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改造人間と奴隷達の居場所  作者: 音数 藻研鬼
第1章 
26/86

第25話 速さ

 僕はチラッと周りを確認しながら、ロイゼと一緒に街を歩いている。

 右後ろに二人、左後ろに二人、右前に一人、改造人間は全員で五人、全員男か。感覚からして()()()の配下か。

 雑魚が四人、でも一人はそこそこなヤツらだな。明らかに僕に気がついている。

 思ったよりも早かったな。もうちょっと遅いと思っていた。

 クソッ、ロイゼを逃すタイミングを逃したな。

 僕が逃げた時には雑魚だけだったのに。ついにこのレベルのヤツを引っ張り出してくるのかよ。対処は出来るだろうけど、スマートにはいかなさそうだ。

 まぁアイツが来ない辺り、まだ油断してるのかな。こっちとしてはありがたいが。

 完全に周りの人間に紛れているけど、僕には分かる。改造人間特有の感覚だ。

 本来ならさっさと殺してしまいたいが、今ここにはロイゼがいる。改造人間としての力を使うわけにはいかない。

 この場はうまく切り抜けるしかないな。改造人間を感じる感覚も遠くなれば感じなくなる。

 急いでギルドに行ってクエストを受けるか。この街を出ればもう感じることはないはずだ。

 アイツらもこんな大通りで襲ってくる事はないだろうし、周りに見られている以上下手な真似は出来ないはずだ。

 ただそううまく切り抜けられるかどうか。向こうが僕のことを分かっている以上追跡はしてくる。ゆっくりしてたらいつまでも追ってくるだろう。

 僕はカメレオンのように姿を消す事が出来るし、それにロイゼを巻き込む事も出来る。人から逃げる事はそれなりに得意だ。

 まぁ保護色ってわけじゃないんだけどさ。どちらかというと光の反射の問題。

 でも改造人間の感覚の圏内に逃れないとそれは意味を為さない。

 下手に僕とロイゼだけになれば間違いなく襲われる。ここまで一緒にいればロイゼが僕のパーティーメンバーなのは分かるだろう。

 無関係者なら離れるまで待つだろうけど、関係者なら確実に攻撃してくる。ハイルセンスの事を話している可能性もあるからな。

 アイツらは本当に他所に自分達の情報を広げるのを嫌がる。ハイルセンスの事を知っているかもしれないロイゼを放っておくって事はないだろう。

 とにかくロイゼを危険な目に遭わせるのは避けないと。それだけはあってはならない。

 ロイゼをハイルセンスの事に巻き込むのは危険過ぎる。

 となるとここは人混みの中に紛れるのが最適か。

 するとギュッと僕の服の袖が引っ張られた。

 思わずビクッとして振り返ってみると、ロイゼが僕の服の袖を引っ張ったまま心配そうに僕を見ていた。

「オモト様、大丈夫ですか?その……すごいお顔が険しく……」

 あ、しまった。表情に出てたか。ここで本当の事を言うわけにもいかない。

「あ……いや、何でもないよ。ちょっと日差しが強いなぁって」

 僕は適当に誤魔化しておいた。

 ここでとりあえずロイゼだけでも逃して………いや、それは危険か。

 ロイゼが僕の関係者とされている以上、一人にさせるのはロイゼの身を危険に晒すだけだ。ここは一緒に切り抜けるしかない。

「そう、ですか……あの……先ほどから、私達を尾けている人達がいるようなので……五人くらい。その事を気にしているのでは、と……」

「⁉︎……気がついていたのか……?」

「何となく、ですけど……。やっぱり、その事気がついていらしたのですね」

 まさかロイゼが勘付いていたとは。勘が良すぎるだろ。

 さすがと褒めるべきか、余計な事に気がつきおってと嘆くべきか。

 隠し通すつもりだったのに。となるとこのままってわけにはいかなくなったか。

「あの……彼らは一体……捕まえますか?」

「えっと……とりあえず今は何もしなくていいよ。様子を見る」

「そ、そうですか」

 ロイゼはオロオロしながらも、納得したように頷いた。

 たしかに捕まえたいけど、それはまた今度。ロイゼがいるならここは無難に過ごした方が良さそうだ。

「ごめん、ちょっとクエストは後回しでいい?宿に戻るよ」

「…………はい」

 とりあえずロイゼを宿に帰して、それから速攻で捕まえるかな。

 そう考えて僕はロイゼを連れて宿へと戻った。

 ロイゼも僕の様子からただ事ではないと感じたのか、黙ってついて来てくれた。


 しかしここで僕達の様子の変化に気がついたのか、向こう側も動き始めた。


 街の通りにいた五人はフッと裏路地に消えていった。おいおい、何のつもりだ?さっきまではちゃんと紛れていたのに。

 僕は透視能力で男達が入っていった裏路地の中を見た。すると男達は異常な速さで路地の中を駆け抜けていた。

 やっぱりアイツらは改造人間だよな。明らかにこっちに向かっている。

 嘘だろ、強行突破しようってか?人混みの中でお構いなしかよ。

 どうする?ロイゼを巻き込まないように手早く済ませるつもりだったけど、こうなってしまったらそれは難しい。

