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改造人間と奴隷達の居場所  作者: 音数 藻研鬼
第2章
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第43話 モチベーション

 とある日の朝。朝食を食べ終わった僕とロイゼは、いつも通りクエストを受けていた。昔に比べると少し遅いペースだ。

 最近は少し宿を出る時間を遅くしていた。理由はロイゼの朝練だ。

 朝から結構ハードな稽古をして、それからすぐに食事で出発、というのはちょっと大変だろうと思ったからだ。

 ロイゼは全然構わないと言っていたが、それでもちゃんと休んでもらった。

 冒険者の仕事は命がけだ。いつどんな時に何が起こるかは分からない。

 そうなれば態勢はちゃんと整えておいた方がいいに決まっている。何かあってからじゃ遅いからな。

 元々結構余裕のあるスケジュールで動いていたため、多少ゆっくりめに出かけてもクエストに何の問題も無かった。クエストが終わる時間も前とあんまり変わらない。

 元々クエスト自体にそこまで時間はかけないからな。ぶっちゃけ討伐系のクエストの場合は、その森に行くまでの方が時間かかっている気がする。ロイゼがいれば一瞬よ。

 それはもちろん今日も変わらなかった。こう考えるとこれも楽な仕事だ。ロイゼ様々だな。

「ふぅ、こんなものかな」

 僕は今日討伐したモンスター、牙ウサギを見ながら一息ついた。

「そうですね。お疲れ様です」

 僕から少し離れたところでは、ロイゼも同様のモンスターを討伐していた。

 お疲れ様ですとは言うが、ほとんど倒していたのはロイゼだった。

 元々結構強かったロイゼだが、自主練の成果も少しずつ出てきていた。前に比べて剣の冴えが高まったように感じる。日に日にロイゼの成長を感じることが出来る。

 僕もたまにロイゼの朝練風景を見させてもらったりアドバイスしたりしているが、本人はいつも一生懸命に集中している。

 少しずつではあるが、その努力は実ってきているというわけだ。

 何ともいい事じゃないか。どれだけ努力してもうまくいかない時はあるからな。少しずつとはいえ実ってるなら大したもんだ。

 最近では朝練の内容も少しずつハードになっていた。

 あんまり無理はしないようにとは言ってるんだけど、本人は全然ケロッとしているし、もっと強くなるために必要なんだと。

 その内どこかで倒れないか心配だが、今はロイゼの好きにやらせてみようと思う。

 ロイゼはまだ色々と不安定な状態だ。これに関しては過去のことを考えれば仕方ない。

 でもいつかちゃんと自分に合った練習方法を見つけられるはずだ。それはロイゼ自身が見つけないと意味がない。

 それまではぜひとも自分で色々と試行錯誤してみて欲しい。

 生憎僕はそういうのは専門外なので、大したアドバイスは出来ないし。それで彼女を縛るは嫌だ。

 だからというわけでもないが、僕はクエストの時にロイゼに必要以上に作戦はたてていない。

 もちろん無計画でいいわけはない。どこかでちゃんとした作戦は必要だと思う。

 それでもどうせ考えるから、ちゃんとロイゼの得意な戦い方などを知ってから考えたい。

 せっかく強いんだから、ロイゼがちゃんと本領発揮出来るような作戦を立てたい。

 そのためにはまずはロイゼの得意とする戦い方をちゃんと知らないとだからな。

 そもそも今ロイゼが使っている剣ですらも、ロイゼに合っているのか分からない。

 だからもう少し様子を見て、ちゃんとロイゼに合った作戦で臨みたい。

 それを察してというわけではないだろうが、ロイゼは自分で色々考えて、自分なりに練習している。

 その甲斐あってか、ロイゼの力はメキメキ伸びている。自分なりの練習方法を見つけてきてるのだろう。

 最初の頃からクエストでは心強かったが、今では前よりも頼もしい。

 それは戦闘力の面でもそうだが、精神面でも頼もしくなったと思う。

 前は色々なものに怯えてビクビクしていたから、おっかなくて前に出そうとは思わなかったしロイゼも出ようとしなかった。

 でも今では自分から進んで前に出て戦ってくれている。僕も信頼して前に出せる。

 僕はロイゼの精神面での成長は、とにかく形で表してあげられるようにしたい。

 目に見えないものを見るなんて無理だからな。言葉でしかないけど、しっかりと感じられるようにしてあげたい。

 そもそも僕がちゃんと評価してあげたいんだけど、それを上手く言葉以外で表すのが難しいってのもあるんだけどね。

 だからどういうところが伸びたのか。戦闘以外の些細な事でも目についたものは伝えてあげるようにしている。

 もちろん上手くいく事ばかりじゃない。そういう時は途中経過でもちゃんと評価して、次に繋げやすいようにしている。

 無闇に結果ばっかり求めても仕方ないからな。大雑把でも努力の評価はしてあげたい。

『出来る』『出来ない』だけで判断するのではなく、どれくらいまで出来ているのか。そういった具体的な立ち位置は知っておくべきだろ。そうでないとそもそもどうすればいいのか分からないからな。

