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改造人間と奴隷達の居場所  作者: 音数 藻研鬼
第1章 
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第10話 購入

 僕はロイゼの答えを聞いて確認した。

「……本当にいいのか?」

「はい、自分でしっかりと考えて出した答えです」

 彼女は真っ直ぐ僕を見ていた。その目に迷いは無かった。どうやら本心らしい。

 それなら僕のやるべき事はそれに応えるだけだ。

「分かった。これからよろしくね」

「はい、これからよろしくお願いします」

 ロイゼはそう言って再び頭を下げた。

「そういう事です。マルディアさん、僕はこの子を買います」

「分かったわ。この前言った通り彼女の金額は六十五万バイスね」

 僕は財布から六十五万バイス取り出すとマルディアさんに渡した。

 あー遂に僕は人身売買をするのか。人じゃなくてダークエルフなんだけど。

 悪い事じゃないと分かってても大丈夫なのかと思ってしまう。

「確かに。それじゃこっちに来て」

 僕とロイゼはマルディアさんに連れられて商館の二階に案内された。

 そこは薄暗く応接室とはまた違う雰囲気のある場所で奥に何か色んな器具が置いてある。

 まさかとは思うけど拷問部屋とかじゃないよな?なんか怖そうなものもあるんだけど。

 まぁそんな所に連れて行く理由もないか。でもだったらここはどこだ?

「あの、ここって何ですか?」

「ここは普通の商館でいうところの会計場所ね。よく拷問部屋とか言われちゃうのよ」

 そりゃ思うよ。こんな薄暗くて色々なよく分からないものが置いてあれば。

 それにしても会計場所ね。とてもそんな風には見えないんだけどな。

 部屋の奥に着くと、マルディアさんはこっちを振り返った。

「そういえば君この子の服どうする?寝着とかならある程度のものならこっちで揃えてあげられるよ?もちろんこの前言った金額とは別料金になるけど。大体五千バイスくらいよ」

 へぇ、そこまでしてくれるのか。でも何で寝着だけ?

「どうする?君が決めていいよ」

 僕はロイゼの方を見て聞いた。彼女のものだし彼女が選んだ方がいいだろ。

「そうですね。……オモト様の所持金で買うのですから私なんかが決めていいものでは無いかと……」

 えー、まぁでもそれもそうか。彼女僕の所持金知らないんだった。

「うーん、それじゃ揃えてください」

 もう夕方だから今日は買う時間もない。だからといって夜もその薄着一枚は嫌だろうし。

「うん、ねぇこの子の寝着を見繕ってあげて」

 マルディアさんは近くにいた店員に声をかけてロイゼをついて行かせた。

「よし、それじゃあの子が服選んでる間先に手続き済ませちゃおっか」

 そう言うとマルディアさんは近くに置いてあった何かの器具を手に取った。

 そして先端に付いているダイヤルのようなものを回した。

 何かパッと見た感じ焼きごてみたいなんだけど。何だこれ?

「はい、腕出して」

 そう言われて僕は咄嗟に腕を隠した。そんな怖そうなもの見せられて素直に腕を出すか!

「あのね、別にこれは痛いものじゃないよ。奴隷の手続きのために印をつけるだけ」

 印をつけるって腕にか?刺青みたいに感じるんだけど。

 まぁここで拒絶しても仕方ない。僕は素直に右腕を出した。

 マルディアさんは持っていた器具の先端を僕の腕にポンと当てた。

 すると僕の右腕に蛇の模様のようなものが描かれていた。ハンコみたいだな。

 その模様は僕の右腕にスッと染み込んでいった。何だこれ?

 試しに擦ってみたけど消えない。すごいな、見た感じ刺青にしか見えないけど。

 なんか数字が書いてあるな。

「これは君がこの商館でロイゼを買ったっていう証。その数字が彼女の商品番号ね」

 なるほど、さっき回してたのはその番号か。ダイヤルで番号を変えてるのね。

「はい、これでロイゼは正式に君のものよ。それじゃ改めて奴隷についていくつか説明するわね」

 そう言ってマルディアさんは一枚の紙を手渡してきた。

 これ見ながら聞けって事か。

 そこには奴隷に関しての色々な制約とかが書かれていた。

「まず奴隷の主人は奴隷にある程度住む場所や食事を与える事。それと奴隷の税金を払うのも主人の役目だよ」

 なるほど、そこはしっかりとしてるんだな。何でもアリってわけではないらしい。

「ん?奴隷って物って判断ですよね?税金とか発生するんですか?」

 酒税とかとはまた別のものの事だろうし、それなら一応とはいえ物カウントの奴隷に税金っておかしくないか?

「あー、そこは難しいところなんだけどね。世間体的には物でも世間のシステム的には人として捉えられてるから税金は発生するのよ」

「つまり人間として好都合の時は物扱い。都合の悪い時は人扱いって事ですか」

「君言いにくい事をはっきり言ったわね」

 でもそういう事でしょ?

