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改造人間と奴隷達の居場所  作者: 音数 藻研鬼
第1章 
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第1話 能力

 僕のいた施設はそこそこ大きい所で出口を探すだけでも精一杯だった。

 自分の日本人としての記憶が戻った僕は代わりに改造されてからの事をぼんやりとしか分からなかった。

 だから自分の力のコントロールも満足に出来ず力を無茶苦茶に使って逃げた。

 とにかくなんとかして自分の改造されてからの記憶を掘り起こしてみた。

 情報過多で吐きそうなのを堪えて自分の使っていた武器や施設内にあった金品などを回収し施設の外の森に抜け出した。

 しかし向こうも施設を出たくらいで追跡を諦めるほどのヤツらでもなかった。

 追手は僕と同じような改造人間で、パニックになっていた僕は逃げるのも苦しくなってきた。

 そして今に至る。

 自分の意思でここまで走れたのは初めてだった。

 僕はその身体能力を使い敵を錯乱しながら逃げているが追手は諦めない。

 それにしてもヤバいな。このまま逃げ切るってのはちょっと非現実的かも。

 こうなったら仕方ない。彼らを撃退するしか逃げ道はないか。

 一応僕が使っていた武器も回収してきたが使い方がはっきりと思い出せない。そうなると自分の力を使うしかない。

 しかし無くした記憶がそんな簡単に思い出せるわけがない。

 でも本能は全て覚えていた。だからこそ体が動いたのだろう。

 息を大きく吸い込むと体の中に感じた事のない (本当はあるはず)エネルギーが流れるのを感じた。

 僕はそのエネルギーを巻き込むような感じで息を吐いた。

 その瞬間僕の口から炎が勢いよく放たれた。

 空を飛んでいた敵は炎に包まれて焼け落ちていった。

 しかしそれを避けてきた怪物が僕に迫ってきた。

 すると僕の中の生存本能が働いたのか、腕がボコボコと変化を始めた。

 肘から手にかけての体毛が長くなり腕は一回り大きくなった。

 その腕はまるで獰猛な獣のそれだ。

 爪は大きく鋭いものへと変化し、腕からはヒレのような刃物が飛び出してきた。

 僕はその場で止まると敵がこっちに追いつくまで待った。

 そして飛びかかってきた敵を全てその爪とヒレで切り裂いた。

 向こうも抵抗しようとはしていたらしいが、どうやら基礎スペックは僕の方が上のようだ。

 僕の爪はその抵抗すらも切り伏せた。とんでもない切れ味だ。

 襲ってくる敵を全て切り裂くと辺りを見渡した。

 追手はもういないみたいだな。とりあえず一安心……なんて言ってる暇はない。

 僕はきっとこれから死ぬまでヤツらに追われる事になるだろう。

 早いとこここから離れた場所に行って身を隠さないと。

 日本のようにネットがないこの世界なら、ちゃんと身を隠せば追われる事は減るはずだ。

 僕は近くに大きな木があるのが見えた。あそこからならこの辺を一望出来る。

 僕は木の幹に爪をしまった手を這わせるとそのまま昆虫やヤモリのように木を登っていった。

 木のテッペンまで着くと僕は再び辺りを見渡した。

 今度はさっきとは違い数キロメートル先まで見えるようにしている。

 するとそこまで遠くない所に海があるのが見えた。ただ走って行くにはちょっと遠いな。

 僕は腕を元に戻すと背中に力を集中させた。

 今度は背中の肩甲骨辺りがボコボコと変化し始めた。

 少しして背中の肉の一部が服を突き破って飛び出してきた。

 その肉の組織は変形し羽のようになった。僕は羽を羽ばたかせると木を飛び出した。

 しばらく飛んで目的の海まで辿り着いた僕は羽を体の中にしまった。

 飛ぶ事が出来なくなった僕はそのまま海へ一直線に落ちていった。

 僕は海の中に入ると真っ直ぐに進んで行った。

 海に入ってから二十分ほど、僕は一回も息継ぎしていない。というか水中で息をしている。もちろん目も開けるしよく見える。

 これら全てが改造された事で手に入れた僕の新しい力だ。

 僕はあらゆる生物の力を使えるように改造されたのだ。

