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改造人間と奴隷達の居場所  作者: 音数 藻研鬼
第1章 
21/86

第20話 買い食い

「さてと、クエストも終わったしギルドに戻るか」

「はい」

 僕はゴブリンの討伐部位である耳をナイフで切り取ると立ち上がった。

 それにしても今回は全く活躍出来なかったなぁ。

 昨日から今日にかけてロイゼには色々と迷惑かけちゃったから、ここで何とか巻き返したいと思ってたんだけど、むしろロイゼがバンバン活躍していた。

「なぁロイゼ、どうやったらロイゼみたいな身のこなしが身につくの?」

 僕は森の中を歩きながら何となくロイゼに尋ねてみた。

 このまま劣っているのはちょっと恥ずかしいからな。せっかく近くにいるなら色々と学びたい。

「わ、私、みたいにですか?そう聞かれましても……特に特別な事はありませんよ」

 まぁ話を聞く限りそうなのかもしれないんだろうけどさ。尚更残念だ。

 小さい頃から鍛えてるとこうなるのかな?

 一応僕はこの一年間ハイルセンスのもとで訓練をしてきたわけだが、それはほとんど改造人間としての自分の体の機能を使うためのものだ。

 ロイゼみたいに基礎からしっかり鍛えていたわけじゃない。その差なんだろうなぁ。

「ロイゼはすごいなぁ」

 僕は何となくロイゼを見ながら言った。

「そ、そうですか、ありがとうございます。でもオモト様はすごいですよ。ゴブリンを一撃で倒していたではないですか」

 それはこのナイフの機能のおかげだからなぁ。僕自身の力はほとんど使ってないし。

「というかここまで戦えるのに完全に戦闘奴隷として売られてなかったの?充分に強いと思うんだけど」

 一応ロイゼは戦闘奴隷として売られてはいたけど、他の用途も含めて売られていた。

 ここまでの実力があるならちゃんとした戦闘奴隷として売られていてもおかしくはない。むしろその方が高値がついていたと思うけど。

「えっと……マルディアさんのところの奴隷になった時に戦闘能力は測られたんですが……ちょっと……」

「あ……なるほどね。ごめん、嫌なこと聞いちゃったな」

「いえ、大丈夫です……」

 マルディアさんの話ではロイゼは住んでいた場所を何者かに燃やされて捕まり奴隷になったそうだ。

 その時に仲間のダークエルフもたくさん殺されている。

 そんなショックな状態でベストコンディションが引き出せるわけがない。それで完全な戦闘奴隷にはならなかったのか。

 せっかくあった才能を活かせなかったのか。もったいないなぁ。

 でもだからこそこうやって僕のもとにいてくれていると考えることも出来る。

 そう考えると不謹慎かもしれないけどありがたい。

 そんな事を話しているうちに僕達はギルドに到着した。

 さっさと依頼完了報告を済ませてゆっくりしたい。

 クエスト自体はそこまで時間はかからないんだけど、森からギルドへの移動が結構時間かかるんだよ。

 まぁそれはクエストによりきりなんだけどさ。今回は移動時間が割と普通のクエストだった。

 というわけでギルドに朝早く出かけて、今はもうお昼くらいである。

 早く昼食を食べるためにもさっさと報告を……っとその前に。

「ロイゼ、はいこれ」

 僕はロイゼに布を渡した。さすがに同じ失敗を二回はしないよ。

「僕が報告済ませてくるからそこで待ってて。周りの視線気になるようならそれ使っていいからさ」

 またギルドに彼女を入れさせると注目を集めてしまう。

 普通の人なら全然構わないんだけど、彼女の場合はまだ人に見られる恐怖が取り除けてない。だからギルドに入らせるのは危険だ。

「えっと……分かりました。お気遣いありがとうございます」

 ロイゼはそう言って頭を下げた。大袈裟だねぇ、別に大した事じゃないのに。

「それじゃあ出来るだけ早く戻ってくるから、周りの人に何か嫌なことされそうになったら普通にぶっ飛ばしていいからね」

「は、はぁ……」

 僕はロイゼにそう言うとギルドに入っていった。

 こうなると僕が離れている時に周りから何かされないか心配だけど、それ言ってたらどうしようもないからな。

 さっきまでだったらそこがよく心配で一緒について来てもらったが、今は違う。

 僕はロイゼの強さを知った。アイツなら面倒な人の一人や二人くらいは余裕で倒せるだろ。

 それでもやはり心配なので僕は手早く報告を済ませた。

 報酬を受け取るとさっさとギルドを出てロイゼと合流した。

「お待たせ大丈夫だった?」

「はい、ご迷惑をおかけしてしまってすみません」

「だから別にロイゼが悪いわけじゃないでしょ、気にしないでよ。それと、はい、これどうぞ」

 僕はそう言ってもらった報酬を二等分すると、その半分をロイゼに渡した。

「えっと……これは?」

「え?見ての通り報酬だけど。ほら、きっかり半分ね」

 今日の働きを考えるならもうちょっとロイゼの分を増やした方が妥当なのかもしれないが、そこはスルーしてもらいたい。

「あの……私は奴隷ですので、報酬をいただく必要は無いのですが……」

 え?そうなの?