 それにこういうのは自分では分かりにくいものだ。どうしても自分のやっている事とやれている事が評価で混じってしまう。

 そうなると自分の目標を見失う事にも繋がってしまう。

 結局のところ評価するのは周りなんだから、途中経過も周りが客観的に見てあげた方がいい。途中で評価する人が変わるのも面倒だろうし。

 せっかく近くで見てあげられるのだ、こういう事くらいはしてあげるべきだろ。というかそれくらいしかしてあげられることが思い浮かばない。

 そこで僕がいつも心がけているのは、必ず次の目標を聞いてみる事だ。

 ずっと先の目標ばかり見るのではなくて、目の前の小さな努力でもしっかりとこなすには大切なことだ。

 こうすればモチベーションを持ち続けられる。時間はたっぷりあるんだ、小さくゆっくり頑張ればいい。

 それでもあくまで聞くだけで、無いなら無いでいいと思う。

 物事を何となくやってみる事も大事だろ。そこから新しく見つかる道もある。

 目標に真っ直ぐなのはいいけど、広い視野は持っておくべきだ。無理に考えても思いつかないし。

 まぁ僕がそんな事しなくても、ロイゼは充分努力し続けている。最近では毎日欠かさずに練習している。だからこそ予定を変えたわけだが。

 何がモチベーションかは知らないけど、いつも真面目でキツそうな顔すら見せない。とてもいい表情だ。

 そういう精神面での成長も戦闘力の向上に繋がっていく事だろう。

 それに一つ一つのことを向上させていけば、それが他の自信にも繋がっていく。

 何事も自信やモチベーションが無いと続かないからな。まぁロイゼならそんなもの無くても頑張りそうだけど、無理はして欲しくないし。

「さてと、それじゃあクエストも終わったことだし、帰ってご飯にするか」

「はい」

 僕は牙ウサギの討伐部位を切り取ると、森を後にした。

「今日はどこで昼ごはん食べるのですか?」

「そうだな………たまには散歩しながらってのはどうだ?」

「いいですね。今から楽しみです」

 お前散歩大好きだもんな。

 これが僕達の最近の日課だ。クエストが終わってやることが無くなると、二人で街へ散歩に出かけるのだ。

 この前ロイゼを趣味を探させるために送り出した後くらいに日課になった。

 あの時、ロイゼは何かやりたい事は見つからなかったが、街に面白いものがたくさんあったと言っていたのだ。

 それなら散歩にでも出かけて探してきなと言ったところ、よかったらご一緒にと言われたのだ。

 元々僕はインドアだし人混みは得意では無い。だから正直悩んだ。

 それでもロイゼが面白いと思っているものが、どんなものかを知りたかった。

 それに一緒にいて楽しそうにしているロイゼからも成長が感じられて面白い。

 二人で街に出かけて、食事をしたり路上パフォーマンスを見たり、そんなにはしゃぐ事は無いけどそれなりに楽しんでいる。

 ただ一つ謎なのが、散歩をしている時にロイゼがやけにソワソワしている事だ。

 周りのものが気になるってのもあるんだろうけど、何か僕のこと見てくるんだよな。

 どうしたと聞いてもはぐらかされちゃうし、よく分からないけど何かあるのかな?

 もっともそれ以外ではいたって普通に接してくれるので、あんまり気にしない事にしている。

 ロイゼも僕に言いたくない事くらいあるだろ。下手に詮索するのはやめておこう。

 まぁこうやって表情で変化を分かるようになっただけでも嬉しい事だ。前はずっと暗くて表情読む以前の問題だったからな。

 僕はそんな事を考えて森を抜けようとした。



 しかし僕はハッとするとその場に立ち止まった。



 これは…………マジかよ。

「オモト様?どうかされましたか?」

 ロイゼはいきなり止まった僕に不思議そうな目をしていた。

「………ロイゼ、武器構えとけ」

「え?は、はい………」

 僕の低めの声のトーンからタダごとでないと察したのか、ゆっくりと腰を落として構えた。

 僕はそれを横目で確認すると、目を閉じて全身の感覚を研ぎ澄ました。

 …………間違いないな。何でこのタイミングなんだよ。

「えっと………オモト様?もしかしてまた………」

 どうやらロイゼも僕の様子から、状況を察したようだ。


「あぁ、ハイルセンスの改造人間だ。近くにいる」

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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