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恋は魔法で愛は呪い  作者: ATワイト
第三章
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第37話:地雷

一つ目の封印が砕けて散った。


ヴァネッサにエグイ悪夢を見せるフィオナちゃん。

幼馴染達はおっぱい聖だったりヤバイ方向にランオーバー!

【悪役令嬢を死の運命から救う】

想いは複雑に交錯して呼び覚まされる記憶は……。

ジェットコースター悪役令嬢群像劇!

恋の魔法をは何を成す、愛の呪いは何を成す。

世界の流れは覆せるのか。


第三章の幕が上がります。

 あれから数日、今日は休息日前日の一限休み時間、フィオナは両手で机に頬杖をついて、ちらりと隣の席を見る。

 今日も『主命により遅参』だ、ミュリア先生が何とか「事前連絡を」と言ったら、朝来て連絡だけしてダッシュで女子寮へ帰るという謎のサイクルで活動するようになった。


 それでこの前の詩歌小テストはしっかりいい得点を取るからフィオナには全く意味が解らない、本人曰く「令嬢の嗜みですよ」との事。

 西部って野蛮人の事を野生の令嬢とか呼んでるの?


 王立魔法学院は次代の王国を担う人材育成の場、いわゆる社交教育もしっかりカリキュラムに組み込まれていた。


(それにしてもふとももがパンパン……何アレ拷問?)


 この前の授業で制御の講師に課せられたのは授業時間中教室の後ろのスペースで"馬歩(ばふ)の構え"を取らされるという実践修練だった、ジョシュア様が経験者らしく懐かしそうにうんうん頷きながら『正しい姿勢』をクラスメイト達に講義していたけれど……次はその制御の授業だ……。


(なんか制御の先生すっごい静かにキレてたよねー、そりゃ一回も授業来てないもんねクオン……ふへへ、一緒に|"馬歩"ぁろう《バッファロー》ねー……)


 制御の講師はいつも布にくるまれた杖を持っている妙齢?の女性教師だ、そしてフィオナにとっては仲間である、怒る時の威圧感はハンパないけれど、持たざる者だ。

 ミュリア先生とか超敬語だったしジョシュアでさえ敬語で接している、王族の入学に合わせて招かれた結構すごい人らしい。


 そしてその第二王子ジョシュアが『思ったよりも独特な言動』をするのでクラスの女子はワンチャン賭けてみるのを辞めたみたいだった……。


「ヴァニィはね――」「ヴァニィがね――」


 独り満ち足りた笑顔でじっとしているかと思えば、会話となると隙あらば婚約者自慢を挟んでくる、むしろ誰も聞かなければ自分から話し掛けてくる。……結構ウザイ……言葉の端々で釘を刺してくるのだ。

 そんな時に頼りになるのが大体昼休み前に来るクオンだった。


「休み時間に無駄話してる暇があったら私のヴァネッサ様への手土産になりなさい?いいですね?オラ、二組行くぞ」


 第二王子の襟首を強引に引っ掴んでずんずんと二組へ向かう、そのまま二人して午後の授業は二組で受けていたりする……フリースタイル過ぎる……。


(ディランのバカは別にこのまま【課外活動勧誘】しちゃって平気そうよね……まー"乳神信仰巨乳派おっぱい聖の使徒"にはなってるみたいだけれど……)


 ディランとは毎日昼食を一緒に食べている、今更別々に食べる選択肢なんかないのだから当然だ。

【好感度センサー】は使っていないけれど

 フィオナとしてはジェシカを探して探りを入れたり、クオンにちゃんとヴァネッサ様を救いたいことを伝えたりしたいのだけれど……。


(ジェシカはなんかいつも何処にもいないし……寮では一緒だけれど直接「今日どこにいたの?」なんて【転生者】なんだからそっち方面の事してたらわたしがボロ出しそうで迂闊に聞けないし……ばれないように探らなきゃ)


 そしてフィオナはクオンご機嫌センサーと化した【残弾数】を確認する。


 ぴょこっ

【残弾数:10】


(ちょろすぎる……)


 思い出し笑いしたりわんわんスタイルで煽ったらは【残弾数:1】まで減ってこいつぁまずいとマスクの少女ことフレイと一緒になってヨイショしてみたらとんでもなく回復した。