 でもなぁ、ロイゼはちゃんと働いてくれたし、それなりの対価は払うべきだろ。それはどんな人でも変わらない。

 ちゃんと仕事に見合った報酬を渡す。そうでなければ彼女が働いた意味がない。

「奴隷だとしても欲しい物とかはあるだろ?元々お小遣いはあげるつもりだったし、いいから貰っておいてよ」

 僕は報酬の半分をロイゼに押し付けた。

 この前みたいに何か買い物した時に僕がいないとダメみたいな状況にならないためという意味も含めている。

「でも……それだとオモト様のお金が……」

「別にそれなりにあるから大丈夫。それに基本的に一緒にいるんだから足りなくなったら返してもらえばいいだけでしょ」

 まぁこうは言ったけど、本音はロイゼにもちゃんと自由な行動をして欲しいからだ。

 僕に縛られずに自分の意思で色々な事をやって欲しい。

 その中にはもしかしたら彼女のポテンシャルをより上げるものがあるかもしれない。どこに才能を開花させるものがあるのか分からないのだ。

 でもそのためにはお金が必要になってくる事もあるだろう。そんな時に自分で自由に出来るようにして欲しい。

「一応何かあった時のために持っててもらうだけだからさ、ね?」

「は、はい」

 ロイゼは戸惑いながらもお金を受け取ってくれた。やれやれ、お金渡すのにも一苦労か。

「さてと、それじゃあお昼ご飯にしたいんだけど。ロイゼは何か要望ある?」

「え?私ですか?……オモト様がお食べになるのですからご自分で決めれば良いかと」

「いや、ロイゼも食べるんだからね?」

 だから聞いたわけだしね。それにしてもどうするかな。

 ギルドにも酒場みたいのがあって食事が出来るようにはなっている。

 本来ならそこで済ませようという考えもあるんだけど、それはロイゼがキツいよな。

 周りからジロジロ見られてたんじゃ食事だって喉を通らないだろう。

 そうなると他所のお店で食べることになるんだけど、何かいいところあるかな?

 あ、そうだ。良いところ思いついた。

「今日はその辺で買い食いでもするか。それでどう?」

「オモト様がそれでいいのでしたら」

 よし、決まりだな。早速屋台でも探すかな。

 僕達は食事を買えるような屋台を探して歩き始めた。




 屋台を探し始めてから数分後。

 街の通りの中を歩きながら僕は周りを見渡していた。

 一応布を被っているとはいえ、やはりロイゼは目立ってしまっているのか周りの視線を集めてしまっている。

 昨日ほどではないけど、チラチラとした視線を感じる。まぁ僕が睨み返したらみんな視線を背けたが。

 すると近くで活気よく串焼きを売っている屋台を見つけた。

 お、お昼ご飯にはちょうどいいかもしれないな。

「ロイゼ、あれはどうだ?」

 僕は串焼きの屋台を指差しながらロイゼに尋ねた。

「はい、良いと思いますが」

 ロイゼの返答を聞くと僕は屋台に向かった。

「いらっしゃい」

「串焼きを二本お願いします」

 僕は屋台のおじさんに短く注文すると出来上がるのを待った。

 しばらくして温かそうな串焼きを二本入れた箱を渡された。

「はいよ、お待たせ。百五十バイスね」

「分かりました……はい、これで」

 僕はお金を払うと箱を受け取って屋台から離れた。

「まずはこれでよしっと。次はどうするかな?」

 僕は再び周りを見渡しながらロイゼに尋ねた。

「次……ですか?今買われたのでは?」

「いやいや、お互い串焼き一本じゃ足りないでしょ?色んなお店で買って食べようって事」

「な、なるほど」

 僕はロイゼに説明すると一緒にお店を探した。

 それから僕達はパン屋でサンドイッチと、果物屋でドライフルーツを買った。

「まぁ、お昼ならこんなものかな?」

 僕は買ったものを見ながら言った。僕あんまりお昼食べないし。

「そうですね。しかし、これらはどこで食べるのですか?」

 ロイゼが僕達の買ったものを見て聞いてきた。

 たしかにこれだけのものとなると近くのベンチでってわけにもしかなくなる。

 でも大丈夫、その辺はちゃんと考えてある。むしろこのために買い食いにしたのだ。

「街の中じゃ食べないよ。食べるのは街の外でだ」

 だからすごい良い匂いがするんだけど、食べるのはもうちょっと我慢だ。

「え?」

「ついておいで」

 戸惑っているロイゼを連れて僕は街を出た。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最後の ついておいで のほうがそれっぽいですね
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