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改造人間と奴隷達の居場所  作者: 音数 藻研鬼
第1章 
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第19話 初クエスト

 クエストの申請も終わったので、早速僕達はゴブリン討伐のために森に向かった。

 ギルドでは怖がっていたロイゼも外に出て少し落ち着いたようで、今はもう完全に大丈夫になった。布ももう脱いでいる。

 この辺も何とかしてあげるべきだよなぁ。しばらくはギルドに行く時にあの布着させてあげるか。

 けども冒険者達にロイゼの顔は見られて、その上で布着せたからな。完全に注目される事はもう無いだろう。

 まぁ今回に関しては確実に僕の注意不足だったからな、気をつけないと。

 彼女は良くも悪くもとにかく目立つ。その事をちゃんと頭に入れておこう。

「あ、あの……オモト様……」

 するとロイゼが僕の顔を覗き込みながら言ってきた。

「ん?どうかしたの?」

「その……先ほどは大変申し訳ありませんでした。怒って……ますよね?」

 ロイゼは不安そうな顔をしている。なんだ、まだ気にしてたのか。

「別に怒ってないよ。ロイゼは何も悪いことしてないんだから、君を責めたりはしないよ」

 むしろ謝るのは僕の方だ。ロイゼの事をちゃんと分かってあげれてなかった。

 別にロイゼが自分から目立ちにいっているわけではないのだ。むしろ彼女は控えめな性格と言ってもいい。

 でもやっぱりどうしても見た目がなぁ。気にする人は気にするんだよね。

 気持ちは分からんでもないんだけど、かといってこのままってわけにもね。これじゃロイゼの身が保たない。

 とにかく今は布でどうにかするしかないか。それで無理なら別の方法をすぐに考えないと。

 そんな事を考えているうちに森に到着していた。

 さてと、ゴブリンが出現するのはこの辺りだよね。

「それじゃあロイゼ、今から討伐始めるけどあんまり無理しないでね。ダメなようだったら下がってくれていいからさ」

「は、はい。頑張ります」

 ロイゼがギュッと顔の前で拳を握って答えた。

 なんで今のセリフでその返しになるんだよ。まぁやる気があるのはいい事だけどさ。

 いくら身体能力が高いとはいえ実戦経験ほぼゼロなわけだから、その辺は僕がフォローしてあげよう。とにかく安全第一で。

 さてと、ゴブリンはどこにいるのかな?僕は辺りを見渡した。

 するとここから少し離れた場所にゴブリン達が群れているのがうっすらと見えた。

 見つけた見つけた。全部で六匹か。まあまぁってところだな。

「ロイゼ、ゴブリン見つけたから行くよ」

「はい、分かりました」

 僕はロイゼを連れてゴブリンの所へそっと近づいた。

 どうでもいいっちゃいいんだけど、こうやって指示を出しながら行動をしてしるの地味に面倒だな。一人の時はその必要無かったし。

 これも慣れるしかないよな。仕方ないか。

 ゴブリンの付近まで到着すると僕達はゴブリンの様子を眺めていた。

 全員武器を持っているな。これはちょっと面倒かも。

 とりあえず今日のクエストはロイゼの様子見という意味も含めている。無理はせずに余裕を持って出来るかどうかを確かめたい。

「よし、それじゃあ行こうか。あまり僕から離れないでよ」

 僕はナイフを引き抜いてロイゼに声をかけた。

「はい!」

 ロイゼも返事をすると買ったばかりの剣を引き抜いた。結構様になってるじゃん。やる気は充分か。

 僕達はそれぞれ武器を構えるとゴブリンに向かって突っ込んだ。

 ゴブリンはいきなりの奇襲に対処出来ずに慌てている。

 その隙に僕は二匹倒した。こういうのは出来るだけ早くね。

 まぁほとんどこのナイフの機能頼りだけどね。超音波で大抵のものは一発で斬れるし。後は改造人間としての基礎体力かな。

 さてと残りは四匹、っとその前にロイゼはどうなんだろう?一匹くらいなら倒したかも。


 そう思って隣を見てみると………あれ?ゴブリンが三匹倒れている。


 僕が倒したのとは別、だよな?僕が倒したのは別の所に転がっている。

 何だと思い辺りを見渡すと僕の近くでロイゼとゴブリンの一匹が戦っていた。

 ロイゼは軽やかにゴブリンの攻撃を避けている。

 あれは……すごいな。いい身のこなししてるんじゃないかな?

 ゴブリンの攻撃って結構素早いんだけど、それを苦とする事なく避けている。どうやら勝機を窺っているのかな?

