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改造人間と奴隷達の居場所  作者: 音数 藻研鬼
第1章 
12/86

第11話 姿

「それと僕が万が一事故とかで死んでしまった場合ロイゼはどうなるんですか?」

 一つ気になった事があったのでマルディアさんに聞いてみた。

「あー、そういえばその手続きもしないとだっけね。忘れるところだったわ」

 おい、しっかりしてくれよ。それ忘れちゃマズいヤツだろ。

「その手続きなんだけどね、いくつか種類あるけどどれがいい?」

 そう言ってマルディアさんが挙げた選択肢はこれらだ。

 ①奴隷から解放

 ②別の誰かに譲渡

 ③殺処分

 ④奴隷商人に売る

 以上だ。

 とりあえず③はあり得ないな。自分で勝手に買っておいて自分が死んだら奴隷も殺すってのはいくらなんでも酷すぎる。

 後々面倒が無いようにってのもあるんだろうけど、それならちゃんと準備していればいいだけの話だ。

 ②もなぁ。③よりかはマシだけどそれをやると生活環境とかも変わってロイゼも大変になってしまうだろう。

 というか②と④は④が途中に奴隷商人に売られるというひと工程あるだけで、結果としてはあまり変わらないのでは?

 結局最終的には新しいご主人様に引き取られるってわけだろ?

 けどそれは④の場合他の人に買われたらの話だ。

 他の人に買われなかったら彼女は商館で生涯を終える事になる。

 それはいいのか悪いのか。少なくともここに売られた場合は僕的にはいいと思える。しっかりと世話されてるわけだし。

 ②の場合第一に誰かに譲渡するにしてもその譲渡する誰かってのが僕にはいない。まだそこまで仲良くなった人いないんだもん。

 この世界でそこまで人と接してないし、それにいたとしても彼女を誰かに渡すのもなんか嫌だ。なんかモヤモヤする。

 でも彼女が僕が死んだらこの人に引き取ってもらいたいとか言う人がこれから現れるかもしれない。

 そうなった時の事を考えれば②の選択肢もアリだ。

 けど自由にする事を考えるならとりあえず①だな。

 というか自分で聞いておいてアレだけどハイルセンスにやられない限り、僕が死ぬ事なんてそうそう無いと思うんだよね。

 こんな体になっちゃったからな。おそらく馬車で轢かれたり、剣で刺されたくらいじゃ死なないと思う。

 まぁそのハイルセンスにやられる可能性ってのが一番彼女にとっても危険なわけだけど。

 まぁそうだとしてもやっぱりいつかは解放するって感じなのかな?

 どれくらいになるのか知らないけど僕の財産をあげれば生活には困らないだろう。

 うーん、迷うなぁ。

 ダメだ、この選択は僕にはまだ早い。ちゃんとロイゼと話し合わないとだな。

「あの、この選択って今しないとダメですかね?出来ればもう少し考えてから決断したいんですが」

「いいわよ、そういう人も少ないけどいるし。けどそんなに迷う?後で幾らでも変更出来るのよ?」

 へぇ、そうなんだ。でもやっぱり今は決められないな。

 僕はこの世界の事を知らなさすぎる。この世界の勝手や人を知らない事にはすぐには決められない。

 どう選択するのがロイゼにとって一番いいのか。それはこの世界に来て体感的に数週間の僕が分かる事じゃない。

 そしてそれ以上に……

「僕が今決めようとしてるのは僕の人生じゃなくてロイゼの人生なんです。それを彼女に何の相談も無しに決められませんよ。彼女の人生は彼女が決めないと。僕の一存で勝手に決めていい事じゃない気がするんです」

