第68話:チョーシ
転生者ヒロイン、フィオナ・カノンの目的は一つ!
悪役令嬢ヴァネッサ・ノワールを死の運命から救って、自分も死なない道を探す事!
その為には運命だって覆して見せる!
強制力で変貌してしまった攻略対象者や転生者たちのDEAD ENDフラグから、
ヴァネッサ様を護り切って目指すは黒い三連星の四番目の星!
ついに悪役令嬢の傘下に加わったフィオナ。
このまま安定のルートに行けるのかそれとも……。
少年少女がそれぞれの考えで近付き、離れる。
恋の魔法をは何を成す、愛の呪いは何を成す。
運命を覆せ!!!
恋愛要素多めの第四章の幕が上がります。
休日を学外で過ごす場合、最終日の夜には寮に戻ってしまうのが、学院生活に慣れた二年生三年生の中では一般的である。
いつもより少しだけ早く起きるだけ。
王都の端っこなので学院までの道のりは意外と遠い。
この二つの要素にテンションを維持できる元気さのある者だけが『朝帰り』を許される。
三年生ともなるとほぼ朝帰りはしない、老け込んでるのが早いというわけではなくて三年生にもなると卒業後の進路なども明確になってくる頃なので、一日たりとも遅れるわけにはいかないとより必死に学院にしがみつくのだ。
恋人持ちが二人で普通に朝帰りする事もあるので、休息日明けは男子寮からも女子寮からも有志が門前で朝帰りを見張る。
女といたら……男といたら――ギルティ。
なのだけれど……この休息日明けの正門前の見張り、がきっかけで……などという三千世界の果てまでギルティなカップルもいたりする。
『学内恋愛大いに結構、ほどほどにな』
というわけで休息日明けの王都の朝には学院制服姿のカップルがちらほらと散見されるわけなのだ。
フィオナとディランも仲良く並んで歩いていればカップルにしか見えないだろう。
タイの色が新入生を意味する藍色というのはなかなか珍しくて、同じように学院に向かっている上級生や同級生から少し奇異の目では見られる。
そして驚きに目を丸くする。
フィオナはそういう視線を浴びる側になったのだ。
――ヴァネッサ派閥親衛隊クオンリィ直属腕章。
当たり前だけれど原作ゲームでも聞いたこともなかった、完全に≪前世の記憶≫から逸脱したアイテム。
「しっかしお前が"親衛隊"ねぇ……」
「なにさ?」
「いや、ヴァネッサ様だっけ、あのすげーボイン」
(……乳神信仰巨乳派の異端者めが)
「……クオンにチクるよ?」
「殺す気か……いや、どうやってアレと仲良くなったんだよお前」
「ヴァネッサ様と?」
「いんや、ザイツ嬢」
「あー…………実はあたしもよくわかんない」
そう、よくわからないが気に入られているのだ、この事がフィオナにとっては一抹の不安ではある。
とは言え、今更クオンと距離を置かなければならないとなったならば、そうしないでいい道を必死で探す所存でもある。
だって楽しいのだ、学院生活が。
ギギがいて、リオネッサがいて、クオンがいて、フレイもまぁよかろう?何様?フィオナちゃん。
少なくとも腕章をくれたという事はクオンもまた悪しからず思ってくれている筈。
そういえば触れば魔導具の効果が正確にわかるのも≪前世の記憶≫のおかげかと改めて思いながら、左腕の腕章にそっと手を触れさせる。
魔導具:ヴァネッサ派閥親衛隊白銀直属章
魔法学院制服のタイと同様の[保護]強化を重ねられる。※西部方面軍軍事機密
(ヤバイ)
何がヤバイって西部方面軍軍事機密が完全にアウトである。
(そういえば、魔導具と言えばクオンの"魔鞘・雷斬"も触れば判るのかな?原作ゲームだと攻撃とクリティカル率と即死率にいい補正があったけど)
だからこそオーギュストがコロコロ転がって"剣聖 (笑)"なんて言われる事になってしまったわけだ。
もっとも悪役令嬢ものの流れの中でオーギュストはvsクオンリィで即死している。
ハートに100万ボルト、恋の雷魔法でバリバリ。
手籠めにして「お前がママになるんだよ!」したいらしいのだけれど、カウンター"抜刀術"でohするとしか思えない、物理的に。
物理的?違う、刃傷沙汰的にだった。
アヴェ・サダのようなしっとりしたタイプではなくサダvsカヤのような問答無用であろう。
どっちも嫌だ?
(あっはっは!クオンにまともな恋愛なんて無理無理カタツムリ!)
ぴょこっ
【残弾数:6→5】
(ああああああああああああああああ!?)
むしろ一つで済んでよかったと思うべきである。
ヒロインに転生してコイツぁ逆ハーレムでうっはうはですね?と頑張って入学してみたらまさかの悪役令嬢もの。
思った以上に威風堂々とした悪役令嬢に魅せられて、ヒロインor悪役令嬢の構図を覆そうと思い立ち。
何だかとんとん拍子で悪役令嬢サイドにパイル〇ーオンできました、ヒャッフゥ。
そう……。
【転生者】フィオナ・カノン
本日は最高潮に"調子"くれていた。