 日本にもいるようなものはもちろん、この異世界にしかいないような生物の力までも使うことが出来る。

 さっきの炎のブレスはこの世界のドラゴンの力だ。

 当然こんなものだけではなく、これら以外にも様々な能力を植え付けられている。

 こうしている間にもそれらのことがだんだんと思い出されていく。

 そろそろ本当に気持ち悪くなってきた。

 そう思っているとガツンと何かにぶつかった。

 何だ?と思い前を見てみるとそれは岩だった。

 どうやら陸地に着いたみたいだな。思ったより早かったな。

 僕は岩を登っていった。

 近くに船が見えるし、どうやらここは港のようだ。

 追手は……いないな。

 その安心感からかその場に崩れ落ちそうになるが、そういうわけにはいかない。

 こんな所にいては周りから怪しまれてしまう。

 すると少し遠くに街が見えた。歩けば今日中には辿り着く。

 追手から隠れるなら、こういう街の方がいいかもしれない。

 そのためには、まずこの格好だ。

 僕の今の格好はボロボロのシャツとズボン。燻んだ紫のフードのついたコートだ。背中には大きな荷物を背負っている。

 とてもあぁいう街に馴染める格好とは思えない。

 街の人達の格好はもっとラフだ。これだと目立ってしまう。

 けどそんな服持ってないからな。

 その辺に何か衣服の代わりのもの落ちてたりしないかな?

 そう思った僕は辺りを見てみた。海岸だからか色んなものが落ちている。

 しばらくして大きめの白い布が落ちているのが見えた。

 拾って広げてみると結構な大きさで僕の体をすっぽりと隠せそうだ。

 試しに体に巻いてみると予想通りピッタリだった。ちょっと汚れてるけど気にしない気にしない。

 街の人達と同じとはいかないが、これならどこかの旅人みたいな感じでいけそうな気がする。

「………行こう」

 今にも倒れそうな体に鞭打って、僕は歩き出した。

 しばらく歩いていくと僕は街に到着した。検問では旅人だと言って通してもらった。

 多くの人が行き交っていてたくさんの話し声が聴こえる。

 活気があって賑やかはところだな。日本でいうところの商店街みたいだ。

 しかし目に映るもの全てが日本とは違う。あまりの刺激にクラクラする。

 とにかく………どこか宿を探さないと。

 何度も倒れそうになりながら、僕はようやく一軒の宿屋を見つけた。

 中に入ると若い女性がカウンターで出迎えてくれる。

「『木の葉亭』へようこそ。宿泊ですか、お食事ですか?」

「しばらく………止めて欲しい、のですが。一月ほど」

「了解。一人部屋でいいなら、500バイスね」

 バイスはこの世界の通貨だ。地球とは違い、お金のある国の通貨は大体これらしい。

 襲い掛かる疲れと久しぶりに人と話したことで少しだけクラッとするが、何とかハイルセンスから盗み出してきたお金の中から500バイスを支払う。

「はい、それじゃあこれ部屋の鍵、102号室ね。食事は朝夜の二回、カンテラはそこで、体拭きたくなったら、お湯はその奥から汲んで持って行って」

「は、はい………」

 頷いたものの、今は食事をする気も湯浴みをする気も起きない。

 言われた部屋に入ると、目の前にあるベッドに体を投げ出した。

 全身の力が抜けて、意識がどんどん遠のいていく。

 窓の外の様子を見れば、日本とは違う異世界の光景が広がっている。

 今だけでも僕は自由の身だ。

 これから僕はアイツらに追われることになるだろう。

 けどまた捕まるなんてゴメンだ。

 悪い事をしたくないというよりこれ以上自分の自由を奪われたくない。

 意地でも逃げ切ってやる。それが無理ならハイルセンスを壊滅させる。この力ならそれが出来るかもしれない。

 僕の体をこんなにして、その上好き勝手に使ってたんだ。壊滅させたってバチは当たらないだろ。

 とにもかくにもまずは……この世界で生きてみるか。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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