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改造人間と奴隷達の居場所  作者: 音数 藻研鬼
第1章 
39/86

第38話 検証

 僕とロイゼは宿を出るとギルドへと向かった。もちろんクエストを受けるためだ。

 僕はいつもの装備に銃を持っている。ちゃんと布に包んで周りからは見えないようにしている。

 今は大体六時くらい。街が賑やかになってくる時間帯だ。

 街の通りでは既にたくさんのお店が開いており、所々からいい匂いがしてくる。

 日本だとこういう所が少ないから、そこはこの世界のいい所だよな。

 せっかくならどこかで買い食いでもして行こうかと思ったが、今はクエストの方が先だ。終わったら買って帰るか。

 ギルドに着くと、僕達は手頃なクエストを探し始めた。まだ朝早いからか結構いいクエストが残っていた。

「どのクエストにしますか?」

 僕と一緒にクエストの貼ってある掲示板を眺めていたロイゼが訪ねてくる。

 かつては街中で人に見られるだけで怯えていたロイゼだが、最近はこうやって僕と一緒にギルドに入ってくる事も珍しくなくなった。

 僕が連れていっているのではなく自分から来てくれているのだ。

 布も被らないようになったし、ちゃんと自分に自信が持てるようになったのかな。いい事だ。

「そうだなぁ、どちらかと言えば雑魚の一掃みたいな感じのクエストがいいかな」

 僕も掲示板を眺めながら答えた。

 まぁぶっちゃけどれでもいいんだけど、そっちの方が武器としての迫力があるだろうしイメージはいいだろ。

 というかまだ冒険者になって日の浅い僕達に出来るクエストは限られている。

 ギルド側に実力を示せば大丈夫らしいんだけど、面倒だしいいや。別に困るわけでもないし。

「それでしたら………これなんていかがでしょうか」

 そう言ってロイゼが差し出してきたのはコボルトの討伐クエストだった。

 あ、そっちにあったのね。こっちで見つからなかったから探してたんだよ。

 レベルの低い冒険者が出来るクエストなんてこんなものだ。

 だから先に他の冒険者に取られちゃうと仕事が出来なくなっちゃう。何とかならないものか。

「うん、それでいいよ」

 僕は頷くとそのクエストの紙をカウンターまで持っていった。

 クエストを受けると僕達は森へと向かった。

 毎回思うんだけど、こういう交通手段ってもうちょっとどうにか出来ないかな。

 この時間で結構時間取られるから勿体ないんだよね。有料でもいいからもうちょっと速い交通手段が無いものか。とにかく早く行くか。

 森に着くと、僕達は目的地に向けて辺りを確認しながら歩いていく。

 その時僕はロイゼに内緒で少しだけ改造人間としての能力を使って、辺りを警戒する。

 ガーゴイルアンブロジウスの一件から毎回するようにしている事だ。

 この前のように近くに改造人間が潜んでいる可能性がある。

 ただでさえガーゴイルアンブロジウスの情報で僕がこの街にいる事を知られている可能性があるのだ。いつ新たな改造人間が来てもおかしくない。

 何かあってからでは遅いので、いつも警戒していないと落ち着かない。

 あれから特にハイルセンスの動きはない。僕がここにいるのを知らないのか、それとも何かの計画のために泳がせているのかは分からない。

 それでも今の僕にはロイゼがいる。彼女だけはなんとしてでも守らないと。

 まぁそのための戦力強化、この銃の検証をしてるってのもあるんだけどさ。

 僕は人間だった時の記憶が戻った代わりなのかは分からないけど、ハイルセンスにいた頃の記憶が朧げだ。

 もちろん大体の自分の能力やハイルセンスの事はちゃんと覚えている。

 ただそこで自分が何をしたのか、細かい能力などがはっきりと覚えていない。

 というわけでちゃんと思い出すためにもこういう事をしていこうと思ったのだ。

 僕達は目的地に着くとコボルトを探した。どこにいるのかな?