 いくら位が上だからといって人の人生を僕がどうこう決めるのは間違ってる。

 ちゃんと彼女の意見を聞いてそれを考慮してあげるべきだ。結局は彼女の人生なわけだしさ。

 それにいくら後で変えられるといっても、人の人生をコロコロ変えるのも嫌な話だ。

「別に君の一存で決めてもらって構わないんだけどね……。まぁいいわ。決まったらまたここに来て教えてちょうだい」

「はい、分かりました」

 とりあえずあんまり長引かせるのもマルディアさんに悪いし、この世界で僕がいつ死ぬかも分からないからロイゼには早めに聞いておこう。

 っと……そういえば。

「あの、その対処って僕が生きている間にも出来ますか?」

「君が生きている間にロイゼを解放したり譲渡出来るかって事?まぁ出来るけど、殺処分や売るのは見た事あるけどそれ以外の対処は見た事ないよ?」

 一応出来るのね。それはよかった。

 もし生活が安定してパーティーメンバーがいらなくなったらその時は彼女を解放してあげよう。

 今のところ完全に僕の事情で彼女を危険な目に遭わせることになるからな。しかもそれを分かっていて。

 いつかハイルセンスが無くなればまだいいけど、あの組織がそんな簡単にやられるとは思えない。

 となるとこれから一生追われると考えておいた方がいいわけで。

 そうなると、いくらなんでもそのままずっとってわけにはねぇ。

 それにハイルセンスに追われていよいよ危険になっても一緒ってわけにもいかないからな。いつでも解放出来るようにはしておきたい。

 彼女にもやりたい事くらいあるだろうし、してもらう事も無いのに僕のもとに縛り付けておくのもかわいそうだ。

 僕はそう決めてロイゼを待った。




 しばらくしてロイゼが紙袋を持って戻ってきた。

「お、お待たせしました」

 まだ緊張してるんだよなぁ。まぁ僕もだけどさ。

「大丈夫だよ。それじゃあ行こうか」

「はい」

 僕達は階段を降りて出口へと向かった。

 マルディアさんもついて来て見送ってくれるようだ。

「今回はウチの奴隷を買ってくれてありがとうね。まだ欲しくなったらいつでも来て」

「は、はぁ」

 僕は思わず苦笑いして返した。

 未だに奴隷に対する先入観があるからか、いつでも奴隷を買いに来てと言われると悪いことをしているように思ってしまう。

 この辺りも慣れていかないとなぁ。

 そんな事を思いながら僕とロイゼは奴隷商館を後にした。




 奴隷商館を出てから数分、特に話すこともなく僕達は街の通りを歩いている。

 あの、すごく気まずいんですけど。どうしようかな。

 まずロイゼが何も話そうとしないからずっと無言なんだよ

 かといってこっちから話せるほど僕達は仲良くなってないし、僕にそこまでのコミュニケーション能力はない。

 というわけで彼女の会話待ちなんだけど、話そうとしてくれないんだよねぇ。

 あとやっぱり彼女は周りから目立つ。

 奴隷だってのもor(だって言うのも)もちろん目立つ要因なんだけど、それ以上にやっぱり見た目かな。

 彼女はダークエルフだから人間とは肌の色が違うし耳は尖っている。

 仕方ないとはいえ、どうしても周りから浮いてしまっている。

 だから街の人からジロジロと見られてしまっているのだ。

 僕がギロッと睨むとみんな目を逸らすんだけど、それでも見られてしまう。勝手に見るなよな。

 ロイゼもその事を分かっているのか恥ずかしそうに俯いている。

 しかも僕に迷惑をかけないようにしているのか僕から距離をとっている。

 声をかけてもさ……

「なぁ、もうちょっとこっち来ない?」

「いえ、私のせいで迷惑をかけるわけには……」

 これである。別に気にしないんだけどなぁ。人から変な目で見られるのは慣れてるし。

 けど別に悪意があってやってるわけじゃなさそうだから無理矢理ってのもなんかね。

 それもさっきから会話がない理由の一つだ。精神的にも物理的にも距離があるんだよね。

 精神面は仕方ないにしても物理面はなんとかしてあげたいな。

 使わなければベストだと思ってたけど、使った方がいいのかな。仕方ない。

「ねぇ、ちょっとこっち来てくれない?」

「え?は、はい」

 僕はロイゼと一緒に裏路地へと向かった。

「はいこれ。よかったら使って」

 僕は荷物から取り出したものをロイゼに差し出した。

 それは僕がこの街に来た時に使っていた白い布だ。

 彼女を買おうとしてからこういう事を考えてずっと持っていたのだ。

「え……で、でもこれは……」

「君だって周りからジロジロ見られるのは嫌だろ?君のために持って来たものだから気にしないで」

 僕は別に気にしないけど、彼女が周りの視線が気になるなら使わせてあげようと思っていたのだ。

 彼女の今の格好はボロ服一枚だ。これからその格好のままは嫌だろう。

 というかこの格好だと僕が目のやり場に困るんだよね。ジロジロと見てたら失礼だし。

 これなら防寒具としても姿を隠すものとしても使える。彼女にはちょうどいい。

 僕もハイルセンスの時の戦闘服だけど、上からバレないようにマントのようなものを羽織っている。

 最近買ったものだけど、これなら目立たない。

 それにロイゼが周りからジロジロ見られてるのちょっと嫌なんだよ。

「で、でも……」

「もういいから、はい」

 まだ断ろうとするロイゼを無視して僕は布をロイゼに着せてあげた。

 顔も出来るだけ隠れるようにして……っと、これでいいだろ。これなら目立たない。

「うん、これでいいね」

「あ、ありがとう、ございます」

 ロイゼはまごつきながらもお礼を言ってきた。だからロイゼのために持ってきたんだから気にしないの。

 なんか違和感があるなぁ。これまで誰かに遜られた事なんてなかったし。すごいムズムズする。

 まぁこれはこれで目立つかもしれないけど、さっきよりかは大丈夫だろ。

 姿を隠したロイゼを見て僕は一息ついた。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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