 動くのが遅すぎたか。完全に僕のミスだ。けどそんな事悔やんでいる暇などない。急いで動かないともっと大変な事になる。

 この場を何とか凌がないと、完全にロイゼまで危険に晒す事になる。

 やれる事は限られている、それもあんまりいい手段はない。だから……それをやれば……ロイゼは……。

 けど、こうなったら……もう腹を括るしかない。命が懸かっているのだし元々僕の責任なのだ。後の事は全て僕が何とかする。僕が泥かぶれば何とかなりそうだしな。

 彼女ともここまで、か………。

「オモト様………大丈夫ですか?」

「……ロイゼ、今からすごいびっくりすることが連発するかもしれない。説明は後でちゃんとするから今は僕について来てくれるか?絶対君は傷つけさせないから」

 ちゃんと納得してもらうためには、本当なら今すぐしてあげるべきなんだろうし、僕もそうしてあげたいんだけど、その余裕が無い。これで納得しろってのが無理な話だ。

 それでもこれから彼女を危険な事に巻き込むのは間違いない。だから意地でも彼女は守りきる。

「………分かりました。オモト様を信じます」

 ロイゼはピシッとした態度で宣言した。こんなよく分からない状況だというのに彼女の目に迷いはなかった。自分で聞いておいてアレだけど、結構照れ臭いな。

「ありがとう。それと………ごめんな」

 僕は小さく呟くとロイゼを連れて近くの裏路地に入った。

 向こうも僕の動きを察知したのだろう。五人の男達は一気にこっちへと走ってくる。

 狭い路地だ、僕達はあっという間に囲まれてしまった。

 パッと見た感じ街にいる人達と同じ格好をしていて、普通なら気がつく事はないだろう。

 しかしこっちに走ってくる速度が、彼らが人間でない事を表している。

「あなた達は一体何者ですか!」

 その男達と向かい合ったロイゼが剣の柄に手を添えて声を張り上げている。人間じゃないのは丸分かりなのに度胸あるなぁ。

 それを見た男達は一斉に身構える。

 男達は武器を手にしているわけではないが、彼らにとっては自分達の身体そのものが武器だ。

 その気になればロイゼなど一瞬で殺せる。まぁ僕がさせないけどな。

 それでもロイゼを殺さないのは僕の身内だからだろう。僕のボディーガードくらいには思われているのかもしれない。

 改造人間である僕のボディーガードとなると相当ヤバい事になるんだけど。

 まぁ今のところは都合良く解釈してくれてるみたいだし、このままにしておこう。

 ただだからといって本当に戦わせるわけにはいかない。まず間違いなく速攻でやられる。

 ロイゼは充分なくらいに強いんだけど、それでもただのダークエルフと改造人間とじゃ身体能力に差がある。

 雑魚くらいなら倒せそうだけど。それも今は無しだ。とにかくロイゼの安全が第一だからな。そこはちゃんと確保しないと。

 それにしてもこれからドンパチやらかすには、ここはちょっと狭すぎるな。それにたまに人も通りそうだし、僕達の戦いには不向きだ。

 それは向こうも同じだろう。だからこそ襲ってこないというのもあるのかもしれない。

 ただ向こうもあんまり余裕があるようには思えない。ここで襲われる可能性も充分にある。というかさっきまでそのつもりだったのだろう。だから向こうが動いたわけだし。

 となるとこのままずっと膠着状態って期待はしない方が良さげかな。


 そうなるとこの場は先手必勝か。


 僕は素早く隣のロイゼの膝と肩を抱き抱えた。いわゆるお姫様抱っこだ。

 初めてやったけど、改造人間の筋力増強効果のおかげかすんなりと出来た。

「ひゃっ⁉︎オモト様⁉︎」

 剣を構えて戦う気満々だったロイゼは、突然の僕の行動に驚いている。

「ロイゼ、舌噛まないようにね。後目瞑ってて」

 僕は短くロイゼに告げるて、彼女が目を瞑るのを確認すると僕達二人の姿を消した。

 そのまま僕は真上に大きく飛び上がった。そして目の前の建物の屋根に降り立つ。

 それから僕は建物の屋根から屋根へと飛び移りながら、街の中を駆け抜けていった。

 ロイゼは見てはいないが、突然自分に当たる強い風を感じたのか、ギュッと僕の服を掴んでいる。こんな時に悪いけど可愛いな。

 僕はそのまま屋根を駆け抜け、木々を飛び台にして街の城門まで走っていった。

 城門も飛び越えると、僕は森の中へと走っていった。

 ある程度森の中を進むと僕は足を止めた。この間三分弱。

「ロイゼ、もう目を開けていいよ」

「あ、はい……って、ここは森の中⁉︎こんな短時間でどうやって……」

 ロイゼは急に森に来た事に驚いているが、生憎その相手をしている暇はない。

 僕は周りの木々から出てきた、息切れ一つしていないさっきの男達を見た。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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