表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋は魔法で愛は呪い  作者: ATワイト
第三章
48/175

第45話:次は必ず

 殺った!そりゃそうだ、確かにジェシカは開幕時点での一年最強……でも、成長した【ヒロインパーティ】に六対一の戦いを挑み苦戦させてくるクオンリィ・ザイツ~"魔鞘・雷斬"装備~は格が違う、本体性能もなんだか『世界の流れ』のせいで激しく上がっていそうだ。


「クオン!何てことを!」

「言ったハズだクラスメイト、ヴァネ





 ……




(いきなり何?白い世界?)


「もしかしてと思ったけれどマジで"魔鞘・雷斬"じゃん!なんで?また?どうなってるの!?私こんなの知らない!!」


 快活な声が悲痛に木霊していた。





 ……




「――っは!」

「なんだ?ラスク、フィオナが呼んでますよ?」


 呼んでないからその包みの中の匂いでわかる大好きなヤツを!!と後ろ足立ちになっておねだりするラスクの額をよしよしと撫でながら不思議そうに紫の単眼をフィオナに向けるクオン。


「どうかしましたか?」

「う、ううん!?」


 それはついさっきのラスクがラスクを食べる強烈な共食いシーンの直前であった、【巻き戻って】いる。

 フィオナは瞬時理解した、≪前世の記憶≫は私だけのチートっぽいけれど。


 ではジェシカは ど ん な チ ー ト を 持 っ て い る?


 考えつくには少し時間が足らなかった、【転生チート特典】が≪前世の記憶≫だけだと誰が言った。


(ジェシカには()()()()()()()()()()()ッッ!!)


 道理で毎度言動が大胆過ぎるとフィオナは思った、しかし……。


(そしてあたしの≪前世の記憶≫は!おそらくあたしが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!今起こっている現象はそういう事!?)


 ふとフィオナは『ジェシカ達がやってきた方角』を水色の瞳で睨み付けた。


 ヴァネッサに類が及ぶ可能性、しかも初手がクロスボウでの一射、クオンが抜き打ち払わなければ眼帯に追加でいいアクセサリが生えていた事だろう。


 そんなもの撃ち込まれたクオンは立ち上がった時点から殺る気だったに違いない。


 そしてクオンとノエルを指して【黒い三連星】と来ればド変態ストーカーがイツモキミヲミテイルヨと正面切って犯行を自白してくるようなもの、とりあえず殺っとくだろう。


 今回は巻き戻った、巻き戻ったけれども、それを知っているのは≪前世の記憶≫を持つフィオナだけだ。


 次同じことが起これば、膝を揃えて座り込み、ラスクに手ずからラスクを授けてるこの眼帯女はまた斬るだろう。

 斬られて斬られて巻き戻りを繰り返して。


 ジェシカはいつかクオンを撃破するつもりかもしれない……。



 結局、そのあと……ジェシカ達が現れる気配はなかった。



 ◆◇◆



 ジェシカは自分の前世の記憶に気付いた時――。


『次は必ず』と、そう思った。


 レイモンド商会の娘に生まれ、蝶よ花よと育てられた、勉強も武術も完璧だった。

 そして……あの日。

 ヴァネッサから深夜の学院を囲む外壁の上に呼び出されたジェシカは、戦闘準備をしてからそれに応じた。


 あれはまだ魔王復活が始まる前の事だった、いつも通りの課外活動班での対魔物修練に出発したジェシカ達の前に、いつもとは様子の違うクオンリィ・ザイツが現れたのだ。


「……今度こそ……次は必ず……必ず……」

「クオン?」


 顔の半分を覆う前髪の隙間から僅かに覗く荒れた唇から、うわごとの様にブツブツと呟く黒と白銀の制服姿は小刻みに震えていて、とても正常とは思えない……。

 年中妨害ばかりして来るこの婚約者の取り巻きの様子にジョシュアが僅かに心配そうな声をかける。


 左手の黒い鞘の刀、いつものものではない、尋常ではない魔力を感じる、魔導具だろう。

 徐に正面に対峙するジェシカ達に見せつけるように突き出した。


「それは……!?"魔鞘・雷斬"じゃないか!そんなものを持ち出して……ッ!?」


「迸れ≪雷迅≫……発動ッッ!!」


 バチバチと雷光が彼女の周りに纏わりつく。

 顔を隠すように垂れた前髪の奥、紫の一つ目がギョロリと剝く、とても正気の目ではない。


「みんな気を付けて!クオンは本気だ!!」

「私がサポートするよ!レオくん!私の後ろに!!」

「うむ!!励めよジェシカ!!何、クオンリィ程度のザコ、この俺の≪龍炎≫にかかれば敵ではないわ!」


 申し訳ないけれど実際敵ではなかった。


(あれからずいぶん経つけれど、ザイツはずっと行方不明……ヴァネッサに消された?この呼び出し、絶対ろくな事じゃない!!)


「こんなところに呼び出して何の用?」

「わたくしも『魔王再封印隊』に志願してさし上げようと思いますの」

「……誰も賛成しないと思うよ?悪いけれど私も」

「それくらい解っておりましてよ……?」


 月の綺麗な夜だった、金色に光る月を背負ったヴァネッサの口元が細い三日月形に歪み、細い眉の片側だけをクイと上げてうっそりと微笑む。

 あの日のザイツと同じ目をしている、危険を感じたジェシカは左半身を隠すように盾を構え。


「ヴァネッサ!!」

「消えなさい」


 いつの間にかヴァネッサの右手に短銃が握られており、放たれた≪魔弾≫がジェシカの盾ごとその左半身を吹き飛ばす。


 ――その時ジェシカは薄れゆく意識の中で全てを思い出した。


 自分が【転生者】だった事。

 これが【乙女ゲーム】の世界だっていう事。

 自分が【お助けキャラ】だという事。


 ヴァネッサ・アルフ・ノワールが自分を殺す事。



(ええぇぇえぇえぇええええぇぇぇぇ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?)



 殺すというかもう殺された、いきなり【DEAD END】だ。


 しかし気が付いたら再び女子寮の部屋の前、タイは『藍色』新入生。

 前世の記憶を保持したまま。


(これが【転生チート特典】≪セーブ≫……)


 ジェシカがそう意識した瞬間、改めて≪セーブ≫が発動したことが解る、学院で習ってきた発動シークエンスも何もあったものではない、本当に魔法なのかコレは。

 記憶の混濁が酷い。

 きっとヴァネッサに殺されるまですっかり忘れていたため【お助けキャラ】ジェシカ・レイモンドのスタート地点に戻ったという事だろう。


 昨日まで一緒に学院生活を送ってきた仲間たちが【攻略対象】だった事には驚きの連続だけれど……。

 ジェシカは、廊下にぺたりとしゃがみ込んでうな垂れる、癖のある白い髪がいつも通り視界に入った。

 女子寮の廊下は絨毯だ、そんなの知っている。


 フェルディナンドの笑顔がジェシカの頭一杯に思い出される。

 どうして高校生の前世なんか思い出してしまった、どうして【乙女ゲーム】なんてことを思い出してしまった、どうして戻って来てしまった、こんな事ならいっそあのまま。


 大好きなあの人が自分ではなく【ヒロイン】を選ぶだなんて知りたくなんかなかった、どうして……。


「魔王再封印が済んだら、フェルディナンドに告白するつもりだったのに……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