 ちょくちょく減ってもこれである、煽るな。


「姐御、アタイの事避けてるのかな」


 なんて落ち込んでたけれど大丈夫、たぶんフレイはベルト式装弾肩掛けに巻いているみたいなことになってる。

 クラス内でも完全に"クオンリィ・ザイツの子分A"として認識されている。


(リオネッサとギギはびっくりしたわ……アレ取り巻きが自分で作ったんじゃなくて"親衛隊腕章"だったのね……)


 先日から一年ヴァネッサ派閥筆頭ことリオネッサ・アンジとギギ・ダーソンズの腕には黒耀の色に白銀の縁、赤銅の刺繍の入った揃いの腕章がある、リオネッサはヴァネッサ派閥親衛隊長、ギギは親衛隊副長……もう上級生でも逆らえない。

 原作乙女ゲーでヴァネッサ様の【スキル】扱いで身を挺した壁となり敵の足かせとなる捨て駒の証だ……先日クオンが二人にいくつかの予備と一緒に渡していた。


 ≪前世の記憶≫があるフィオナには表情筋がフラットになるような光景だったけれどクラスの女子達には羨ましい代物だったらしい。

 ちょっとまって!その契約大丈夫??


(まぁ、【スキル】は勝手に発動してくれるようなもんでもない"現実"だから平気だろうけれど……ヴァネッサ様の戦闘中に近くにいたらどうなるかは知らないけれどさ)


 そんな事を考えていると、カラーンカラーンと鐘が鳴り響いて、制御の講師が杖を持って教室に入ってきた。

 思い思いに談笑していた生徒達も各自自分の席に着く、当然フィオナの隣は空席だ。


「……ザイツさんは……またですか」


 教壇に立ってから室内を見回し、それを確認した講師は紫色の双眸を剣呑に細め、杖でドンと床を叩くとクオンの席に[魔法球]が出現する。


「今のは能動型攻性魔法の[魔法球]です、攻撃と言ってしまいがちですが正確に覚えましょう」


 クラスメイト達が固唾を飲むのが分る、『いきなり離れた場所に攻撃魔法を発生させる』とか空間系の魔法との応用だろうか?仕組みが分からない、そもそも[魔法球]は投射するものではないのか?滞空して維持などできたのか?

 なお攻性魔法という言い方が魔法学的に正しい言い方らしいがだいたいみんな攻撃魔法と呼ぶ、制御の講師はそういうところにこだわるタイプのようだった、正式に言うと魔法名も大体長く解り難くなる。


「制御のやりようによってはこういう事もできるのです、[設置着発式攻性魔法球]……まぁ……[魔法地雷]ですね、折角だから[地雷]らしく雷属性も追加しましょうか、発動後の属性追加は難しいので先生の魔力の流れをしっかり見ておいてください」


 そう言うと杖をクルリ回して端を魔法球に向ける、不可視の筈の魔力が細く繊細な糸のように光って見えるのは先生がそうしているのだろう、生徒たちはその様子を見てカリカリとノートに自身の『気付き』を記していく。

 こんなの高等魔法技術予習のしようがない、フィオナも慌てて隣りの席の[魔法地雷]がパチパチと雷属性を帯びてゆくのを観察しながらメモを取る。


(すっご、後付けで属性付与もすごいけど[魔法球]が全然歪んでないしぶれない……でも……これ……)


「はい、これで[雷属性設置着発式攻性魔法球]の完成です……いいですか――……」


 講師は講義に戻るが、フィオナの隣で[地雷]がゆっくりクオンの椅子に吸い込まれていく……。


 ひょっとして消えたのかな?とそーっとフィオナは手を伸ばすがそれを講師の鋭い声が遮った。


「カノンさん」

「ひゃい!?」

「その椅子の座面に決して触れてはいけませんよ?少々強めに魔力を発揚してありますから、いいですね?」


 ……oh


「……は、はい」


 その後挙手した生徒が持続時間はどれくらいか等を質問するなど何事もなかったように講義が続いているが、フィオナとしては突然隣席に仕込まれた『少々強めの[魔法地雷]』が気になって仕方がない、ふと視線を感じて見ると、フレイがフィオナに対して何やら掌で叩くようなゼスチャーをしている。

 ははぁんこいつぁバカだな?


