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改造人間と奴隷達の居場所  作者: 音数 藻研鬼
第2章
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第52話 偵察

「よし、着いたな」

 夜の森に到着した僕は、辺りを見渡して安全を確認した。静かな森、いいねぇ。

 近くに改造人間はいないし、ここから近づいていけばバレる可能性は格段に下がる。

 本当は今朝見たところまで行けば楽だし、出来ないわけではない。

 ただそこに改造人間がいる可能性があるからな。一応偵察でバレないようにするためには、こっちの方がいい。

「………って、ロイゼ大丈夫か?」

 僕は隣にいるロイゼに声をかけた。少しグッタリとした表情のロイゼは、しゃがんで荒く息を吐いている。

「はぁ………はぁ………す、すみません。少し驚いてしまって」

「あんまり無理しないでよ?というかこの移動手段たまにするから、早いうちに慣れてもらいたいんだけど」

 僕はここまで建物の屋根を駆け抜けて、森の近くになってからは木々をぴょんぴょん飛び回ってここに着いた。

 持ち前の改造人間としての能力使いまくりだ。普通に行くよりも効率がいい。

 ロイゼは僕が背負って運んでいったが、どうやらショックが強かったようだ。すごい騒いだ挙句にこの有様である。

「い、いえ……….移動手段自体は構わないのですが、やる時はやるとおっしゃってください………多少なりとも心の準備が必要なんです………うぅ」

「あ、ごめん」

 これから気をつけるとしよう。まぁすぐ忘れそうだけど。

 とりあえず酔ってはいないみたいだし、このまま帰す必要は無さそうだ。そうなったら面倒事が増えるからよかったよかった。

 ようやく息が整ったロイゼは立ち上がって辺りを見渡す。

「それで今朝見たところは………ここから西側ですね」

「あぁ、それじゃあ行くか。途中改造人間がいるかもしれないから充分気をつけてよ」

「はい」

 まぁ見つける前に気配で分かるから大丈夫だと思うんだけど、万が一があるからな。今回はバレないのが最優先事項だ。

 特にロイゼは一人では対処出来ないからな。上手く誤魔化せればいいけど、それが出来ない場合があるから気をつけないと。

 僕達は早速偵察を始めた。こういうのは分かれて分担した方がいいんだろうけど、敵が敵なので単独行動は無しだ。

「それじゃあ地上の方は任せたよ。僕は上から見てるから」

「分かりました。お気をつけて」

 僕はロイゼから荷物を預かると、軽くジャンプして真上の太い木の枝に飛び乗った。そこから周りの様子を確認する。

 これで僕は上から、ロイゼは下からと割と広い視野で偵察が出来る。

 僕は飛び乗った木の枝から周りの様子を見て、確認し終えたらまた別の木へと飛び移る。

 その上で周りに改造人間がいないかどうか確かめる。感覚機能を並列で使うの割と面倒だな。

 ロイゼは下の方で周りの確認をしているようだ。暗くて岩や木の根が多い森の中をひょいひょいと駆けている。

 本当にロイゼって森の中慣れてるんだなぁ。

 夜だというのに移動の仕方に躊躇はなく、身軽に偵察している。夜でもちゃんと目が見えるのだろう。

 それでいて、辺りにちゃんと気を配れている。その様子から周りを警戒してるのは明らかだ。

 これはロイゼを連れてきて正解だったかな。

 僕一人でもロイゼの分までの視界は確保出来る。でもそれに費やす集中力は、どう足掻いても一人分しかない。

 これで戦闘力も改造人間に迫るものになってくれたら嬉しいんだけど、それは高望みしすぎかな?

