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2話 ひとつ屋根の下で

僕は自分の仕事中、彼女─突然空から降ってきた幼馴染の繭─の事で頭がいっぱいだった。好きだからとかそんな理由なら良かったのだがそれは違う、あの事件の(抱きつかれた)あとに僕が住んでいる近くの村の話をすると、「行ってくる!」と元気よく走って行ってしまったのだ。知ってる人もいないだろうし、そもそも村にたどり着くかも危うい。そんな理由わけで、僕は彼女が心配でたまらなかった。


結局その日は仕事に集中できず、効率も普段より悪かった。家に帰る途中、明日は仕事に集中するために、仕事のことを考えていたが、どうしても彼女の事が心配で、脳に浮かんでくるので少し走って村に帰ることにした。倉庫に荷物を置き家の前に着くと、横から見える窓から少しの光が漏れているのが見えた。


(泥棒?でも鍵閉めたしな…)

そんな事を考えながら、音を立てないように玄関の前に行く。玄関を見ても人影はなく、耳を当てても音は聞こえない。


(奥の方にいるのか…?でも奥はキッチンしか無いからな…。)

此処に居ても何かが変わる訳でも無いし、他の人に見られると怪しい人と思われてしまうので、恐る恐る玄関を開けることにした。音が鳴らないように慎重にゆっくりと動かす。が、家が古いせいか真ん中の辺りまで開いた時に「ガタッ。」と音がなってしまった。


(やばい…どうしよう。)

僕が慌てていると奥から此方こちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。


(やばいやばいやばい…)

逃げた方が良いのか、何時でも迎え撃てるようにした方が良いのか、そんな事を考えても迫り来る足音に焦る気持ちが脳を支配する。そうしているうちに、玄関が勢いよく開かれた。もうダメだ、と思いせめて頭は守ろうと涙目で頭を抱えしゃがみ込む。下を見ているので直接は見えないが、自分を見下ろす人の気配を感じる。だけど、何をされてしまうのだろうか、という心配はとある一声で消え去った。


「何してるの?雷。」

「…………へっ?」

突如発せられた声に、僕は間抜けな声を出してしまう、ゆっくりと顔を上げると、そこには先程の声の主、冬夜とうやまゆが立っていた。


「へっ?じゃないよ、なんで家の前で涙目で震えてるの?」

僕がこんな事になっている理由を知らない繭が、そんな事を問いかけてくる。そこで初めて僕はマトモに声を発した。


「繭が此処に居るからだよ!なんで僕の家にいるの?!」

繭はちょっと驚いた顔をした後にゆっくりと答えた。

「村の人に聞いたら、雷の家がここだって言うから」

「どうやって鍵開けたの?」

「鍵?そんなのかかってなかったけど。」

どうやら僕が鍵をかけ忘れたのが原因らしい。心の中で(やらかしたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!)と思いっきり叫んでから、話を続ける。


「てかさ、どうやって村見つけたの?」

「雷と別れたあとに、歩いてる人に近くに村が無いか聞いたら案内してくれた。」

「そうだったのか…」

泥棒じゃなかった安心感と、繭が無事だった安心感、そして恥ずかしいものを見せてしまった羞恥心からか、僕は体の力が抜けて床に座り込んだ。


「どうしたの?」

「ちょっと疲れた」

「ならご飯食べなよ!私作ったんだよ!」

よく見るとエプロンを着ていた、僕の使っているものなので胸の辺りがギリギリなのか、ピンと張っていて、強調されているように見える。それをなるべく見ないように、僕は繭につられリビングに向かった。


そのままリビングに行くと机の上にはボロボロな家には似合わない豪華なご飯が乗っていた。

「凄い…」

そう呟くと、横で繭がドヤ顔をしていた。

「頑張ったんだよ!」

えっへんと胸を張っているので、タダでさえ大きい胸が強調され心臓に悪い。思わずチラチラと見ていると、

「どうしたの?」

と少し首を傾げて聞いてきた、その仕草が可愛いなと思いながら

「なっ、何でもないよ。」

と答える。なんか恥ずかしくなったので、

「とりあえず、ご飯食べよ。」

と言う、動揺は声にで出なかったと思う。繭は少し不思議そうな顔をしながら、

「そうだね、冷めると困るし。」

と答え、ご飯を食べだした。僕も箸を持ち小声で

「いただきます。」

と言ってから、目の前のご飯を食べ始めた。


繭の手料理はとても美味しかった。今ま自分が作った料理とは比べ物にならないほど美味しかった。

「ありがとう、美味しかったよ。」

「頑張ったからね、でも褒めてくれて嬉しいな。」

本当に嬉しそうな顔をして繭が答える。褒めたのを喜んで貰ったのは初めてなので、僕まで嬉しい気持ちになった。

夕食の片付けが終わり、繭に1番聞きたかったことを質問する事にした。机を挟んで向かい合わせに椅子に座り、話を始める。


「これから、どこに住むの?」

そう、したかった質問というのは、繭のこれからの事についてだ。ご飯は作れるようなので食事には困ることは無さそうだが、他の家事が出来るかどうかは分からない。そもそもどこに住むのかが1番の問題だ。真剣な顔で繭の顔を見ていると、繭は当たり前だと言うような顔で、

「ここに住む。」

と答えた。予想外の答えに慌てる僕、ここに住むと言う事は僕との二人暮し、いわゆる同棲というやつだろう。慌てている僕を見て、

「だめ?」

と聞いてくる繭。可愛い。いや、そうじゃなくて。そんな事を言われて断る勇気なんて僕には無いので、

「わかった。」

と答える。嬉しそうに繭はジャンプをしたり走ったりしている。そんな様子を見ると僕も断らなくて良かったと思う。

「お風呂入ってくる!!」

と繭は元気にお風呂に向かって行った。1人になったの僕は椅子に座り、これからの事を考えるのだった。


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