 すると近くの茂みの中からコボルトが飛び出してきた。全部で七匹。全員お手製の武器を持っている。唸り声をあげて威嚇してくる。

 いつもならロイゼと分担でパッパと終わらせるくらいの数なんだけど、今日はちょっと少なく感じる。使う武器が武器だからな。この程度じゃ足りない。

 まぁいいや。いなくて適当に試すよりかはマシだ。向こうも警戒して間合いをとっているうちにさっさとやってしまおう。

「それじゃあ今日は僕一人でやるから、ロイゼは周りを警戒しててよ。後ちょっと離れてる事をオススメする」

「? はい、分かりました」

 ロイゼはそう言うと僕から少し離れた。至近距離にいると危ないからな。

 僕はロイゼが離れたのを確認すると、銃から布を剥ぎ取った。

 艶消しのされたくすんだ色が日の光に当てられて光っている。

 既にマガジンはセットされている。僕はチャージングハンドルを引いてコッキングした。

 ガシャッという音ともに弾が装填されたのが分かった。

 僕は目の前のコボルトに狙いを定めた。今は………フルオートでいいか。

 ライフルなんてこれまで構えた事なんてなかった。しかしハイルセンスにいた頃に使ってきたのか、身体が何となくと覚えていた。

 この数ならセミオートでも問題無さそうだけど、そっちの方が迫力がある。

 僕は狙いを定めると引き金を引いた。



 その瞬間銃口が眩く光り、バババッと篭った音が鳴り響いた。

 そして放たれた光の弾がコボルトを貫くと同時に、空薬莢ようなものがライフルの排莢口から排出された。



 僕はそのまま体勢をずらしていって近くのコボルトの一掃をした。

「グアァァッ‼︎」

「ギャァッ‼︎」

 面白いくらいにコボルト達が蜂の巣になっては吹き飛ばされていく。あーあ、肉片が飛び散ってら。

 やがてコボルトの殲滅が終わると、僕は引き金から指を離した。

 僕は目の前でボロボロになった元コボルトの残骸を見つめた。検証とはいえコボルト七匹相手にやりすぎたな。

 ふぅ、そうそうこんなんだったな。何か懐かしいように感じてしまう。

 それにしてもちゃんと当たってよかった。僕の意思を持った状態で撃つの初めてだからさ。ちゃんと当たるのか不安だった。

 ロイゼもいるのに外したら恥ずかしいって。

「よし、ロイゼもういいよ」

「は、はぁ………」

 木の陰で様子を見ていたロイゼは顔を引きつらせて出てきた。

 どうやら銃の威力が予想以上にすごかったようだ。完全に引いている。

「こ、これは………凄まじいですね。これほどの火力の武器が存在するなんて………」

 ロイゼは口をポカンと開いたままで呆然としている。口閉じろよ。

「まぁそういう武器を作るのがハイルセンスだからな」

 というか僕の記憶が正しければ、この銃でもハイルセンスの中ではかなり低レベルに位置する武器だ。これより酷いものなんかいくらでもあった。

 もっとも僕達改造人間自体が武器とも言えるから、その辺を考えるとまた変わってくるのかな。

「一応今の連射状態、フルオートと単発状態のセミオートがあるよ。状況によって使い分けるの」

 この辺は地球の銃と同じだな。そもそも他所の世界の武器なんだ、改良にも限界がある。

「そうですか。そういえば撃っている時に何か排出していませんでしたか?たしかこの辺りに………あれ?ありませんね」

 ロイゼはそう言って不思議そうに辺りを見回す。

「ん?あぁそれね。それならこれだよ」

 僕はその場にしゃがむと目の前にあった土を掴んだ。どこにでもある土だ。

「え?で、でも、私が見たのはもうちょっと大きかったような………」

「そうだよ。でもこれをこうやると………」

 僕は掴んだ土をギュッと握った。すると手の中に淡い光が生まれた。光が収まると僕は手を広げる。


 するとそこには円錐形の緑色の塊があった。これがこの銃の弾丸だよ。


「こ、これは………どういう事ですか?」

「これは遺伝子操作………まぁ簡単に言うと土の中にいる細菌達の中身をちょっとイジって土ごと形を変えたって感じかな。本当の遺伝子操作とは結構というか全く違うけど」

「は、はぁ………イデンシソウサ………ですか?」

 あ、ロイゼにはこの説明でも難しかったか。

 これも僕、アルクリーチャーの能力の一つだ。生命体の遺伝子を操作出来る。

 今回は土の中にいる細菌同士の組み合わせでやったけど、植物の葉や動物の骨なんかでも出来ちゃう。

 まぁここまでくると遺伝子操作というよりかはただの変形能力にも見えるけどさ。

 後は弾丸が勝手に魔力を集めてくれるから、それをマガジンに入れて撃つだけ。

 魔力を発射した弾丸は排莢口から排出されて元の土なり葉なりに戻るわけだ。

 それで何で魔法銃なのにこんな弾丸を使うのか。それは単純に威力を上げるためだ。

 銃全体に魔力を行き渡らせるより、弾丸一つ一つに魔力を貯めた方が威力が大きかったらしい。

 その威力は地球の銃を優に越えていて、鉄の塊も貫通するほどだ。

 これを使って僕は………いや、それ以上はやめておくか。

 というわけで以上がこの銃の力だ。ぶっちゃけ威力とか仕組みを無視すれば今のところ普通のアサルトライフルとほとんど変わらない。もしかしたらまだ知らない機能があるかもしれないけどさ。

 それでもこの世界ではとんでもない武器だ。改造人間との戦いもかなり有利になるだろう。

「詳しくは分かりませんが、とても強い武器なのは分かりました。ちなみにこれは名前などはあるんですか?」

 名前?えっと………たしかあったような………あ!思い出した!

「『ゲワーゲルフ』それがこれの名前だよ」

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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