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改造人間と奴隷達の居場所  作者: 音数 藻研鬼
第2章
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第59話 火だるま

「やあぁぁぁぁぁぁッ‼︎」

 マンドレイクヤヌアリウスに向かって剣を振り上げたロイゼは、綺麗な太刀筋で振り下ろした。

 しかし目の前に木の幹が出現して、剣を防いだ。

「くっ!」

「ふん、たかが一生命体ごときが」

 ロイゼはそれでも剣を押し通そうとするが、刃は幹の中で止まってしまっている。

 刃を抜くと別の角度から斬ろうとするが、全て塞がれてしまっている。

 今度は逆に操られた植物が、ロイゼに向かって鞭や槍のような攻撃を仕掛けている。

 ロイゼはそれを捌きながらも、攻撃の手を緩めない。

 何やってんだアイツは⁉︎あんな事しても無駄に決まってるだろ‼︎

 今のところまともなダメージは与えられていない。それどころかロイゼがダメージを受けているまである。

 そんなの分かってるはずなのに、ロイゼは諦めようとしない。

「オモト様!今です!」

「は?…………あぁ!」

 そういう事かよ!ようやく意図が察せた。基本ソロプレイの弊害だな。

 試しに体を動かしてみるが、予想通り動かしやすくなっている。

 おそらくロイゼの防御に集中してるせいで、僕の拘束に使っているエネルギーが少なくなっているんだろうな。

 喉を締め上げていた拘束も弱まっている。これならいける!

