郵便受けに目を落とす。

請求書やら手紙やらぐちゃぐちゃに詰まっていた。

あまりの忙しさに放置してた。やばい。全部細かく切ったら優勝パレードできるくらい書類あるわ。きしょ。

「整理するかあ・・」

俺は大量の郵便物を部屋に運んだ。


「・・・なんだこれは」

部屋で届いた物をチェックしていると、妙な物があった。

黒い封筒に入っている、手紙。


「送り主は・・・救助機関・・・?」


ちょっと気味が悪いが、開けてみることにした。


「 桜庭 紫苑様。突然のご連絡、申し訳ございません。

  我々は救助機関という研究組織でございます。

  実は桜庭様にぜひご紹介したいお仕事がございましたので、この手紙をお送り致しました。

  簡単に申しますと、治験のアルバイトでございます。

  機密事項なので書面で詳しく記載は出来ないのですが、とある薬品開発を行っておりまして、

  桜庭様には実験中の薬品のテスターになって頂きたいのです。

  もし、ご了解を頂けるなら、4月9日、午後1時、○駅最寄りの△ビルまでお越しください。

  住所は・・・・」



手紙の内容はこんな感じだ。



・・・胡散臭ア・・


こんなにやばい手紙初めて見たわ。

しかもバイト明日じゃん。


こんな手紙受け取って素直に行くやついるのか・・?


・・・ん?


「なお、報酬につきましてはそれなりの物をご用意しております。時給換算すると、1時間¥500,000程度です。」


は?


1時間50万?


馬鹿じゃねーのか。そんなおいしいバイトあってたまるか。

うち副業そもそも禁止だし。んな大金手に入ったら年末調整とかでバレるわ。



捨てようこんなの。


「・・・・・・・・・」


でもちょっと気になる。

治験ってことは数時間・・いや数日は付き合わされることになるんじゃ・・・。

2時間でも100万だぞ?

もし今1000万以上手に入るようだったら・・結婚の初期費用も準備できるし、生活費考えずに転職活動も余裕持って出来る。仕事辞められるのでは?


「・・・は・・話だけでも聞いてみようかな」



俺は金の話にあっけなく魅了され、明日、手紙の送り主の元へ行くことにした。



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