 ロイゼの身のこなしは惚れ惚れするくらいに綺麗だった。よくもまぁあそこまで綺麗に避けるねぇ。

 ロイゼはゴブリンの攻撃を全て避けると首を跳ね飛ばした。うぉぅ、あっさりと終わったなぁ。

 まさか……この倒れてる三匹もロイゼが倒したのか?すごすぎだろ。

 これは心配すること無かったんじゃないか?普通にロイゼは強いよ。何なら単純な戦闘能力なら僕よりも高い気がする。

「あのオモト様、いかがでしたでしょうか?」

 ロイゼは周りに敵がいない事を察すると剣をしまってこっちに戻ってきた。

「えっと…… ロイゼって本当に戦闘経験ゼロ?」

「? まぁ、そうですが……それがどうかしましたか?もしかして私じゃ力不足でしたか?」

 あれ?これがすごいって気付いてない?

「いや、あの、別にそういうわけじゃないんだけどね。本当に経験ゼロなのかなって思って」

 いや正直戦闘経験の少なさを知ってから、マルディアさんの言ってた戦闘能力が高いの結構疑ってたけど、さすがマルディアさんだな。予想以上に戦闘能力高い。

 ゴブリンは全部で六匹、となるとこれで終わりかな。半分以上ロイゼが倒しちゃったよ。しかもこんな短時間で。


「はぁ、これくらいは普通だと思うのですが」


 今一瞬だけど割と本気でロイゼから武器を取り上げるべきかと考えてしまった。

 これもしロイゼが謀反を起こそうとして背後から狙われたらやられそうなんだよな。

 昨日一緒にいて彼女の事をある程度知っていなかったら速攻で武器を取り上げていた気がする。信頼って大切ね。

「その、それはかなり変わってるよ?」

「そうですか………私は森にいた頃ならこれくらいは普通に出来ていましたが」

 マジかよ。凄すぎないか?

「というよりオモト様も充分すごいと思いましたが?あの身体能力は普通に見れるものではありませんよ?」

 褒めてくれるのは嬉しいけど恥ずかしいなぁ。これほぼ改造人間の能力だからな。実力じゃないんですよ。

 たしかにロイゼの身体能力が高いってのはダークエルフならではの元々の特性だとは聞いていたけど、それにしたってな。

 果たしてこれがダークエルフだからこそなのか、それともロイゼが変わってるのか。

「あのさ、他のダークエルフもこんな感じなの?何というか……こう、バンバン動き回れる、みたいな。」

「そうですね………ダークエルフはみんな身体能力高いですから。今考えてみると子供の頃はよく友達と駆けっこしていたんですが、気がつくと置いていってしまう事が何度かあったような………」

 あ、これロイゼが特別みたい。いくらダークエルフでもこれが基準ではないみたいだ。

 でもマルディアさんの話を聞く限り奴隷になってからこの戦闘能力がついたとは思えない。そんな事出来る状態じゃなかったみたいだし。

「ロイゼは何か訓練みたいなものでもしてのた?戦闘訓練、みたいな」

 それならこの強さも納得いくんだけど。

「いえ、そんな事してませんよ。森にいた頃はお父さんの日課について行ったくらいで」

「日課?」

「私のお父さん騎士でして。体力づくりが日課だったんです。それについて行ったりして森の中を走ったり、遊びで剣を振らせてもらったりくらいですが」

 十中八九それだな。

 それにしてもよく子供が大人の騎士のトレーニングについて行けたな。というかお父さんも付き合わせちゃダメだろ。

 とにかくそれでここまでの身体能力が身についたわけだ。

 戦闘経験がゼロでもこれくらいなら持ち前の身体能力で何とかなるって事なのかね。

 これはもしかしなくてもめちゃくちゃいいパーティーメンバーを手に入れてしまったのではないだろうか。

 美人でスタイルも良くて礼儀正しい。しかもクエストになればとんでもなく強いって、よくこんな子が僕の奴隷になってくれたものだ。

 これで人を怖がるところがなかったらとんでもない値段になってたんだろうなぁ。それが彼女にとっていい事かどうかは置いておいてね。

 ってここまで強いなら前の主人の暴行も何とか対処出来たんじゃないか?

 術式の事もあるし、体格差はあったかもしれないけどロイゼならぶちのめせそうなんだけど。

 僕がロイゼの身体能力持ってたら速攻で主人ぶちのめして逃げ出してるね。

 まぁでもロイゼ本人に自分の能力の自覚が無かったからな。

 これが普通と思ってて、そもそも抵抗する気すら起きなかったのか。

 マルディアさんの話を聞いてた時からすごいとは思ってたけど、これは予想外だ。まさかここまでとは。

 これなら僕なんかといなくても、僕から逃げて一人で充分冒険者としてやっていけそうなのに。

 僕は思わずクスッと笑ってしまった。

 ………本当にもったいない子だな。こんなにすごい子なのに。でもなぁ……

「あの、私の実力はいかがだったでしょうか?」

 ロイゼが僕の表情を窺うように覗き込んでくる。

「上出来。これからもよろしく頼むよ」

「はい!」

 僕が答えるとロイゼは元気よく返事をした。

 こんな子、僕なんかじゃとても釣り合わないくらいの子だ。

 でもだからといって、こんなところ見せられたらもう簡単には手放せないよね。

 最近投稿し直すこと多くてすみません。 

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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