(嫌よ!!そんな事してわたしが爆発四散したらどーすんのよ!!)

(Go!Goだ子分B!!姐御の為に散れ!!)


 座ったままこっそりの身振り手振りながら、意思疎通は完璧であった、まぁ、わかるよね。

 誰が子分Bだ。


 そこへ……。


「っざーす……」


 ざわ……と一瞬で波を打ったように教室内に緊張感が広がった。

 二限目途中に来るとか最速記録かもしれない……それはともかく。


「クオンリィ・ザイツ、朝言ったとォり『主命により遅参』」


 なんかいつもよりテンションが低い、やたらぞんざいに挨拶をして自席に向かったクオンはクラス中の注目を一身に受けている事も歯牙にかけず椅子の背凭れをガタと引いた。


「――ッ!姐御オォォッッ!駄目ッス!!」

「……ァア?朝ッぱらからウッセんよよョっよほおおぉおおッッ!?!?」


 バリった。


 席を立って制止しようとしたフレイの忠告も空しく、椅子に座ろうとした姿勢のまま尻から受けた刺激に背筋ピーンと伸ばして結構激しめの感電をしてから、机に上半身を倒しガクガク痙攣している。


((少々……?))


 クラスメイトはみんなしっかり効果の様子をメモるあたりは王立魔法学院らしいと言えばらしい、クオンも感電しても左手の刀を離さないのは流石と言うかなんというか、らしいと言えばらしい。


「……ってめぇ……か?フィオ……ナ……」


 机に突っ伏したまま、なんとかといった様子で顔を隣のフィオナに向けるクオン、紫色の独眼から溢れる殺気がヤバイ……それにしても状態異常も入っているようだ、メモメモ。

 フィオナとしてはとんでもないとばっちりだ、ぶんぶんと激しく首を左右に振って桜色のポンポンみたいになっている。


「私です、ようやく出席しましたね」

「……ッア?…………」


 騒いでいる間にクオンの席の横迄移動してきた制御の講師がぎろりと紫色の双眸でクオンを睥睨している、間近で見る事になった最近クオンの殺気にも慣れてきたフィオナもこれには思わず背筋が冷えてしまう。

 緩慢な動きで講師へ顔を向けたクオンだったけれども、そこで固まってしまった。


「マま……!?!?」

「講師エイヴェルトと呼びなさい、クオンちゃん」


 春を迎える前、学院上層部や王家をはじめとしたアルファン王国の首脳陣は一つの問題を解決すべく動いていた。

 これから王立魔法学院に入学する侯爵令嬢ヴァネッサ伯爵令嬢クオン子爵令嬢ノエルの三人と、第二王子ジョシュア……四歳から立場はハッキリとした上で共に育った幼馴染たちだ。

 ここに本来は侯爵嫡子レオナードも入った五人のロイヤル幼馴染ズになるのだけれど幸か不幸かレオナードとは疎遠らしい。


 第二王子ジョシュアはまだまともなのだけれど、問題は西部のお転婆三人娘だ……小さい頃から"瑪瑙城"を我が物顔で駆け回り、起こしたトラブルは数知れず。

 学院内においてもフリーダムファイターズっぷりは健在となる事だろう。

 監督する立場の"戦争侯"リチャード・アルフ・ノワール侯爵に相談したところで。


「じゃあみんなで()ろうぜ?"国内最強(イチバンツエーの)"決定()めようぜ?」


 じゃあじゃねぇ、じゃあじゃ。

 どうして親が殴り合って娘の素行問題が解決すると思うのか……。

 ……こいつ内乱罪で処せないか?


 何にせよ頼りにならない、そこで白羽の矢が立ったのがエイヴェルト女伯爵の地位を捨てて夫の家に入りほぼ隠居の生活を送っていた"雷神"。

 ヴァネッサが恐れ、ノエルが慄き、クオンリィが遺伝子レベルで逆らえない相手。


「くおんちゃん?」

「……」


 アルファン魔法学院特別魔法講師クラリッサ・エイヴェルト女史。

 エイヴェルトは旧姓で本名は……ザイツ。

 "雷神"クラリッサ・ファン・ザイツ。


 クオンリィにとってはお母さんによる強制授業参観という煉獄の学園生活始まりであった。

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