 この紙見て思ったけど法律の事も奴隷が法律を犯してもそれは奴隷の責任で主人はそこまでキツい罰は受けないようになっている。

 逆に奴隷が被害者になった場合、罰金などは主人に行くようになっている。

 なんかあまりいいとは言えないんだけど。

「私も個人的に言いたい事は山ほどあるんだけどこれも商売だからね。これに歯向かうわけにもいかないのよ」

 商人ってのも面倒なものだな。

 でも逆に言えばこれだけ自由に出来るから結構な値段になるのかも。

「前にも言ったけど奴隷を買うのはほとんどが上流階級の人間。そして法律を作るのは貴族達。ここまで言えば分かるでしょ?」

「なるほど、大体分かりました」

 自分達が万一にも不利益になるような法律を作ったりはしないって事か。

「奴隷の用途は色々だから規制がしづらいのよ。それに物扱いだし。そこ突かれちゃったら何も言えないの」

 たしかにそれだと規制はしにくいよな。『これは私の物だ。どう使おうと私の勝手だ』とか言われたら何も言えない。

 しかも上流階級の人間が作ったものなら周りも簡単に文句は言えない。

 何より周りにはあまり関係のない法律だ。そもそも文句のある人自体がいないんだろうな。

「だから君にとって枷になるものはそんなに無いはずよ」

「そうですね。これくらいなら問題ないです」

 僕は紙を見直して言った。基本的に最低限の住む場所と食事を与えてやればあとは何しても大丈夫みたいな感じだ。

 大雑把で楽と言えば楽だけど本当に人権とか無いんだな。

 せめて僕はあの子には不快な思いはさせないようにしよう。

 僕はそう心に決めた。

 まぁ元々僕はここには奴隷を探しに来たわけではない。

 奴隷はあくまでも手段であって本当の目的はパーティーメンバーだ。

 しっかりと戦ってくれるならあとは自由にさせるつもりだし。

 その戦うにしたってそこまでハードな事を手伝わさせるつもりはない。

 ある程度生活が安定するくらいの収入が得られる仕事が出来ればのんびりしてたいんだよ。

 ハイルセンスに見つかればそれも難しいかもしれないけどさ。

「まぁせっかくあんな綺麗な子を手に入れたんだから夜はせいぜい可愛がってあげな」

 マルディアさんは僕にスッと近づいてきてそっと囁いた。

 フゥッとマルディアさんの吐息が僕の耳に触れて、耳から体全体がゾクゾクしてきて思わず飛び上がってしまった。

「だ、だから僕はパーティーメンバーが欲しいんです!奴隷はあくまでも手段です!そんな事するわけないでしょ!」

 僕は場を気にせず叫んでしまった。

「あら、勿体ないわね。あの子くらい綺麗なら楽しめそうなのに」

 そういう問題じゃない!

 大体会って間もない女の子にアレコレするのはちょっとマズいと思うし。

 それに彼女は多少慣れてくれたとはいえまだ僕に怯えている。

 そりゃそうだ会ってまだ一週間しか経っていない。さらに会った回数だけいえば二回だけだ。

 たったそれだけで彼女の僕に対する人見知りが治るわけがない。

 そんな状況でこれ以上怖がらせて精神的に追い詰めてしまったら冒険者の戦いに支障が出る。

 それでは本末転倒だ。僕がロイゼに求めているのはパーティーメンバーとしての戦闘力だ。そこに支障が出るのは困る。

 まぁ……もちろん、そういう事が出来るなら嬉しくないわけはないんだけどさ……。

 マルディアさんも言っていた通りロイゼは……綺麗だし、そういう事は楽しめると思う。

 それでも今僕にとって大事なのは冒険者としての活動の安定化だ。

 お楽しみをするのはその後でもいいだろ。いやそれでもやるつもりもないけど。

 いくら魅力的でも立場を利用してそういう事をするのは気が引けるし。

 まぁ……今のところはそのつもり、だけどね。

「そういえば気になったんですけど、万が一奴隷が抵抗したりしたらどう対処すればいいんですか?」

 無いとは思うけど万が一ロイゼが僕を殺そうとしたらどうすればいいんだ?

 一応首輪はついてるみたいだけど、これだけで押さえるのは無理だろ。

 これまでの話を聞く限りロイゼの戦闘力は僕より上だろう。というか上じゃないと困るんだけどさ。

 そうなると彼女が僕に牙を剥いてきた時に僕は間違いなく対抗出来ない。

 彼女に限らず戦闘奴隷なんてものもあるんだから、主人が奴隷より戦闘力が下なのはよくある事だと思うんだけど。

「本人の力で止められればそれが一番だし、こっちも楽なんだけど残念ながらそうはいかない時がほとんどだからね。そういう時はさっきつけた印を使えばいいわよ」

 印?この腕のヤツか?

「これでどうやって?」

「実は彼女にもそれと同じ印がついてるの。そしてそれと君に描かれている印は繋がっている。君が強く命じるとその印から電流が流れるようになってるからそれで対処出来るわ」

 そんなカラクリがあったのか。ただの領収書代わりかと思ってた。

「ちなみにそれで抑えきれなかった場合は?」

「威力は結構あるからその辺は大丈夫だと思うよ。完全に抑えられなくても弱らせる事は出来るでしょ?そのうちに対処出来るはずだから」

 なるほど、それなら大丈夫なのかな?

 もっともロイゼはその心配が無さそうだから気にするだけ無駄だな。

 会ったのはほんの一週間前だけど、彼女はなんか信用出来る。

 僕は直感でそう思った。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

 これ以外の小説も投稿させてもらっていますのでぜひ読んでください。

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