 僕は息を吸い込むと、体内のエネルギーと混ぜて吐き出した。

 それはブレスとなって僕を縛り上げていた蔓をあっという間に焼き払った。

「何ッ⁉︎」

 消し炭となった蔓と一緒に、僕は地面に着地した。結構な高さだったが、これくらいは余裕だ。

「ロイゼ、退がって‼︎」

 僕はそう言うとロイゼの攻撃を防いでいたマンドレイクヤヌアリウスにむかって、ブレスを吐いた。

 ロイゼは絶妙なタイミングで後退した。

「くっ⁉︎」

 マンドレイクヤヌアリウスは危ないと察したのか、辺りにある植物を種類関係なく盾にした。

 そしてそれがブレスを防いでいる間に、木の上に跳び上がった。まぁそう簡単にはいかないよな。

 それと同時にブレスを防いでいた植物は、炎を纏って落ちていく。

 ん?………まさか………

 とりあえず僕はロイゼの所へと駆け寄った。

「ロイゼ!大丈夫?」

「は、はい。オモト様………私、ちゃんとお手伝い出来ましたよ………」

「あのなぁ、無茶はするなって言ってるだろ!危ないことするなぁ」

 僕はロイゼが怪我をしてないから確かめた。とりあえずそこまでの怪我はしてないな。

 なんとか捌き切ったから助かったけど、少しでも不意を突かれていたら一発で死んでいた。

「これで私も力になれるって、分かっていただけましたか?」

「え?………って、そういう事かよ………」

 除け者にしてたの気にしてのね。それにしたって危ない事するなぁ。怪我したらどうするんだよ。

 ロイゼはどこか期待するような目で僕を見てくる。

 はぁ、もう………仕方ないなぁ。

「分かったよ。またどこかで頼るかもしれないから、その時はよろしく」

「はい!」

 はぁ、いい笑顔しおって。けど、たしかに助かったわ。ちゃんと自主練の成果出てるんだなぁ。

「あ、それと今少し気になった事があるのですが」

 ロイゼが何かに気がついたように手を挙げた。

「さっきからアイツが一歩も動いてない事か?」

「⁉︎ 気がついていたんですか?」

「まぁな」

 と言っても気がついたのはついさっきだ。ヤツの動きに不自然なところが見えてきた。

 アイツ僕が攻撃してから………いや、あの植物を操る能力を使ってる時は、一歩も動いてなかった。

 最初は余裕のつもりかと思ったけど、いくら何でも不自然すぎる。

 たぶん動いちゃいけない理由があるんだ。まぁそれも何となくは察せてるんだけど。

 アイツの特徴からしてあり得る理由は限られてくるからな。

「何で動こうとしないんでしょうか?」

「それは今から調べるよ。何とかなるだろ」

 僕は近くに落ちていたゲワーゲルフを手に取った色々と調べようはある。

「ふぅ、なるほど。そこの奴隷も中々考えるようですね」

 木の上で僕達の事を見下ろしていたマンドレイクヤヌアリウスは、ため息をついた。

 とりあえず体勢は立て直せた。ここからはこっちからも仕掛けるとするか。

 僕はゲワーゲルフを構えると、マンドレイクヤヌアリウスに向けてフルオートで撃ちまくった。

 ババババッと光弾が放たれて、木にかすり傷や穴を作っていく。

「くっ!………ふっ!………やぁっ!」

 マンドレイクヤヌアリウスは僕の構えで、何をしたいのか察したのだろう。

 凄まじいスピードで木から木へと飛び移って、弾丸をかわしていく。

 もちろんアイツだって改造人間。これくらいの攻撃で倒せるだなんて思ってない。

 けどそれでいい。別に倒すのが目的じゃないからな。

 僕はとにかくマンドレイクヤヌアリウスを追うようにしてゲワーゲルフを乱射した。

 リロードも素早く行い、とにかくマンドレイクヤヌアリウスを止まらせないように撃ちまくった。

 くっ!このまま地上から撃ってから死線ができるな。それだとどこかで撃てなくなる。それだと意味がない。

 それなら………

 僕は近くの木の上に跳び乗った。そのままヤツを追いながら木から木へと跳び移って距離を縮める。

 その中でも手を休める事なく撃ちまくる。

 やっぱり………間違い無さそうだな。

 僕はゲワーゲルフを背負うと、脚に力を込めてバッタの如く大きく跳び上がった。

 その跳躍力はマンドレイクヤヌアリウスのを遥かに超えていて、ヤツの上を通り過ぎて追い越す。

 そしてマンドレイクヤヌアリウスが飛び移ろうとした木に先に跳び降りた。

「ッ⁉︎………このッ!」

 それによって目の前の木に跳び移るのを断念したマンドレイクヤヌアリウスは、別の木へと跳び移ろうとした。

 僕はゲワーゲルフを撃ってそれを阻止する。

 威嚇射撃をしながら、ヤツの止まっている木に跳び移った。

「ぐっ!………チィッ!」

 マンドレイクヤヌアリウスは僕を撃退する方へとやり方を変えた。

 右腕がまるで蔓が成長するかのように伸びた。それを鞭のように振るってくる。

 それは僕の腕に巻きついた。それを見たマンドレイクヤヌアリウスはニヤリと笑った。



 蔓からは棘が生えて、僕の人工皮膚を貫いた。そこから血が吸われていく。



「ぐっ⁉︎またかよ………ッ!」

「よしッ!これなら………!」

 僕の体からどんどん血液が失われていく。それはマンドレイクヤヌアリウスの浮き出た血管へと流れている。

「ぐあっ‼︎」

「オモト様‼︎」

 木の下でロイゼが叫ぶ。僕の体から力がどんどん抜けていく。

 ロイゼは僕の方へと向かってくる。

「来るなッ‼︎」

 マンドレイクヤヌアリウスが手を振ると、地面から植物の蔓が生えてロイゼの行く末を阻んだ。

「なぁッ!………くっ!オモト様‼︎」

 ロイゼがそれと格闘している間も、僕の体からは血液が吸われていく。

 やがて必要な分だけ擦ったと思ったのか、吸血は止まった。

 僕はガクッと脱力する。

「これでエネルギーは集まった………それならば再び………」

 そう言ってマンドレイクヤヌアリウスは僕から蔓を解こうとした。




 しかしその蔓は外される事は無かった。僕が蔓を掴んでいたからだ。




「なるほど………やっぱりか」

「何ッ⁉︎」

 僕からエネルギーを取り尽くしていったと思ったマンドレイクヤヌアリウスは、その様子に驚いた。

「僕のエネルギー量を人間とかベフュール基準で考えたのはナンセンスですね」

「ッ⁉︎………クソッ‼︎」

 マンドレイクヤヌアリウスはすぐに腕を振るって僕を蔓から振り落とそうとする。

 けどここでそう簡単にやられるほど、僕の改造人間としてのレベルは低くない。

 相手の動きを本能的に察知した僕は、腕に再び鋭い爪を生やすと、それで腕に絡まる木を斬り裂いた。

「ぐはッ⁉︎………それならッ!」

 マンドレイクヤヌアリウスは大きく息を吸い込むと、それを大きく吐き出した。




「────────────────────────────────ァァァァァァッッッ‼︎‼︎」




 それは大きな音となって僕を襲う。けどそんな分かりやすい攻撃は読めてる。

 僕は翼を生やして空へと飛んだ。素早くマンドレイクヤヌアリウスのいる木の周りを旋回すると、ヤツの後ろに回り込む。

「なぁッ⁉︎」

 マンドレイクヤヌアリウスはすぐにはたき落とそうと、蔓を伸ばしてくる。

 それを避けると、ホバリングで体勢を維持しつつブレスを吐いた。

 真っ赤な炎がたちまちマンドレイクヤヌアリウスの体を包んだ。

「ギャアァァァァァァァァァッッッ‼︎‼︎炎は!炎はやめろぉッ‼︎」

 やっぱり炎は弱点だったようだ。火だるまになり悶えたマンドレイクヤヌアリウスは、木の下に落ちる。

 僕は翼をしまい木の幹に昆虫のように張り付いた。鋭い爪にエネルギーを込める。



「じゃあな」



 僕は木の幹から跳び降りると、その勢いを乗せた爪をマンドレイクヤヌアリウスの顔面に突き刺した。

「ア゛ァッ‼︎…………」

 断末魔と共にマンドレイクヤヌアリウスは声を出さなくなった。

 僕は素早く爪を引き抜くと、身を翻した。その風圧でマンドレイクヤヌアリウスを包んでいた炎は消えた。

 そこに残るのは、炭と化したマンドレイクヤヌアリウスの身体だけだ。

 それはたちまち風化して、夜の風と土の中に溶けていった。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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