 改造人間は普通の人間の限界なんて余裕で超えられる。そんな相手に勝つようにするなんて無理がすぎるな。

 ロイゼだっていつも自主練頑張ってるんだし、それで出来る範囲の事をやってくれればそれでいい。

 むしろ危険な事は極力避けて欲しいな。無理して怪我したら元も子もないし。

 ここまで巻き込んでしまったんだ。その辺は僕が責任を持ってしっかりと見守ってないと。




 偵察も一区切りついたところで、僕は木の上から飛び降りてロイゼと合流した。

 まだまだ調べてないところだらけだけど、一旦情報共有がしたい。

 上下でここまで離れていると、そう簡単には連絡出来ないからな。

「ロイゼ、そっちはどうだった?」

「今のところ、森に特に目立った変化はありませんね。怪しい人影も見ませんし」

「そうか。こっちもこれといったものは見られなかった」

 まぁまだ今朝のところには着いてないから、当然といえば当然なんだけどな。

「もう少し進んでみるか。とりあえず今朝のところまでは行こう」

「そうですね」




 それから僕達は偵察を再開した。

 たびたび区切りをつけては情報を共有して、森の中に変化が無いかを確認している。

 それでも特に目立った変化は見受けられなかった。改造人間どころか、計画の跡すらない。

 まぁハイルセンスがそんな馬鹿やるとは思えないし、そんな事するようなヤツらなら、こんな事せずに堂々としてても問題ないだろう。

「そろそろ今朝の場所に近づいてきましたね」

「あぁ、ただ今のところ何も無いんだよな」

「まだ計画の段階で、行動には移ってないのではないでしょうか?」

 たしかに、その可能性も無きにしも非ずだ。

 僕達が見たのは改造人間が話しているところだけ。何か行動してるのは見た事がない。

 それなら今はまだ計画の段階と考えるのが自然か。これから行動する、みたいな。

「まぁそうだとしても、今朝のところに何かしらの手がかりはあるはずだからね。そこは最低限調べたいかな」

「ですね。少なくともあの森を選んだ、という事にはそれなりに意味があるはずです。それなら調べておいて損はないでしょう」

 もっともその森を選んだというのも、僕達の勝手な想像の可能性があるわけだが。その辺は賭けるしかないよなぁ。




 そう思って再び偵察をしようとした瞬間。僕はその場で止まった。

「オモト様?どうかしましたか?」

 ロイゼが怪訝そうに尋ねてきたが、今の僕は他のことに集中していたので、端的に答えた。



「改造人間だ。この辺にいる」



「ッ⁉︎」

 それを聞いたロイゼが素早く剣を構えた。って、おいおい!

「何剣構えてるの。剣はしまって」

 偵察だって言ったでしょ。というか戦闘は最小限に抑えるって言ったのロイゼだろ。

「あ、そうでした。つい癖で」

 癖で剣構えるのはどうかと思うが、とりあえずツッコむのは後にする。

「とにかく、このまま進もう。でも細心の注意を払って、だ。ヤバくなったらその時点で逃げよう」

「分かりました。しかしオモト様が気が付いたという事は、向こうのオモト様の事を気がついているという事なのでは?」

「そうだな」

 僕がこの距離で察知出来たんだ。向こうもしようと思えば出来る。

 もっとも僕は察知能力に関しては、改造人間の中ではトップクラスらしいから、その分の余裕はあるはずなんだけどね。

 それでも向こうにどんな改造人間がいるかは分からない。僕よりも察知能力の強いヤツがいるかもしれないし、注意しておくに越した事はないだろ。

「場所は具体的に分かるのですか?」

「あぁ、こっちだ」

 僕は一応ロイゼも含めて姿を消すと、森の中を歩いて行く。

 遠いせいか感覚は途切れ途切れではあるものの、近づいて行くほどに強くなっていった。

「今朝のところに近づいてますね」

「やっぱりあそこで何かするつもりみたいだね」

 予想が当たってくれたのは嬉しいけど、ここからどうするか、だな。

 とりあえず向こうの様子だけでも伺っとくか。ここからなら充分だろ。

 僕は移動を止めると、視覚と聴覚を研ぎ澄ました。

 本当はこの能力を使えば、宿からでもここの様子がはっきりと分かるんだけど、やっぱり実際に行ってみて感じることもあるからな。

 それにロイゼが『戦闘は最小限に抑える』とは言っていたし、僕もそれは賛成だ。

 でも戦闘にならないのであれば、多少の妨害工作はしておきたい。

 僕達の最終的な目標はこの計画を潰す事だし、それが早めに出来るならそれに越した事はない。

 となれば直接現地に行って、出来そうなら計画を潰して帰る。これが僕の理想図だ。

 ロイゼを連れてこようとしなかったのも、これをする前提で話していたから。

 危険な事に巻き込まないためだったんだけどなぁ。でもそれ言ったら余計に行くとか言い出しそうだったし。

 というわけでここからはちょっと危険な時間だ。

 本当ならこの辺りでロイゼを帰すんだけど………本人はやる気満々なんだよなぁ。

 隣で真剣な表情でついて来るロイゼを見て、僕は苦笑いした。

 ここで帰れって言ったら、また面倒な事になる。

 まぁ元から無理なら帰るとは言ってあるんだ。今無理に計画を潰す必要は無いでしょ。

 僕は視聴覚強化の能力を使って、周りを確認する。

 そうしていくうちに、今朝のところに人がいるのを発見した。

「オモト様、見つかりましたか?」

「あぁ、人が五人くらいいる」

 見た目は旅人っぽい感じがするけど、間違いなく改造人間だ。

「全員ベフュールですか?」

「………いや、五人中四人はベフュールみたい。でも残りの一人は………」

「この前みたいな強い改造人間、ですか?」

 ロイゼが息を呑んだ。この前ガーゴイルアンブロジウスに遭遇した時は怖い目にあったからな。ここで逃げないだけマシだ。

「戻るか?」

「いえ!何としても計画を止めます!」

 僕が試しに聞いてみると、ロイゼは毅然として答えた。いや、止めるのはあくまでうまくいったら、だからね。

「それで、改造人間達は何をしているのですか?」

 ロイゼに聞かれて、僕は改造人間達の周りを見てみた。

 すると地面に変なものがある事に気がつく。

 まるでマンホールのようなものが、地面に設置されているのだ。でもマンホールじゃないのは何となく分かる。

 さらに僕が注目したのは、そのマンホールのようなものの柄だ。

 いや、あれは柄じゃなくて…………



「魔法陣だ。アイツらこの森で魔法陣を使った魔術を行おうとしてるみたい」

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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